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コラム

自毛植毛の基礎知識

PHYSICIAN SUPERVISING

ページの監修医師

アルモ形成クリニック
院長 内田 直宏(なおるん先生)

  • ISHRS(国際毛髪外科学会)正会員
  • 年間200症例以上の自毛植毛を執刀
  • 違和感ゼロへ導く精密なグラデーションデザイン植毛が得意
アルモ形成クリニック 院長 内田直宏

脂漏性脱毛症とは?自毛植毛を行ってもよいのか。

脂漏性角化症による脱毛と植毛脂漏性脱毛症と植毛

「シャンプーをしてもすぐに頭皮がベタつく」
「フケが増えてきた」
「頭皮のかゆみとともに抜け毛が気になるようになった」

このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。

頭皮環境の悪化による一時的なトラブルと思われがちですが、症状によっては「脂漏性脱毛症(しろうせいだつもうしょう)」が関係している可能性があります。

脂漏性脱毛症は、皮脂の過剰分泌や頭皮の炎症によって抜け毛が増加する脱毛症の一つです。放置すると頭皮環境がさらに悪化し、薄毛が進行する原因となることもあります。

ただし、AGA(男性型脱毛症)とは原因や治療方法が異なるため、正しい診断を受けることが重要です。

本記事では、脂漏性脱毛症の特徴や原因、症状、改善方法に加え、「脂漏性脱毛症でも植毛はできるのか?」という疑問についても、毛髪専門クリニックの視点から分かりやすく解説します。

頭皮のベタつきやフケ、抜け毛にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

脂漏性脱毛症とは?そもそもどんな脱毛症か。

脂漏性脱毛症とは、頭皮に生じた炎症によって毛髪の成長環境が悪化し、抜け毛が増加する状態を指します。

その背景には、「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」と呼ばれる皮膚疾患が存在していることが多くあります。

脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位に発症しやすい炎症性の皮膚疾患で、頭皮をはじめ、顔や胸などにも症状が現れることがあります。

脂漏性皮膚炎が原因で起こる脱毛症

脂漏性皮膚炎では、頭皮に過剰な皮脂が分泌されることで常在菌のバランスが乱れ、炎症が発生しやすくなります。

その結果、

  • フケが増える
  • 頭皮がかゆくなる
  • 赤みが出る
  • ベタつきが強くなる

といった症状が現れます。

さらに炎症が毛穴周辺にまで及ぶと、毛髪を育てる毛包へ悪影響を与え、正常なヘアサイクルが乱れることで抜け毛が増加します。

この状態が一般的に「脂漏性脱毛症」と呼ばれています。

ヘアサイクルの乱れによって抜け毛が増える

健康な毛髪は、

  • 成長期
  • 退行期
  • 休止期

というヘアサイクルを繰り返しています。

しかし、頭皮の炎症が続くと毛包の働きが低下し、成長期が短縮されることで髪が十分に育つ前に抜け落ちてしまうことがあります。

そのため、以前より抜け毛が増えたり、髪のボリュームが低下したりすることがあります。

なぜ脂漏性皮膚炎になるの?

いくつかの原因が関係していると言われています。

✅ 皮脂が多すぎる

思春期以降、ホルモンの影響で皮脂分泌が増えると、頭皮がベタつきやすくなります。特に頭皮では15~35歳頃に皮脂分泌がピークとなります(参照:​mdpi.com)、皮脂が多い人ほどフケや炎症が起こりやすい傾向があります。ただし脂漏性皮膚炎の発症には皮脂の量そのものより、皮脂の質(脂肪酸組成)やそれに対する皮膚の反応性が関与すると考えられています。

✅ マラセチア菌の増殖

皮膚に元々いる「マラセチア菌」というカビの仲間が、皮脂を栄養にして増え、炎症を起こします。過剰な皮脂とマラセチア菌の増殖が組み合わさることで頭皮で炎症性サイトカインが放出され、表皮のバリア機能が破綻し、角質の剥脱(フケ)が増加するという悪循環に陥ります(参照:​jsmm.org​medicaljournals.se)。

