コラム
脂漏性脱毛症とは?自毛植毛を行ってもよいのか。

「シャンプーしてもすぐベタつく…」 「フケが気になって、薄毛も進んでる?」
こんなお悩みはありませんか?
それ、もしかすると「脂漏性脱毛症(しろうせいだつもうしょう)」かもしれません。
今回は、脂漏性脱毛症の原因や対処法、そして植毛はしてもよいのか?という疑問について、毛髪専門クリニックであるアルモ形成クリニックがわかりやすく解説します。
脂漏性脱毛症とは?そもそもどんな脱毛症か。
脂漏性脱毛症とは、頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎)によって髪が抜けやすくなる状態のことです。
「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」は、皮脂の分泌が多い部位(頭、顔、胸など)で起こる皮膚の炎症で、フケ・かゆみ・赤みが出やすくなります。
この炎症が頭皮に起こると、毛穴の周りに炎症が広がり、ヘアサイクルが乱れ、毛が抜けやすくなるのです。これが「脂漏性脱毛症」です。
なぜ脂漏性皮膚炎になるの?
いくつかの原因が関係していると言われています。
✅ 皮脂が多すぎる
思春期以降、ホルモンの影響で皮脂分泌が増えると、頭皮がベタつきやすくなります。特に頭皮では15~35歳頃に皮脂分泌がピークとなります(参照:mdpi.com)、皮脂が多い人ほどフケや炎症が起こりやすい傾向があります。ただし脂漏性皮膚炎の発症には皮脂の量そのものより、皮脂の質(脂肪酸組成)やそれに対する皮膚の反応性が関与すると考えられています。
✅ マラセチア菌の増殖
皮膚に元々いる「マラセチア菌」というカビの仲間が、皮脂を栄養にして増え、炎症を起こします。過剰な皮脂とマラセチア菌の増殖が組み合わさることで頭皮で炎症性サイトカインが放出され、表皮のバリア機能が破綻し、角質の剥脱(フケ)が増加するという悪循環に陥ります(参照:jsmm.orgmedicaljournals.se)。
✅ 炎症体質・免疫バランスの崩れ
ストレスや睡眠不足、持病(HIVやパーキンソン病など)も発症を助けてしまうことがあります。HIV感染症では脂漏性皮膚炎の有病率が健常人より著しく高く、パーキンソン病やうつ病の患者でも脂漏性皮膚炎がしばしば見られます(参照:ncbi.nlm.nih.govncbi.nlm.nih.gov)。そのため、ストレスや生活習慣の乱れはもちろん、全身状態(持病や服薬、免疫状態)の確認も重要となります。
どんな症状が出るの?
- 頭皮がベタベタする
- 湿った大きなフケが出る
- 赤みやかゆみがある
- 抜け毛が増える
特に前髪の生え際や頭頂部に多く見られるのが特徴で、炎症が強い部分からじわじわと髪が細くなっていきます。
AGA(男性型脱毛症)とどう違うの?
AGAは、男性ホルモンの影響で徐々に髪が細くなる脱毛症で、前頭部や頭頂部が中心。
一方、脂漏性脱毛症は、
- フケ・かゆみ・赤みといった頭皮トラブルが目立つ
- 一時的な脱毛で、炎症が治まれば回復することもある
という点が大きな違いです。
ただし両方が同時に起こることも多く、見極めが非常に大切ですので、専門家に相談することをおすすめします。
治療はどうするの?
