なおるん毛髪情報局
植毛の「株分け」とは?1グラフトは毛何本?採取後の確認・仕分け・乾燥対策を解説
【この記事の結論】
植毛の「株分け」とは、採取した毛を、毛包単位(1〜4本の毛がひとまとまりになった単位)のグラフトに分けたり、整えたりする工程です。
後頭部の皮膚を帯状に切り取るFUTでは、顕微鏡などを使って帯から1株ずつ切り分ける作業が中心になります。1株ずつくり抜くFUEでは帯から切り分ける工程はありませんが、採ったグラフトの確認・トリミング(形を整えること)・本数ごとの仕分けを行います。
グラフトは体の外に出たときから乾燥や圧迫に弱い生きた組織のため、移植するまでの扱い方は生着に関わる要素の一つと考えられています。
株分けや保存の方法は医療機関によって異なるため、気になる方はカウンセリングで、誰がどのように確認・保存しているのかを聞いてみるとよいでしょう。
※採取の段階で毛根が切れてしまう問題は「FUEのトランセクション(毛根切断)率とは?」、契約したグラフト数の確かめ方は「契約したグラフト数は本当に植わった?」で解説しています。この記事では、採取してから植えるまでの「体の外での工程」に絞って説明します。
目次
植毛の「株分け」とは
頭髪は1本ずつばらばらに生えているのではなく、1〜4本ほどの毛がひとまとまりになって生えています。このまとまりを毛包単位(フォリキュラーユニット)と呼び、植毛ではこの単位を1株(1グラフト)として移植します。
株分けは、採取した組織をこの毛包単位に分け、移植しやすい形に整える工程です。採取方法によって、作業の中身が変わります。
| 採取方法 | 採取の仕方 | 株分けの主な作業 |
|---|---|---|
| FUT(帯状に切り取る方法) | 後頭部の皮膚を帯状に切り取る | 帯を細長く切り分け、さらに顕微鏡などで毛包単位ごとに切り分ける。余分な皮膚や組織を取り除く |
| FUE(1株ずつくり抜く方法) | 小さな筒状の刃で毛包単位ごとにくり抜く | 帯から切り分ける工程はない。採ったグラフトの状態の確認、必要に応じたトリミング、毛の本数ごとの仕分けを行う |
FUEでは「株分けが不要」と説明されることもありますが、これは帯から切り分ける作業が要らないという意味です。採ったグラフトをそのまま植えるのではなく、状態を確認し、移植する場所に合わせて選ぶ工程は、FUEでも大切だと当院では考えています。なお、当院で行っている植毛はFUEで、FUTは行っていません。
株分けの工程が生着に関わる理由
グラフトは乾燥に弱い
採取したグラフトは、体から離れた時点で血流が途絶えています。教科書では、株分けの作業中も含めてグラフトを常に湿った状態に保つことが繰り返し強調されており、切り分けたグラフトはすぐに保存液に浸すこと、作業台も乾いたままにしないことなどが勧められています。乾き始めた組織はつやがなくなり、べたついた感触になるとされています。
保存液としては生理食塩水が最も一般的で、ほかに乳酸リンゲル液や、組織の保存を目的に開発された液を使う医療機関もあります。保存液の種類によってグラフトの細胞の生存性などに差がみられた研究もありますが、実際の移植後の発毛にどの程度の差が出るかは、保存時間や温度などの条件も関わるため、一概には判断できません。
重要なのは、グラフトを乾燥させず、傷めないように管理することです。
強くつまむと傷みやすい
グラフトは非常に小さく繊細な組織で、扱いには先の細いピンセット(鑷子)を使うことが多くあります。当院では、ピンセットでグラフトを強くつまむと組織が傷みやすく、とくに毛をつくる働きに関わる毛球部(毛包の根元)や、毛包幹細胞が存在するバルジ領域を直接強く押さえることは避けるべきだと考えています。グラフトの状態に応じて、こうした部分から離れた位置を、必要最小限の力で持つようにしています。
毛の周りの組織を残すことも大切
グラフトの周りの組織を削りすぎると、毛包そのものが傷つくおそれがあります。教科書でも、株分けの目的は毛包単位を壊さずに保ち、毛包の周りに十分な組織を残すことだとされています。
当院では、毛根の周りに適度に残った組織や脂肪を、乾燥や衝撃から毛包を守る「鎧」のようなものと考えています。ただし、組織を多く残せばよいというわけではありません。移植する穴に収まりにくいほど大きい場合は、穴の大きさに合わせて必要な分だけ整えます。ここでいうトリミングは、毛を守る組織を取り除くことではなく、穴とグラフトの大きさを合わせるための調整です。
