なおるん毛髪情報局
FUEのトランセクション(毛根切断)率とは?採取で毛を失わないための条件
トランセクション(毛根切断)率とは、FUEで毛を採取するときに、毛包(毛根を含む組織)が切断・損傷される頻度を示す指標です。
熟練した術者で2〜5%程度とされる目安、生着率との違い、切断を防ぐ条件をISHRS正会員の植毛医が解説します。
なお、FUE法そのものの特徴や向いている方については、植毛医がFUE法をおすすめするのはどんな人?で解説しています。
この記事は「採取時の毛根切断」に絞って説明します。
目次
FUEのトランセクション(毛根切断)とは
FUE(Follicular Unit Excision)は、後頭部や側頭部から、毛包単位(グラフト)を直径1mm前後の円筒形のパンチで1株ずつくり抜いて採取する方法です。
毛は皮膚に対して斜めに生えており、皮膚の下で向きが少しずつ変わることもあります。パンチの角度や深さが毛の向きとずれると、毛包の途中を切ってしまいます。これがトランセクション(transection)です。たとえば2本の毛を含む株で、1本だけが途中で切れてしまうこともあります。
トランセクション率は、切断された毛の本数で計算する方法と、損傷した株(毛包単位)で評価する方法などがあり、研究によって定義が異なります。また、採取した株を観察するだけでは、頭皮の中に残った毛包の損傷までは把握できないことがあります。
切断の位置や程度によっては、移植後の発毛に悪影響が出る可能性があります。また、採取した株の隣にある毛包を皮膚の中で傷つけてしまう「隠れたトランセクション(hidden transection)」という考え方もあります。
採取した株を観察するだけでは分からない、頭皮の中に残った毛包の損傷のことで、採取部に残る毛の密度にも影響します。
生着率との違い
| 指標 | 何を表すか | 主に左右する工程 |
|---|---|---|
| トランセクション率 | 採取のときに毛包を切ってしまった割合 | 採取(パンチの角度・深さ・径の選び方) |
| 生着率 | 移植した毛包が生存・定着する割合(臨床では発毛の状況などから評価します) | グラフトの保存・移植穴の作成・植え付け・術後の過ごし方 |
生着率がよく話題になる一方で、採取の段階でどれだけ毛を失っているかは見落とされがちです。
植毛の結果は「採取→保存→移植」のすべての工程の積み重ねで決まります。
トランセクション率の目安と、なぜ大切なのか
毛髪外科の標準的な教科書『Hair Transplantation』第6版では、FUEのトランセクション率は、かつては2.5%から30%以上まで幅広く報告されていたものの、技術や器具の進歩により、熟練した術者では2〜5%程度(FUTと同程度)とする報告が多くなったとまとめられています。
ただし、これは熟練した術者についての報告で、すべての施設・すべての症例に当てはまる数値ではありません。測定方法やドナーの条件によっても数値は異なります。
隠れたトランセクションについては、熟練者と初心者を比べた研究(Kim Dら、2016年)で、それぞれ約2%、約8%という結果が紹介されています(研究の条件に限られた数値です)。
報告されている数値の整理
FUEとFUTでは採取の工程や切断の数え方が異なるため、以下の数値だけで術式の優劣は判断できません。
| 項目 | 教科書で紹介されている報告 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 過去に報告されたFUEの切断率 | 2.5%〜30%以上 | 年代・術者・測定方法などが異なる報告 |
| 熟練した術者によるFUEの報告例 | 2〜5%程度 | 測定方法・毛質で変動する |
| FUT(帯状に切り取る方法) | 1〜3%程度 | 工程が違うため、FUEと単純比較はしにくい |
| 隠れたトランセクション | 熟練者 約2%/初心者 約8% | 限られた条件の研究結果 |
※各数値は異なる研究による報告で、同じ条件で比べた結果ではありません。
なお、切断された毛包の一部はその後に再生することがあるという報告もありますが、再生の割合や毛の太さは一定せず、確立した数字ではありません。
後頭部・側頭部のドナーから一生のうちに採取できるグラフト数には限りがあります。採取による損傷は、ドナーに残る毛の量や将来の追加採取に影響する可能性があり、必ずしも回復するとは限りません。
