コラム
PHYSICIAN SUPERVISING
ページの監修医師
アルモ形成クリニック
院長 内田 直宏(なおるん先生)
- ISHRS(国際毛髪外科学会)正会員
- 年間200症例以上の自毛植毛を執刀
- 違和感ゼロへ導く精密なグラデーションデザイン植毛が得意
円形脱毛症に対しての自毛植毛は行ってよいのか。
円形脱毛とは

概要
皮膚科で遭遇する最も一般的な毛髪・脱毛症のひとつである。非瘢痕性脱毛の中では最も頻度が高く、500人に1人ほどの頻度と言われております。
髪の毛が円形または楕円形に突然抜け落ちることが特徴で、年齢や性別を問わず発症する可能性があります。一般的には自己免疫反応が関与すると考えられており、本来は体を守る免疫細胞が誤って毛根を攻撃することで発症します。
脱毛症には、毛穴そのものが失われる「瘢痕性脱毛症(はんこんせいだつもうしょう)」と、毛穴が残る「非瘢痕性脱毛症」がありますが、円形脱毛症は非瘢痕性脱毛症に分類されます。そのため、適切な治療によって再び発毛する可能性があることが特徴です。
原因
円形脱毛症(alopecia areata)は、自己免疫異常が主な原因と考えられている脱毛症です。
本来、免疫は細菌やウイルスなどの異物から体を守る役割を担っています。しかし円形脱毛症では、この免疫細胞が誤って自分自身の毛根を攻撃してしまうことで、毛髪の成長が妨げられ、突然の脱毛が起こります。
そのため、円形脱毛症は「自己免疫性の非瘢痕性脱毛症」に分類されます。非瘢痕性脱毛症とは、毛穴そのものは残っている状態を指し、適切な治療によって再び発毛する可能性がある脱毛症です。
典型的な症状
円形脱毛症では、健康だった頭皮に突然、円形または楕円形の脱毛斑が現れます。
多くの場合、
- 10円玉程度の脱毛斑
- 境界がはっきりしている
- 痛みやかゆみがほとんどない
といった特徴があります。
初期は1か所のみの場合もありますが、症状の進行によって複数箇所へ広がることもあります。
特殊な脱毛パターン
円形脱毛症にはさまざまなタイプが存在します。
蛇行型脱毛症(Ophiasis Pattern)
側頭部から後頭部にかけて帯状に脱毛が広がるタイプです。
一般的な円形脱毛症より治療に時間を要する場合があります。
逆蛇行型脱毛症(Sisaipho Pattern)
前頭部や頭頂部を中心に脱毛が広がる比較的まれなタイプです。
AGA(男性型脱毛症)と見た目が似ることもありますが、原因は異なります。
ホワイトオーバーナイト現象とは
円形脱毛症では、「ホワイトオーバーナイト現象」と呼ばれる特徴的な変化が見られることがあります。
これは色素を持つ毛髪が優先的に抜け落ちることで、白髪だけが残り、一夜にして髪が白くなったように見える現象です。
実際に髪の色が急激に変化しているわけではなく、脱毛による見た目の変化として起こります。
重症化すると全頭脱毛や全身脱毛へ進行することも
円形脱毛症の多くは限局した脱毛でとどまりますが、重症化すると脱毛範囲が広がることがあります。
全頭脱毛症
頭皮全体の毛髪が脱落する状態です。
汎発性脱毛症
頭髪だけでなく、眉毛・まつ毛・ひげ・体毛など全身の毛が抜ける状態です。
ただし、これらは比較的まれなケースであり、すべての円形脱毛症が重症化するわけではありません。
鑑別
円形脱毛症を正確に診断するためには、見た目が似ている他の脱毛症や疾患との鑑別が重要です。
特に脱毛斑が突然現れた場合でも、必ずしも円形脱毛症とは限りません。原因によって治療法が大きく異なるため、専門医による適切な診断が必要になります。
二次梅毒との鑑別が重要
円形脱毛症の鑑別診断で特に重要とされているのが、「二次梅毒」に伴う脱毛です。
梅毒は性感染症の一つで、感染後に進行すると全身にさまざまな症状が現れます。その中の一つとして、頭皮に虫食い状の脱毛が生じることがあります。
この脱毛は円形脱毛症と似た見た目を呈することがあり、診察だけでは判別が難しい場合があります。
治療
円形脱毛症は、症状の程度や進行状況によって治療方法が異なります。
軽症の場合は自然に発毛し改善するケースもありますが、脱毛範囲が広い場合や進行が続いている場合には、早期に適切な治療を行うことが重要です。
