【植毛医監修】フィナステリドの副作用|肝機能障害を予防する方法


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フィナステリドはAGA治療薬としてよく知られているプロペシアの主成分です。

プロペシアの添付文書を見ると、副作用の欄に「肝機能の数値が上昇するリスクがある」という内容が書かれています。

同添付文書の「使用上の注意」の欄には「肝機能障害を持っている人がプロペシアを服用した場合の安全性が確認されていない」と明記されています。

この記事では、フィナステリドの副作用のうち最も重篤になりうる「肝機能障害」についてわかりやすくまとめました。

記事の後半では「肝機能障害を予防するための方法」も紹介しています。

この記事を読むことで、フィナステリド治療を行う上で気をつけておくことを理解し、安心して治療を始めることができます。

目次

【肝機能障害】フィナステリドの副作用

そもそも肝臓の機能とは

肝臓には大きくわけて3つの役割があります。

  • 代謝
  • 解毒
  • 胆汁の生成・分泌

それぞれ解説していきます。

代謝

食事から取り込んだ栄養素を分解し、体が利用しやすい形にすることを「代謝」といいます。

栄養素は分解されて肝臓に貯蔵され、必要に応じて各臓器へ送り出されます。

具体的には、ブドウ糖はグリコーゲンに変わって肝臓に蓄えられ、必要な時にブドウ糖として血液中に放出されています。

また、アルブミンや凝固因子などのタンパク質を作り血液中に放出する働きもあります。

解毒

体内に入ってきた有害な物質を無毒化し、尿や胆汁の中に排泄する働きを「解毒」といいます。

代表的なものは薬物やアルコール、アンモニアの分解です。

また、AGA治療薬も肝臓で代謝されて排泄されます。

お酒をたくさん飲む方はアルコールの分解が間に合わず、肝臓に負担がかかってしまうため、飲み過ぎには注意しましょう。

胆汁の生成・分泌

脂肪やタンパク質を分解しやすくするために胆汁を生成し分泌する働きもあります。

このおかげで、腸から脂肪が吸収されやすくなります。

ほかにも、コレステロールやビリルビンなどを胆汁に混ぜて排泄する役割もあります。

フィナステリドは危険?肝臓に負担がかかる理由

結論からすると、フィナステリドの重大な副作用の一つとして肝機能障害を頭に入れておくことは重要です。

ただし、AGA治療薬に限らず、さまざまな薬剤は肝臓で代謝されます。

フィナステリドを使ったときに必ず現れる特有の副作用、というわけではありません。

肝機能障害の発生率|国内の死亡例は?

フィナステリドの製造販売会社MSD社が発表している「市販後調査」の結果では、肝機能障害は943例中2例(0.2%)となっています。

その他、男性機能低下、抑うつなどの副作用の発症率も低い結果となっており、AGA治療薬における副作用の危険性は極めて低いと言えます。

ということで、フィナステリドは安全な治療薬ではありますが、肝機能障害を予防する方法を知っておく必要があります。

AGA治療で肝機能障害を予防するための方法

治療開始前の血液検査

肝臓の状態を手軽かつ感度良くチェックできるのは「血液検査」です。

治療を開始する前に、肝機能の数値をチェックすることはとても重要です。

もともと肝機能が低い方は分解・解毒の力が弱く、副作用を起こすリスクが高くなります。

また、実際に治療を始めるかどうかの基準があるわけでなく、判断は医師によって異なります。

肝機能を反映する数値は?

  • ALT(GPT)
  • AST(GOT)
  • γ-GTP

といった項目で肝機能をチェックします。

AST(GOT)、ALT(GPT)

AST(GOT)とALT(GPT)は、いずれも肝細胞で作られる酵素です。

肝細胞がなんらかのダメージを受けて細胞が破壊されると、これらは血液中に大量に放出されます。

つまり、「AST(GOT)とALT(GPT)の数値が高い」ということは、「肝臓が破壊されていること」を意味します。

AST(GOT)は心臓や筋肉にも多く存在する酵素です。AST(GOT)のみが高い場合は心筋梗塞や筋肉の異常が疑われます。

また、肝硬変などでは肝臓の状態が非常に悪く、壊れる細胞が残されていないこともあります。その場合はこれらの数値は上昇しないこともあります。

AST(GOT)およびALT(GPT)が上昇すると疑われる病気:急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝がんなど

γ-GTP

γ-GTPは、肝臓の解毒作用に関係する酵素です。

肝臓だけでなく、胆汁の通り道(肝内胆管、胆嚢、総胆管など)に異常があるときにも上昇します。

アルコールとの相関が強く、飲酒習慣がある方は高くなる傾向にあります。

γ-GTPが上昇すると疑われる病気:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がん、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎、薬剤性肝障害、胆道系疾患など

定期的に検査値の推移をチェック

上に挙げた3つの酵素の数値は、生活習慣や個人による差があるため、もともと高い場合があります。


そのため、AGA治療薬によって検査値にどのような変化が起きたのかを知ることが大切です。

普段から検査値を記録し、その変化に目を光らせておくと、小さな異変にも気づくことができます。

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれます。

特に初期症状は自覚しにくく、「気づいた時に手遅れ」ということが十分あり得ます。

治療薬を使う限り、定期的に血液検査を受けて肝機能の変化をモニタリングすべきです。

質問① もともと肝機能が高いのですが、AGA治療は可能ですか?

AGA治療薬は肝臓で代謝されるため、肝臓に負担がかかる可能性があります。

肝機能の数値は生活習慣による影響も大きく、ここまでならOKという基準がありません。

個人で判断するのではなく、かかりつけの医師に相談してください。

質問② 服用量を減らせば副作用を抑えられますか?

減薬により、副作用のリスクを下げることはできます。

ただし、減量により本来の薬効が得られない場合があるため、医師と相談の上で行ってください。

まとめ

この記事で紹介したこと

  • フィナステリドは肝臓に負担がかかる可能性あり
  • 副作用の肝機能障害はさまざまな薬剤で起こるもの
  • 血液検査で肝機能障害の重篤化をできる
  • AGA治療を開始できるかは医師の判断のもとで
  • 治療している間は定期的に肝機能をチェック

肝機能を表す数値は生活習慣や体調などで変動します。

治療の可否や治療方針の判断などは専門医に相談の上で行ってください。

監修医師コメント

内田直宏

フィナステリドの肝機能障害は無視できないのですが、長期間内服していても生じるリスクはマレです。国内の大きなデータでは吉竹らの研究がありますが、5年間の追跡で、903人中有害事象が生じた症例は23例であり、内訳は性欲低下が4例、体毛の減少が4例、頭皮の異常が3例、血性精液が2例、肝機能障害が2例、その他(勃起時違和感等)が8例です。

つまり、肝機能障害が生じる可能性はおよそ0.2%程度ですからあまり心配はいりません。しかし、肝機能障害に気づかず内服しており、知らない間に酵素が上昇し、機能不全になっていることほど怖いことはありません。やはり、できれば3ヶ月に1度、せめて半年に1度程度の血液検査をおすすめいたします。


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