2回目以降の手術を考える方ほど、この指標は大切になります。
毛根を切断しにくくするための条件
教科書では、毛の強いくせ(カール)、皮膚の下で1つの株の毛包が扇状に広がっている状態(スプレイ)、浅い角度で生えている毛、硬すぎる・柔らかすぎる皮膚などで、トランセクションのリスクが高くなるとされています。
こうした条件を術前に把握し、採取の方法を合わせることが大切です。
当院の院長が重視していること
当院では、自毛植毛の採取時に毛包を傷つけるリスク(トランセクション)をできるだけ抑えるため、以下の3つのポイントを重視しています。
① 毛の生える角度を見極める
毛の生える角度は、後頭部の部位によって異なります。
院長の臨床経験では、頭皮に対して15〜45度程度を一つの目安とし、採取部を上部・中部・下部の3つに分けて確認しています。
また、頭皮表面の毛流れだけでなく、皮膚の下にある毛包の向きも考慮し、パンチを入れる角度を細かく調整します。
② 毛の状態に合わせてパンチの径を使い分ける
毛の太さや1グラフトあたりの毛髪本数に合わせて、手術中も複数の径のパンチを使い分けています。
刈り上げない植毛方法であるアルモUn-SHAVEN法では、0.85mmの特注パンチと吸引補助システムを使用して、毛包の深さや向きに合わせて刃入れの深さを調整しています。
③ 採取したグラフトの状態を確認する
採取したグラフトは、医師と看護師が状態を確認しています。
毛包の切断が多く見られる場合は、パンチの角度や深さを見直し、採取方法を調整します。
医学的な文献でも、最初の約50グラフトを観察して採取条件を調整し、その後も部位ごとに確認を続ける方法が紹介されています。
このように、当院では採取中もグラフトの状態を確認しながら、毛包へのダメージを抑えるよう努めています。
なお、これらは当院の考え方と工夫であり、トランセクションをなくせることを保証するものではありません。
クリニック選びで確認したいこと
トランセクション率は、外から見て分かりにくい指標です。カウンセリングでは次のような点を質問してみるとよいでしょう。
- 採取の各工程を誰が担当するのか(担当者の資格・役割)
- 採取した株の状態をどのように確認しているか
- 毛質や毛の角度に合わせて、パンチの径や採取方法を変えているか
- 一度に採取する量と、将来の追加手術を見据えたドナーの使い方
採取の速さだけで技術の良し悪しを判断することはできません。毛質や採取条件に合わせた操作と、採取した株の状態確認が大切です。
当院の施術時間は、グラフト数や術式により4〜10時間程度です。
FUE採取のリスク・デメリットと費用
FUEでは採取部に多数の小さな傷ができ、治った後も点状の瘢痕が残ることがあります。採取が一部に偏ったり、太い径のパンチを使ったりすると、採取部が薄く見えることがあります。
また、自毛植毛には、腫れ、痛み、出血、かゆみ、感染、血行不全、移植毛の生着不良、傷跡、採取部の密度低下、毛のう炎、感覚の違和感、ショックロス(周りの既存毛の一時的な脱毛)、くせ毛などのリスクがあります。仕上がりや、症状の程度・持続期間には個人差があります。
自毛植毛は保険適用外の自由診療です。当院の手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」です。
| 術式(当院) | 1グラフトあたり(税込) | 1,000グラフトの総額例(税込・血液検査込み) |
|---|---|---|
| アルモHi-STANDARD法(刈り上げる) | 1,078円 | 1,294,000円 |
| アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない) | 1,870円 | 2,086,000円 |
※総額例には手術前の血液検査11,000円(税込)を含みます。
※感染症がある方は、別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります(手術の可否は診察・検査結果をふまえて判断します)。
※詳しくは植毛メニュー(料金表)をご確認ください。
FUEのトランセクションに関するよくある質問
Q. トランセクションが起きた毛は、まったく生えないのですか?
切断の位置によっては、残った部分から毛が再生することがあると報告されています。ただし、再生する割合や毛の太さは一定せず、確立した数字はありません。切断を少なくすることが基本です。