毛の本数ごとの仕分けと、植える場所
株分けでは、グラフトを1本毛・2本毛・3本毛などに仕分けて数えます。移植する場所によって、適したグラフトが違うためです。
| グラフトの種類 | 主に使う場所(一般的な考え方) | 理由 |
|---|---|---|
| 細い1本毛 | 生え際の最前列、こめかみ | 自然な生え際は細い毛が少しずつ並んでいるため。太い株を最前列に置くと不自然に見えやすい |
| 2本毛 | 生え際のすぐ後ろ | 生え際から奥に向けて、密度と毛量を段階的に増やすため |
| 3本毛以上 | 前頭部の奥、頭頂部など | 同じ株数でも毛の本数が多く、ボリュームを出しやすいため |
同じ「1,500グラフト」でも、1株あたりの毛の本数が違えば、植わる毛の本数や見た目のボリュームは変わります。株分けの段階で本数ごとの内訳を把握することは、移植する場所への株の配分を計画し、手術記録を残すうえで役立ちます。なお、見た目の仕上がりは、毛の太さ、移植する密度や角度、周りの既存毛などにも左右されます。
当院での株分けと確認の考え方
ここからは、当院で行っている工程と考え方です。医療機関によって方法は異なり、どの方法がよいかは一概にはいえません。
- 2人の目で確認する:採取したグラフトは、院長と看護師の2人の目で、すべての株について毛の本数・太さ・毛根の状態を確認してから植えています。数が多い手術でも数え間違いや見落としを減らすため、確認を二重にしています。
- 場所ごとに株を選ぶ:生え際には細い1本毛、その奥には2本毛・3本毛というように、植える場所に合わせてグラフトを選んでいます。
- 体の外にある時間を短くする:当院では手術を1日1組としており、採取から植え込みまでを途中で止めずに進め、適切な保存状態を保ちながら、グラフトが体の外で待つ時間を必要以上に延ばさないよう努めています。
- スタッフの習熟:グラフトを傷つけずにピンセットで扱えるようになるには、一定の訓練期間が必要だと考えており、経験を積んだスタッフが担当しています。
これらは生着に関わる要素の一部であり、こうした工程によって生着率が一定以上になることを保証するものではありません。生着には、採取時の毛根の切断、移植する穴の大きさや深さ、術後の過ごし方、頭皮の状態など、多くの要素が関わります。
カウンセリングで確認したいこと
株分けは手術室の中で行われるため、患者さんから見えにくい工程です。気になる方は、カウンセリングで次のような点を聞いてみるとよいでしょう。
- 採取したグラフトの確認や株分けは、誰が、どのように行うのか
- グラフトは移植までどのように保存するのか(保存液や温度の管理)
- 1本毛・2本毛・3本毛などの内訳は、手術記録に残るのか
- 生え際や頭頂部など、場所ごとにどのようにグラフトを選ぶのか
具体的な方法には医療機関ごとの違いがありますが、乾燥や損傷を避けるといった基本的な考え方は共通しています。工程を具体的に説明してもらえると、手術のイメージがつかみやすくなります。
自毛植毛の費用と主なリスク・副作用
自毛植毛は保険が適用されない自由診療です。当院の手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で決まります。アルモHi-STANDARD法・アルモUn-SHAVEN法は、いずれもFUE(1株ずつくり抜く方法)を用いた当院の施術名称です。
| 術式(当院) | 1グラフトあたり(税込) | 1,500グラフトの総額例(税込・血液検査込み) |
|---|---|---|
| アルモHi-STANDARD法(刈り上げる) | 1,078円 | 1,833,000円 |
| アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない) | 1,870円 | 3,021,000円 |
※総額例は、手術料金に手術前の血液検査11,000円(税込)を加えた金額です。感染症がある場合は、別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります。詳しくは植毛メニュー(料金表)をご確認ください。
自毛植毛には、腫れ、痛み、出血、かゆみ、感染、血行不全、移植毛の生着不良、傷跡、採取部の密度低下、毛のう炎、感覚の違和感、ショックロス(周りの既存毛の一時的な脱毛)、くせ毛などのリスクがあります。グラフトを丁寧に扱っても、移植した毛がすべて生着するとは限らず、仕上がりには個人差があります。