✅ 炎症体質・免疫バランスの崩れ

ストレスや睡眠不足、持病(HIVやパーキンソン病など)も発症を助けてしまうことがあります。HIV感染症では脂漏性皮膚炎の有病率が健常人より著しく高く、パーキンソン病やうつ病の患者でも脂漏性皮膚炎がしばしば見られます(参照:​ncbi.nlm.nih.gov​ncbi.nlm.nih.gov)。そのため、ストレスや生活習慣の乱れはもちろん、全身状態(持病や服薬、免疫状態)の確認も重要となります。

どんな症状が出るの?

  • 頭皮がベタベタする
  • 湿った大きなフケが出る
  • 赤みやかゆみがある
  • 抜け毛が増える

特に前髪の生え際や頭頂部に多く見られるのが特徴で、炎症が強い部分からじわじわと髪が細くなっていきます。

AGA(男性型脱毛症)とどう違うの?

AGAは、男性ホルモンの影響で徐々に髪が細くなる脱毛症で、前頭部や頭頂部が中心。

一方、脂漏性脱毛症は、

  • フケ・かゆみ・赤みといった頭皮トラブルが目立つ
  • 一時的な脱毛で、炎症が治まれば回復することもある

という点が大きな違いです。

ただし両方が同時に起こることも多く、見極めが非常に大切ですので、専門家に相談することをおすすめします。

治療はどうするの?

💊 外用薬(ぬり薬)

  • 抗真菌薬(マラセチア菌を抑える)
  • ステロイド(赤みやかゆみを抑える)

※市販薬では「コラージュフルフル」などの薬用シャンプーもおすすめです。

💊 内服薬

難治性には抗真菌薬の飲み薬を使うことがあります。外用療法で不十分な場合や広範囲に及ぶ重症例では、内服治療を併用することもあります。

代表的なのは抗真菌薬の内服で、イトラコナゾールやフルコナゾールを短期間内服し難治性のマラセチア感染を鎮静化させます。海外ではケトコナゾールの内服も行われましたが肝障害のリスクから現在は推奨されません。抗真菌薬内服は脂漏性皮膚炎に対する有効性が報告されていますが、再発予防のためには結局外用維持療法が必要です。

🛀 スキンケア・生活改善が大切

1 毎日のシャンプーで頭皮を清潔に

具体的なシャンプー方法や外用剤の塗り方も指導します。「シャンプー前によくブラッシングしてフケを浮かせる」「薬用シャンプーは5分程度泡を置いてから流す」「ローションは髪をかき分けて頭皮に行き渡らせる」等の実践が大切と言われています。患者さん自身が自身の皮膚をケアする主体者となれるようにするのが長期管理では重要です。

2 ビタミンやミネラルをしっかり摂る

ビタミンD3誘導体(カルシポトリオール)やビタミンB群(ビオチンなど)の内服を併用することがあり、これらの内服により感染悪化を防ぐ可能性があると言われています。

3 睡眠・ストレス・食生活の見直し

睡眠不足や過度の飲酒・喫煙も皮膚の炎症を悪化させる可能性があるため、生活リズムの改善やストレス軽減に努めることが重要と言われています(参照:​hair-clinic.jp)。

脂漏性脱毛症に対して植毛は行ってもよいのか?

