ハゲは遺伝する「5αリダクターゼとAGAの関係」体内での役割を紹介
5αリダクターゼとは【AGAとの関係や役割】
5αリダクターゼは、AGA(男性型脱毛症)と深い関係がある酵素です。
男女問わず人間の体内に存在し、男性ホルモンの一つである「テストステロン」を「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換する作用があります。
DHTは男の子の赤ちゃんの性器形成を担うなど、男性らしい身体の生育をサポートするはたらきがある一方で、AGAや前立腺肥大症を引き起こすリスクにもなるため、「悪玉男性ホルモン」とも呼ばれています。
また、5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、その種類と役割について解説します。
5αリダクターゼの2つの役割
5αリダクターゼの主な役割は以下の2つです。
5αリダクターゼは髪の毛の元となる細胞(毛母細胞)に指示を出し、髪が生える周期の調整をしています。
このはたらきは男性ホルモンの影響を受けやすく、人によっては薄毛を引き起こす原因となります。
それぞれの役割について詳しく解説します。
5αリダクターゼの役割①|DHTを生成する
5αリダクターゼは、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成を促します。
DHTそのものが薄毛を起こすわけではありませんが、以下のような流れで脱毛の原因を引き起こします。
薄毛が起きるまでの流れ
- 5αリダクターゼとテストステロンが結合する
- DHTが発生する
- 特定のレセプターがDHTと結合する
- 「TGF-β」が増加する
- TGF-βから脱毛の合図が出る
5αリダクターゼによるDHTの生成が、薄毛を進行させるきっかけになっているのがわかります。
5αリダクターゼの役割②|男性らしい身体をつくる
5αリダクターゼは、男性のたくましい身体を作る上で欠かせない物質です。
5αリダクターゼとテストステロンが結合して生成されたDHTには
- 男性生殖器の形成
- 筋肉の増大
- ヒゲなどの体毛の成長
といった男性らしい身体づくりをサポートする役割があります。
必ずしも悪者ではなく、少なすぎても問題が起こります。
5αリダクターゼの2つの種類
5αリダクターゼにはⅠ型・Ⅱ型があり、AGAに関係するのは「Ⅱ型のみ」とされています。
これらの違いや特徴について解説します。
5αリダクターゼⅠ型
5αリダクターゼⅠ型は、全身の皮脂腺に広く分布しています。
また、男性の頭部では「後頭部」や「後頭部」の毛乳頭細胞に多く存在し、発毛サイクルを正常に保つ役割があります。
Ⅰ型はAGAへの影響は少ないとされていますが、多く存在すると皮脂の過剰な分泌を招き、頭皮環境を悪化させてしまいます。
5αリダクターゼⅡ型
5αリダクターゼⅡ型は、主に男性の頭部に加え、ヒゲ・ワキ・陰部などの毛乳頭細胞に多く存在します。
頭部の中では「頭頂部」と「前頭部」に多く、これらの場所でDHTを生成し、AGAを引き起こす原因となります。
男性の薄毛の症状として、頭頂部が薄くなったり、前髪の生え際が後退しやすいのはこれが原因です。
一方、ワキやヒゲなど、頭部以外の部分では発毛を促進する作用があります。
「体毛が濃いのに髪の毛だけが薄い……」という方は5αリダクターゼⅡ型の影響を強く受けている可能性があります。
AGAと5αリダクターゼの関係【活性度が重要】
5αリダクターゼは、AGAの発症と深く関係する物質です。
5αリダクターゼの作用により生成するDHTは特定の受容体と結合し、発毛サイクルを短縮化させます。
これが健康な髪が育たない原因となり、髪の軟毛化や脱毛が進んでいきます。
5αリダクターゼは薄毛の有無に関わらず、頭部に存在する酵素であり、実際に薄毛を起こすかどうかは「5αリダクターゼの活性度による」とされています。
活性度が高いと薄毛になりやすい
5αリダクターゼの活性度が高いほど、テストステロンと結合しやすく、より多くのDHTを生成します。
また、DHTが多いほど、レセプターと結合しやすくなるため、確率論的にAGAのリスクは高くなります。
5αリダクターゼの活性度は「遺伝する」と言われています。
両親のどちらかが「5αリダクターゼの活性度が高くなる遺伝子」を持っている場合、その子どもは薄毛になりやすいと言えるでしょう。
「ハゲは遺伝する」っていうのもあながち間違いではないんですよね…
レセプターの感受性も薄毛に影響する
5αリダクターゼの活性度が低いからといって、絶対に薄毛にならないわけではありません。
5αリダクターゼの作用で生成するDHTが少なくても、それと結合するレセプターの感受性が高いと薄毛の原因となる物質を多く放出してしまうからです。
やっかいなことに、このレセプターの感受性を決める遺伝子は隔世遺伝するとされています。
両親がフサフサでも髪が薄い人は、世代を超えて「薄毛になりやすい遺伝子」を受け継いでいる可能性があります。
5αリダクターゼを抑える栄養素4選
5αリダクターゼの抑制効果が期待できる栄養素を意識して摂ることでAGAの予防になります。