Q. FUTの方が毛根を切断しにくいのですか?
教科書では、FUTについても1〜3%程度の低い切断率が報告されており、熟練した術者のFUEでは同程度まで下がっているとまとめられています。
ただし、測定方法や手術の工程が違うため、単純に比較できるとは限りません。どちらが適しているかは、必要なグラフト数や傷跡の考え方などで変わります。当院はFUEで採取を行っています(FUTの傷跡の修正は行っています)。
Q. 自分の採取でどのくらい切断されたかは分かりますか?
採取した株を観察することで一定の評価はできますが、頭皮の中に残った損傷まで含めた正確な切断率を把握するのは難しい場合があります。
採取した株をどのように確認しているか、カウンセリングで具体的に質問してみることをおすすめします。
Q. 切断率が高いと、生着率も下がりますか?
トランセクション率と生着率は別の指標です。生着率は、グラフトの保存や植え付け、術後の過ごし方などにも左右されます。ただし、採取時に切断・損傷した毛包は移植しても発毛しにくい場合があるとされ、採取の質は最終的な仕上がりにも関わります。生着率の考え方は自毛植毛の生着率の記事で詳しく解説しています。
Q. 鋭いパンチと鈍いパンチ、手動と電動で切断率は変わりますか?
FUEのパンチには、刃先が鋭いものと鈍いもの、手動で回すものと電動で回転させるものなどがあり、いずれも切断を減らすための工夫として報告されています。ただし、どの器具が適しているかは、毛の太さやカール、皮膚の硬さとの相性、術者の扱い方によって変わり、一律には決められません。当院では、毛の太さや1株あたりの本数に応じて、1回の手術の中でパンチ径を使い分けています。
Q. 刈り上げない植毛(Un-SHAVEN法)は、切断率に影響しますか?
一般に、髪を刈り上げずに採取する方法は、皮膚の外に出ている毛の向きが確認しにくく、刈り上げる方法より技術的な難しさが増すとされています。当院のアルモUn-SHAVEN法では、採取前に毛を短くカットしたうえで、0.85mmの特注パンチと吸引補助システムを用い、毛包の深さや向きに合わせて刃入れを調整しています。ただし、切断をなくせることを保証するものではありません。
Q. くせ毛や毛の角度によって、切断されやすさは変わりますか?
変わることがあります。毛包そのものがカーブしているくせ毛、皮膚の下で毛包が広がっている場合、毛が皮膚に対して寝た角度で生えている場合などは、パンチの向きと毛包がずれやすく、切断のリスクが高まるとされています。こうした特徴は事前の診察で確認し、採取方法を検討します。ご自身の毛質が気になる方は、カウンセリングでお尋ねください。
Q. 将来2回目の植毛を考えている場合、切断率は関係しますか?
関係します。後頭部・側頭部から一生のうちに採取できる毛には限りがあり、採取時に失われた毛包は必ずしも回復しません。薄毛の進行に合わせて追加の植毛を考えている方ほど、1回目の採取でドナーをできるだけ温存することが大切です。カウンセリングでは、将来の追加手術の希望も含めてご相談ください。
まとめ
トランセクション(毛根切断)率は、FUEの採取の際に毛包がどの程度損傷されたかを評価する指標です。
報告される数値は、測定方法や毛質・頭皮の条件、採取の方法によって変わります。ドナーは一生のうちに使える量が限られているため、生着率だけでなく、採取の丁寧さや株の確認方法にも目を向けてクリニックを選ぶことが大切です。
当院では、患者さま一人ひとりの毛髪や頭皮の状態を確認し、適切な採取方法をご提案しています。
自毛植毛の採取方法やトランセクション率について詳しく知りたい方は、カウンセリングにてご相談ください。
公式LINEでもご質問やご相談を受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
参考文献:Unger W, Shapiro R, ed. Hair Transplantation, 6th ed. Thieme; 2022
Kim D, Choi JP, Hwang YJ, Kim HS. Hidden transection of follicular unit extraction in donor site. Dermatol Surg. 2016;42:485-488.
執筆:編集部/監修:内田直宏医師