植毛は「炎症が落ち着いてから」が大前提

結論からお伝えすると、脂漏性脱毛症の方でも自毛植毛は可能ですが、炎症がコントロールされていることが大前提となります。

脂漏性脱毛症は、脂漏性皮膚炎による頭皮の炎症が原因で抜け毛が増加している状態です。そのため、まずは脱毛の原因である炎症を改善し、頭皮環境を正常化することが優先されます。

炎症が落ち着けば自然回復することもある

脂漏性脱毛症による脱毛は、AGAのように毛包が徐々に弱っていく脱毛症とは異なります。

炎症によって一時的にヘアサイクルが乱れ、抜け毛が増加しているケースが多いため、適切な治療によって頭皮環境が改善すると、自然な発毛が回復する可能性があります。

そのため、抜け毛が増えているからといって、すぐに植毛が必要になるわけではありません。

炎症が残った状態での植毛が推奨されない理由

脂漏性皮膚炎による炎症が続いている状態で植毛を行うと、移植した毛髪の生着に悪影響を及ぼす可能性があります。

主な理由としては以下が挙げられます。

生着率が低下する可能性がある

炎症がある頭皮では血流や組織環境が不安定になり、移植したグラフトが十分に定着しにくくなる場合があります。

炎症が悪化するリスクがある

植毛は外科的な処置であるため、頭皮に炎症が残っている状態では術後の赤みや腫れが強くなる可能性があります。

正しい脱毛範囲を判断しにくい

脂漏性脱毛症による脱毛は、一時的な抜け毛であるケースも少なくありません。

炎症が改善すると毛髪が回復する可能性があるため、脱毛範囲が確定していない段階で植毛を行うと、必要以上の移植につながる場合があります。

まずは脂漏性皮膚炎の治療を優先する

脂漏性脱毛症が疑われる場合は、

  • 抗真菌薬
  • 外用薬
  • 頭皮環境の改善
  • 生活習慣の見直し

などによって炎症をコントロールすることが重要です。

十分に治療を行ったうえで、毛髪の回復状況を評価し、それでも改善が不十分な場合に植毛の適応を検討します。

植毛が有効となるケース

炎症が改善し頭皮環境が安定した後も、

  • 毛量が十分に回復しない
  • 長期間にわたり毛包のダメージが残っている
  • AGAを合併している

といった場合には、自毛植毛が有効な選択肢となることがあります。

そのため、脂漏性脱毛症では「まず炎症の治療」、その後に「植毛の必要性を判断する」という流れが基本となります。

どんな場合に自毛植毛を検討してよいのでしょうか?

以下の条件を満たす場合には、自毛植毛を検討できます。

条件説明
✅ 炎症が完全に落ち着いている少なくとも6か月以上、脂漏性皮膚炎の再発がないことが望ましい
✅ 頭皮の状態が安定しているフケ、赤み、かゆみが見られない状態が維持されている
✅ 脱毛が長期にわたり残っている炎症が治まっても発毛が見られない、もしくは生え方が不十分な部分がある
✅ 他の脱毛症(AGAなど)との合併があるAGAが併存している場合は、AGA部分への植毛が有効なこともあります

特に「脂漏性脱毛症 + AGA(男性型脱毛症)」というケースは多く、その場合はAGA部分のみをターゲットに植毛するという選択ができます。その場合には植毛経験豊富なクリニックを選ぶとよいでしょう。