💊 外用薬(ぬり薬)
- 抗真菌薬(マラセチア菌を抑える)
- ステロイド(赤みやかゆみを抑える)
※市販薬では「コラージュフルフル」などの薬用シャンプーもおすすめです。
💊 内服薬
難治性には抗真菌薬の飲み薬を使うことがあります。外用療法で不十分な場合や広範囲に及ぶ重症例では、内服治療を併用することもあります。
代表的なのは抗真菌薬の内服で、イトラコナゾールやフルコナゾールを短期間内服し難治性のマラセチア感染を鎮静化させます。海外ではケトコナゾールの内服も行われましたが肝障害のリスクから現在は推奨されません。抗真菌薬内服は脂漏性皮膚炎に対する有効性が報告されていますが、再発予防のためには結局外用維持療法が必要です。
🛀 スキンケア・生活改善が大切
1 毎日のシャンプーで頭皮を清潔に
具体的なシャンプー方法や外用剤の塗り方も指導します。「シャンプー前によくブラッシングしてフケを浮かせる」「薬用シャンプーは5分程度泡を置いてから流す」「ローションは髪をかき分けて頭皮に行き渡らせる」等の実践が大切と言われています。患者さん自身が自身の皮膚をケアする主体者となれるようにするのが長期管理では重要です。
2 ビタミンやミネラルをしっかり摂る
ビタミンD3誘導体(カルシポトリオール)やビタミンB群(ビオチンなど)の内服を併用することがあり、これらの内服により感染悪化を防ぐ可能性があると言われています。
3 睡眠・ストレス・食生活の見直し
睡眠不足や過度の飲酒・喫煙も皮膚の炎症を悪化させる可能性があるため、生活リズムの改善やストレス軽減に努めることが重要と言われています(参照:hair-clinic.jp)。
脂漏性脱毛症に対して植毛は行ってもよいのか?
■ 植毛は「炎症が落ち着いてから」が大前提
脂漏性脱毛症は、頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎)によって一時的に毛が抜けている状態です。そのため、原則としては炎症が治まれば自然に発毛が回復する可能性が高いです。
このため、次の理由から炎症が残っている状態での植毛は推奨されません:
- 炎症があると、移植した毛が定着(生着)しにくくなる
- 傷の治癒が悪くなり、術後の感染リスクが高まる
- 根本原因が未解決のため、再脱毛や炎症再発が起こりやすい
■ では、どんな場合に自毛植毛を検討してよいのでしょうか?
以下の条件を満たす場合には、自毛植毛を検討できます。
条件 | 説明 |
---|---|
✅ 炎症が完全に落ち着いている | 少なくとも6か月以上、脂漏性皮膚炎の再発がないことが望ましい |
✅ 頭皮の状態が安定している | フケ、赤み、かゆみが見られない状態が維持されている |
✅ 脱毛が長期にわたり残っている | 炎症が治まっても発毛が見られない、もしくは生え方が不十分な部分がある |
✅ 他の脱毛症(AGAなど)との合併がある | AGAが併存している場合は、AGA部分への植毛が有効なこともあります |
特に「脂漏性脱毛症 + AGA(男性型脱毛症)」というケースは多く、その場合はAGA部分のみをターゲットに植毛するという選択ができます。その場合には植毛経験豊富なクリニックを選ぶとよいでしょう。
■ 自毛植毛をする際の注意点
- 手術前に頭皮の抗真菌ケアを再確認
- ケトコナゾールシャンプーなどの継続を推奨
- 術後も脂漏性皮膚炎が再発しないような生活習慣の指導を行う
- 睡眠・ストレス・食生活・スキンケアを含む
- 術後の外用薬使用は医師の指示に基づく
- ステロイド外用などは術後すぐには使えないこともある
■ アルモ形成クリニックとしての方針
当院(アルモ形成クリニック)では、脂漏性脱毛症の方に対しては次のステップで治療判断を行っています:
- まず炎症の徹底治療(抗真菌薬+抗炎症薬+生活指導)
- 6か月以上の経過観察と再評価
- 発毛が戻らない or 明らかにAGAのパターンがある場合のみ、植毛を選択肢に加える
- 施術後も頭皮管理の継続をご案内
まとめ
以上、脂漏性脱毛症について医学的根拠に基づき解説しました。専門的な内容を盛り込みましたが、実臨床では患者一人ひとりの状況に合わせた対応が求められます。本記事の内容が、脂漏性脱毛症に関する理解を深め、適切な診療・ケアに役立つ一助となれば幸いです。
このコラムの著者
アルモ形成クリニック
院長 内田直宏
筑波大学医学部卒業後、マイクロサージャリー(顕微鏡手術)を含む形成外科施術に6年間従事。
年間200症例以上の自毛植毛施術を執刀しており、AGA治療(内服療法、注射療法、レーザー治療)や美容外科施術にも長けている。
自毛植毛だけでは実現の難しい、額をせまくする手術やFUT植毛による傷跡のカバーアップなどといった技術も高く評価を受けている。

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