ただし、すでに薄毛の症状が出てしまっている方は、できるだけ早く専門のクリニックを受診し、AGA治療薬の服用(内部リンク)を始めるのがよいでしょう。
ここでは、5αリダクターゼを抑えたい人が摂取したい栄養素とそれを多く含む食べものを紹介していきます。
①リモネン
みかんなどの柑橘類の皮に含まれる香り成分の「d-リモネン」は、5αリダクターゼの合成を阻害する作用があります。
みかんの皮をバクバク食べるのは難しいため、細かく刻んで料理に混ぜるのがよいでしょう。
また、みかんの皮を乾燥させて作った陳皮(チンピ)という生薬を使ったチンピ茶もオススメです。
②カテキン
緑茶に含まれるカテキンには5αリダクターゼを抑える効果があります。
緑茶はカテキンだけでなく、ビタミンCやビタミンEの成長を助ける栄養素もたくさん含まれています。
③イソフラボン
大豆に多く含まれるイソフラボンには、女性ホルモンの「エストロゲン」に似た作用があります。
5αリダクターゼを直接減らすはたらきがあるわけではありませんが、イソフラボンのおかげで男性ホルモンとのバランスが整いやすくなります。
その結果、テストステロンの量が少なくなり、5αリダクターゼのはたらきを弱めることができます。
また、イソフラボンが分泌を促進する「IGF-1」は髪の毛の成長をサポートするため、薄毛の予防のために積極的に摂りたい栄養素です。
④ノコギリヤシエキス
ノコギリヤシに含まれる「βシトステロール」と「オクタコサノール」には、5αリダクターゼの阻害作用があります。
ノコギリヤシはヤシ科の植物でハーブの仲間として民間療法に使われてきました。
ノコギリヤシ自体は食用ではないため、その成分を抽出したサプリで摂るのがオススメです。
5αリダクターゼの抑制に有効なAGA治療薬
5αリダクターゼを抑える効果が認められているAGA治療薬は以下の2つです。
それぞれの違いを解説します。
フィナステリド(プロペシア)
フィナステリドは5αリダクターゼⅡ型の阻害に有効な治療薬であり、継続的に使用することでAGA症状の進行を抑え、発毛サイクルを正常化させます。
薄毛治療ガイドラインにおいて、フィナステリドの内服の評価はもっとも高い「グレードA」です。
副作用は比較的少ない薬ですが、精子量の減少・性欲減退といった副作用が起こる可能性があるため、妊活中などの服用には注意が必要です。
デュタステリド(ザガーロ)
デュタステリドは、Ⅰ型とⅡ型、どちらの5αリダクターゼにも有効な治療薬です。
最近ではⅡ型だけでなく、Ⅰ型の5αリダクターゼもAGAに影響することがわかってきました。
「5αリダクターゼの抑制」という点では、どちらのタイプも阻害できるデュタステリドはフィナステリドよりも高い効果が期待できます。
デュタステリドの内服も治療ガイドラインでは「グレードA」であり、もっとも推奨される治療法の一つです。
ここからは「よくある質問」に回答していきます!
5αリダクターゼにⅢ型があるって本当?
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型しかなく、Ⅲ型は存在しません。
5αリダクターゼが多い人の特徴は?
5αリダクターゼが多い人は「体毛が濃い」「頭皮の皮脂の量が多い」などと噂されることはありますが、これらを裏づけるデータはありません。
ただし、5αリダクターゼの活性度は遺伝することがわかっており、家族に薄毛の人がいる場合にはご自身にも5αリダクターゼが多い可能性は高いでしょう。
運動で5αリダクターゼを減らせるって本当?
運動が5αリダクターゼを減らしたり、その作用を抑制するのに有効である、というデータはありません。
5αリダクターゼを抑えるデメリットは?
5αリダクターゼを抑えることで、DHTの生成が減少します。
これによって、精液の量が減ったり、性欲の減退が起こったりします。
ただし、治療薬による副作用の発現確率は低く、フィナステリドで1%、デュタステリドで5%であり、治療効果を得られるベネフィットの方が高いでしょう。
お酒やたばこは5αリダクターゼにどんな影響がある?
タバコを吸うことで体内に取り込まれた活性酸素やアルコールを分解するためにたくさんの栄養素が消費されてしまいます。
ビタミンCなどの栄養素には5αリダクターゼを抑制してくれるはたらきがあり、これらが不足すると薄毛のリスクは高まります。
過度な飲酒や喫煙は避ける方がよいでしょう。
まとめ
この記事では、「5αリダクターゼ」について詳しく解説しました。
5αリダクターゼには2種類あり、頭頂部や生え際に多く存在するⅡ型はAGAの発症に深く関係しています。
また、5αリダクターゼやレセプターの活性度が高いとAGAの症状を起こしやすく、これらの性質は遺伝することがわかっています。
ただし、実際に薄毛の症状が起こるためにはストレスや頭皮環境など、多くの要因が関係するため、5αリダクターゼが多いからといって薄毛になるとは限りません。
5αリダクターゼを抑えるために有効な栄養素はあるものの、薄毛の症状がすでに出てしまっている場合は早めにクリニックを受信し、AGA治療薬の服用を始めることをオススメします。