自毛植毛をする際の注意点

脂漏性脱毛症の既往がある方でも、頭皮環境が安定していれば自毛植毛を受けることは可能です。

しかし、脂漏性皮膚炎は再発しやすい疾患でもあるため、植毛の成功率や術後の経過を良好に保つためには、通常以上に頭皮管理が重要になります。

手術前に頭皮の炎症コントロールを確認する

自毛植毛を行う前には、脂漏性皮膚炎による炎症が十分に改善していることを確認する必要があります。

頭皮の赤みやかゆみ、フケの増加などが続いている場合は、植毛を急ぐのではなく、まず炎症の治療を優先します。

頭皮環境が整った状態で手術を行うことで、移植毛の生着率向上が期待できます。

抗真菌ケアを継続する

脂漏性皮膚炎には、マラセチア菌と呼ばれる常在菌の増殖が関与していると考えられています。

そのため、医師の指示のもとで、

  • ケトコナゾール配合シャンプー
  • 抗真菌成分配合の外用薬

などを継続し、頭皮環境を安定させることが重要です。

植毛前後も頭皮状態に応じて適切なケアを継続することで、炎症の再発予防につながります。

術後も生活習慣の改善が重要

脂漏性皮膚炎は生活習慣の影響を受けやすい疾患です。

術後も再発予防のために、

  • 十分な睡眠
  • ストレス管理
  • バランスの良い食事
  • 適切なスキンケア
  • 頭皮を清潔に保つ習慣

などを意識することが大切です。

特に睡眠不足や過度なストレスは皮脂分泌の増加や炎症悪化につながる可能性があるため注意が必要です。

術後の外用薬は自己判断で使用しない

脂漏性皮膚炎の治療で使用される外用薬の中には、術後すぐの使用が適さないものもあります。

例えば、

  • ステロイド外用薬
  • 一部の抗炎症外用薬

などは、移植部の状態によって使用時期を調整する必要があります。

術後に頭皮症状が気になる場合でも自己判断で薬を使用せず、必ず担当医へ相談することが重要です。

植毛後も頭皮環境の維持が大切

自毛植毛は毛髪を移植する治療ですが、その後の頭皮環境が良好でなければ十分な結果を維持できない場合があります。

脂漏性脱毛症の既往がある方は、植毛後も定期的な頭皮管理と診察を継続し、健康な頭皮環境を維持することが大切です。

アルモ形成クリニックとしての方針

当院(アルモ形成クリニック)では、脂漏性脱毛症の方に対しては次のステップで治療判断を行っています:

  1. まず炎症の徹底治療(抗真菌薬+抗炎症薬+生活指導)
  2. 6か月以上の経過観察と再評価
  3. 発毛が戻らない or 明らかにAGAのパターンがある場合のみ、植毛を選択肢に加える
  4. 施術後も頭皮管理の継続をご案内

まとめ

脂漏性脱毛症は、脂漏性皮膚炎による頭皮の炎症が原因となり、抜け毛や薄毛が進行する脱毛症です。頭皮のベタつきやフケ、かゆみ、赤みなどの症状を伴うことが多く、AGAとは異なる原因で発症するため、正確な診断と適切な治療が重要になります。

多くの場合、脂漏性脱毛症は頭皮の炎症をコントロールすることで改善が期待できます。そのため、まずは皮脂バランスや頭皮環境を整え、脂漏性皮膚炎の治療を優先することが基本となります。

また、脂漏性脱毛症の方でも自毛植毛は可能ですが、炎症が残っている状態での手術は推奨されません。十分に頭皮環境を改善したうえで、必要に応じて植毛の適応を検討することが大切です。

さらに、再発予防のためには、

  • 適切な頭皮ケア
  • バランスの良い食事
  • 十分な睡眠
  • ストレス管理
  • 医師の指導に基づく治療継続

といった日常的なケアも欠かせません。

アルモ形成クリニックでは、薄毛の原因を丁寧に診断し、AGA・脂漏性脱毛症・その他の脱毛症を総合的に評価したうえで、一人ひとりに適した治療をご提案しています。

頭皮のベタつきやフケ、抜け毛が気になる方は、自己判断で放置せず、ぜひ一度専門医へご相談ください。

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このコラムの著者

アルモ形成クリニック 
院長 内田直宏

筑波大学医学部卒業後、マイクロサージャリー(顕微鏡手術)を含む形成外科施術に6年間従事。
東京、秋葉原でアルモ形成クリニックを開院。
沖縄から北海道まで、遠方の患者様に多くご来院いただいております。
年間200症例以上の自毛植毛施術を執刀しており、AGA治療(内服療法、注射療法、レーザー治療)や美容外科施術にも長けている。
自毛植毛だけでは実現の難しい、額をせまくする手術やFUT植毛による傷跡のカバーアップなどといった技術も高く評価を受けている。

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