植毛医が【FUE法】をおすすめするのはどんな人?デメリットも紹介
この記事では、自毛植毛のうち主流である「FUE法」のメリットとデメリットについてご紹介します。
メスを使わないFUE法
自毛植毛の方法のうち、メスの代わりに「パンチグラフト」「パンチブレード」「ニードル」などと呼ばれる専用器具でドナー株をくり抜く方法が「FUE(Follicular Unit Extraction)」です。
FUT法と同様に、AGAの影響を受けにくい後頭部の頭皮からドナー株を採取し、薄毛の症状が出ている部分に移植をします。
メスを使わないため、患者の身体への負担は小さく、「より選択的に」ドナー株を採取することができます。
以下で詳しく解説していきます。
FUE法の特徴
FUT法と比べた時のFUE法の大きな特徴は以下の3点です。
- 点状の傷跡が残る
- メスで「切る」代わりにパンチで「くり抜く」
- 移植できるグラフト数はFUT法の半分
- 高密度移植が得意
メスを使って広い範囲を帯状にカットするFUT法と1つずつ毛包単位でくり抜くFUE法とでは、傷の残り方が異なります。
FUT法を推奨しているクリニックの多くが「FUT法では傷跡が目立つ」というネガティブなふれ込みを打っているのを見かけますが、これには誤解があります。
実際はFUT法では傷跡の縫合を行うため、実際に切り取る範囲の10分の1程度しか傷は残りません。
FUE法ではくり抜いた穴はそのまま残るため、生涯に採取できるグラフト数が少なく設定されています。
あまりにも多くの採取を行うと、逆に後頭部がスカスカに見えてしまうため、広範囲の移植が必要な症例には向いていません。
一方、FUE方はドナー株の採取の時点で移植に適した形で採取できるため、効率的に密度アップを実現できます。
FUE法が向いてる人
ひとことで言うと、FUE法が向いているのは「薄毛の範囲が限定的な方」です。
必要なグラフト数が少なければ採取にかかる時間も少なく、費用もおさえることができます。
その場合は傷が残る範囲も狭いので身体や精神的な負担も抑えることができ、メリットは大きくなります。
逆に、薄毛の症状が広がっている場合にはFUTの方が向いていると言えるでしょう。
また、「とにかくメスを使う施術に抵抗がある」という方にとってもFUE法は魅力的な選択肢だと思います。
より多くのグラフト数が必要な場合は、FUE法の施術を複数回にわけて行う場合もあります。
現在の薄毛の状態だけでなく、どの程度薄毛を改善させたいか、という希望によっても最適な対策は異なるため、まずはカウンセリング・診察に行ってみることをオススメします。
<FUEが適しているケース>
- 薄毛の範囲が限定的な方
- ドナー株の頭皮にゆとりがない方
- メスを使った施術に抵抗がある方
FUTのデメリット4選
FUE法にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
<FUEのデメリット>
- 生涯に採取できるグラフト数はFUT法の半分
- 点状の傷痕がグラフト数と同じだけ残る
- 費用はFUT法より割高
- 医師の熟練度によって毛根切断率が高くなる
前述したように採取できるグラフト数に限りがあるため、広範囲に薄毛の症状が広がっているような大量の移植が必要なケースにはFUE法は向いていません。
ドナー株をくり抜いた部分には丸く白い傷跡が残るため、刈り上げたり坊主頭にすることはできなくなります。
面積で見ると、FUE法の傷跡はFUT法のものよりもかなり大きくなります。
また、FUE法では1つ1つパンチを使ってくり抜いていくため、手術時間が長くかかり、費用も高額になる傾向があります。
「毛根切断率」とは、ドナー株を採取したときに毛根を傷つけてしまう割合です。
毛根が切断されたものは正常に育たなくなるため、植毛成績を高めるためには毛根切断率を低く抑える必要があります。
これは術者の熟練度に左右され、国際毛髪外科学会の資料では平均で30%程度、とされていますが、経験の浅い医師では40~50%程度になることもあります。
FUE法のメリット
FUE法のメリットについても整理しておきましょう。
<FUE法のメリット>
- メスを使わないため、痛みが少なく治りが早い