近年は治療選択肢も増えており、症状に応じて局所療法や全身療法が選択されます。
局所治療(脱毛部位への治療)
比較的軽症の円形脱毛症では、脱毛部位へ直接アプローチする局所治療が行われます。
外用コルチコステロイド
炎症や免疫反応を抑えることを目的とした治療です。
自己免疫による毛根への攻撃を抑制し、発毛を促す効果が期待されます。
局所免疫療法
ジフェニルシクロプロペノン(DPCP)などの薬剤を使用し、人工的に軽い皮膚炎を起こすことで免疫反応を調整する治療法です。
広範囲の円形脱毛症や難治例で選択されることがあります。
全身治療(重症例・広範囲脱毛)
脱毛範囲が広い場合や進行性の症例では、全身治療が検討されます。
JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬
近年、円形脱毛症治療において注目されている治療法です。
JAK阻害薬は、自己免疫反応に関与するシグナル伝達を抑制することで、脱毛の進行を抑え、発毛を促進することが期待されています。
トファシチニブなどの薬剤が代表例として知られています。
免疫調整薬
症例によってはメトトレキサートなどの免疫調整薬が使用される場合もあります。
補助的に使用される治療
円形脱毛症では、症状や体質に応じて補助的な治療が併用されることがあります。
例えば、
- 抗ヒスタミン薬
- 漢方薬
- 頭皮ケア指導
などが行われる場合があります。
ただし、これらの治療法については現時点で十分な科学的根拠(エビデンス)が確立されていないものもあり、補助的な位置付けとして使用されることが一般的です。
円形脱毛の治療として自毛植毛は有効なのか?
結論から言うと、円形脱毛症に対する初期治療として自毛植毛は一般的に推奨されていません。
初期治療で植毛が推奨されない理由
理由としては、円形脱毛はしばしば一時的および再発性と言われ、ドナーとなる毛髪の安全領域(いわゆるsafety zone)が確定できないことが多いからです。
さらに、脱毛斑が改善する可能性が残っている段階で植毛を行うと、本来必要のない手術となる場合もあります。
このような理由から、活動性の円形脱毛症に対しては、まず内科的・皮膚科的治療を優先することが一般的です。
しかし、難治性の円形脱毛に対する治療として自毛植毛で改善したとする症例報告があり、私自身の経験でも数年経過し、脱毛が全く改善しない症例には患者同意の下、手術を行って生着し、脱毛班が改善した症例があるので、一概に否定できるものではないのです。
植毛後も再発リスクは残る
円形脱毛症に対して自毛植毛を検討する際に理解しておきたいのが、「再発の可能性」です。
円形脱毛症は自己免疫疾患であるため、移植した毛髪であっても将来的に免疫の影響を受ける可能性があります。
つまり、
- 植毛した毛髪が必ず守られるわけではない
- 円形脱毛症が再発した場合は移植毛も影響を受ける可能性がある
という点を十分に理解しておく必要があります。
専門医による慎重な判断が重要
円形脱毛症に対する自毛植毛は、AGA治療における植毛とは異なり、慎重な適応判断が求められます。
脱毛の活動性や経過期間、再発リスクを総合的に評価したうえで、本当に植毛が適しているかを判断することが重要です。
アルモ形成クリニックでは、単に植毛を提案するのではなく、まず脱毛の原因や病状を正確に診断し、一人ひとりに最適な治療法をご提案しています。難治性の円形脱毛症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
著者:内田直宏
このコラムの著者
アルモ形成クリニック
院長 内田直宏
筑波大学医学部卒業後、マイクロサージャリー(顕微鏡手術)を含む形成外科施術に6年間従事。
東京、秋葉原でアルモ形成クリニックを開院。
沖縄から北海道まで、遠方の患者様に多くご来院いただいております。
年間200症例以上の自毛植毛施術を執刀しており、AGA治療(内服療法、注射療法、レーザー治療)や美容外科施術にも長けている。
自毛植毛だけでは実現の難しい、額をせまくする手術やFUT植毛による傷跡のカバーアップなどといった技術も高く評価を受けている。
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