植毛ではおおよそ生涯で5000〜6000グラフト程採取できるとお聞きしましたが、後頭部のドナーが少なく毛も細い患者の場合、後頭部が透けない範囲でおおよそどの程度の株数を一生で採取できるものなのでしょうか?
その患者個々人の状態によって異なるとは思うのですが、先生の経験則からFUE、FUT、FUTとFUEを併用した場合における採取可能数を参考程度にお聞きしたいです。
WAKAHAGE様
こんにちは、植毛医の内田直宏です。
これもよく患者様から質問を受ける内容です。
評価方法にはいくつかの方法がございますが、一つの目安をご紹介いたします。
私は、診察時のマクロ的な視点と同時に、刈り上げ後など拡大鏡、スコープを用いて以下の方法を改変し、使用しております。国際的Jose Lorenzo医師が提唱していた概念で、CV(The concept of coverage value )という概念がございます。
このCVとは、日本語では「最小被覆率」とも呼ぶことがあります。
あまり日本人植毛医で使用しておられる先生はいないと思われますが、(1) ドナー領域から安全に採取できるグラフト数 (2) レシピエントの領域で良好な被覆を形成するための最小限のグラフト数を求めることが可能となります。
計測方法はさまざまにありますが、CVを求めるには、毛包密度(Fu/cm2)にFU単位あたりの毛髪数(hairs/FU)を乗じて、毛軸径を乗じることで算出します(FU/cm2 × hairs/FU × 毛軸径 = CV・・・・・①)
このCV(=最小被覆率)の最小値は、5.4という研究結果があります。
つまり、例えば、これからFUEの手術を行う方が、毛包密度:70Fu/cm2、単位毛髪数:2.0hairs/FU、毛髪口径0.05mmと仮定すると、CV=70×2.3×0.05=8.05となります。
この数値は術前ですから、術前CV 8.05となるのですが、実際には加齢の影響を減じて考慮する必要があるため原法では、15%減じておりますが、私は12%とすることもあります。ここでは一旦15%とします。
すると、8.05×(1-0.15)=6.84=実質的な術前CV となり、この方の採取CV=6.84-5.4=1.44となります。
①に代入すると、毛包密度は12.52Fu/cm2となり、元の後頭部の密度の17.8%まで採取してもよいということになります。
あとはこの毛包密度と面積計算により採取可能なグラフト数を算出できます。
他のクリニックでは患者様全員に対して後頭部や側頭部の1/4とか割合を決めている場合がありますが、これは大きく間違いで、WAKAHAGE様のご指摘のように毛包密度や直径などの他の因子を十分に考えて採取(移植)する必要があります。
また、わたしは、この概念を側頭部、後頭部と分解して考えております。なぜなら側頭部と後頭部でやや太さや密度が違うからです。慣れればこの計算は早くできますが、この計算に頼りすぎるのもよくありません。均一でなかったり、患者様により部分部分でかなり異なることがあるからです。
内田直宏
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