- ドナー株のトリミングの必要がない
- 頭皮が固く、FUT法が向いていない方もOK
FUT法では、術後に縫合する必要があるため、どうしても引っ張られるような違和感が出ます。
メスを使わないFUE法では、術後の痛みが比較的少なく、ドナー部の治りが早いというメリットがあります。
またドナー株を採取する時点で移植に適した形に採取できるため、「株分け(トリミング)」の必要がありません。
FUT法では、その工程で毛根を傷つける可能性があり、その分定着率が下がってしまいます。
また、線状の傷跡が気になる方やメスを使用することに抵抗がある方、頭皮が固くてFUT法に向いていない方の症例にも柔軟に対応することができます。
治療の流れ
一般的なFUT法の施術の流れは以下のようになっています。
- ドナー株をくり抜く
- 移植部位の作成
- 引き抜いた毛包を必要な部分に戻す
名称が違ってもくり抜く器具は同じ
ドナー株をくり抜く際の器具の呼び名は「チューブパンチ」「マイクロパンチ」「パンチブレード」など、クリニックによってさまざまです。
それぞれが術式を編み出しているかのように聞こえますが、実際は使用する器具のメーカーが違うだけで原理はどれも同じです。
ドナー株の採取に使う「パンチ」は、もともとフランスのオムニグラフト社が開発した植毛専用の器具でした。
日本に進出したオムニグラフト社の代理店が日本の植毛クリニックに営業し、徐々に国内市場でのシェアを伸ばしていったのです。
(画像)
器具の先端はシャーペンの先のようになっており、髪を1株ずつ穴に通した後に高速で回転し、毛根の周囲が円状にカットされます。
採取したドナー株から毛根を一本ずつ引き抜き、鮮度を保つための専用の液体に浸けて、一時的に保管されます。
薄毛の治療が必要な部分に「インプランター」という、これまた専用の器具を使って植え込んでいきます。
「パンチの直径が小さければいい」は嘘?
クリニックによってFUE法で使用するパンチのサイズは異なります。
通常、1~1.2ミリのものが多いのですが、0.6ミリや0.8ミリなど、パンチの口径の小ささを前面に押し出しているクリニックもあります。
パンチの直径が細いとどのようなメリットがあるのでしょうか。
細いパンチを使うメリット
- ドナー株をくり抜く際の傷が小さくなる
- ドナー株を採取する際に細かい動きができる
たしかに理論的には細いパンチを使った方が繊細な操作が可能になります。
ただし、直径が細いパンチを使うということは誤って毛根を切断してしまう確率が上がるということでもあります。
また、日本人を含む黄色人種の髪の毛は白人に比べると太く、白人にとっての最適なパンチ系が0.9ミリとされています。
つまり、日本人に対して行うFUE法であまりにも細いパンチを使うことはとてもハイレベルな技術が求められると考えられます。
というわけで、細いパンチを使うメリットだけでなく、それに伴うデメリットについても知っておくとクリニック選びの際に参考になると思います。
まとめ
FUE法は、メスの代わりに専用の器具を使ってドナー株をくり抜き、自毛植毛を行う方法です。
メスを使わないことにより身体への負担は軽く、痛みも比較的少ないというメリットがあります。
ただし、くり抜いた部分は丸く白い傷跡が残るため、傷の範囲だけで見るとFUT法よりも広くなることが多いです。
FUE方が向いているのは、「症状の軽い早期AGA症例で薄毛の治療が必要な部分が狭い方」です。
施設によって使う器具のサイズや医師の熟練度が異なるため、実際に施術を受ける場合はクリニックの植毛成績やFUE法のデメリットを調べてからにしましょう。
監修医師コメント
FUE法は1グラフト単位で1つずつ採取する方法ですが、クリニックや施設によりかなり方法が異なっています。例えば、採取したグラフトの脂肪組織を除去するかどうか、切れ毛を除去するかどうか、パンチの直径は細いものを使うか、機械に関してどのような機械を選択するか等です。
結果をよくするために、どうしたらよいか、また経験豊富な施設やクリニックで手術を受けることが肝要です。気になるクリニックにカウンセリングを受けにいって、どのようなこだわりを持っているか、他のクリニックとどう違うかなどを聞いてみると良いと思います。