植毛の株分けに関するよくある質問
Q. FUEでは株分けは必要ないのですか?
FUEは毛包単位でくり抜くため、FUTのように帯から毛包単位へ切り分ける工程はありません。ただし、採ったグラフトの状態を確認し、必要に応じて形を整え、毛の本数ごとに仕分ける工程は行うのが一般的です。この確認や仕分けの方法は、医療機関によって異なります。
Q. 株分けは医師が行うのですか?
グラフトの仕分けや確認などは、医師の管理のもと、訓練を受けた看護師などが担当する場合があります。採取や移植穴の作成などの医療行為とは区別して行われます。誰がどの工程を担当するかは医療機関によって異なるため、気になる場合はカウンセリングで確認してください。
Q. グラフトは体の外で何時間くらいもつのですか?
保存の方法や条件によって異なり、何時間までなら影響がないという明確な基準は示されていません。教科書でも、保存液や冷却の方法による差については、まだ結論が出ていない点があるとされています。そのため、グラフトを乾燥させないこと、体の外にある時間をできるだけ短くすることが基本と考えられています。
Q. 1グラフトには、毛が何本含まれていますか?
1グラフトは毛包単位(フォリキュラーユニット)1つ分で、含まれる毛は1〜4本ほどです。平均すると2本前後といわれることが多いものの、本数の割合には個人差があり、同じ人でも採取する場所によって変わります。そのため、グラフト数と毛の本数は同じではありません。たとえば1,500グラフトを移植した場合、植わる毛の本数はおよそ3,000本前後が目安になりますが、実際の本数は1本毛・2本毛・3本毛の内訳によって異なります。
Q. 同じグラフト数なのに、人によって仕上がりのボリュームが違うのはなぜですか?
グラフト数が同じでも、1株あたりの毛の本数、1本ずつの毛の太さ、髪の色と地肌の色の差、くせの有無などによって、見た目の密度は変わります。また、生え際には細い1本毛を使うなど、植える場所に合わせてグラフトを選ぶため、どこに何株を配分したかによっても印象が異なります。周りの既存毛の量も、仕上がりの見え方に影響します。グラフト数だけでなく、こうした要素をふまえて計画を立てることが大切です。
Q. 手術後に、移植したグラフトの本数の内訳を教えてもらえますか?
医療機関によって、記録や説明の方法は異なります。契約したグラフト数が実際に移植されたかを確かめる方法は「契約したグラフト数は本当に植わった?」で解説しています。
まとめ
植毛の株分けは、採取した毛を毛包単位のグラフトに分け、確認し、移植する場所に合わせて整える工程です。
FUTでは帯から切り分ける作業が中心で、FUEでは確認・トリミング・本数ごとの仕分けが中心になります。グラフトは体の外では乾燥や圧迫に弱いため、湿った状態を保つこと、強くつままないこと、毛包の周りの組織を適度に残すことが大切だと考えられています。
株分けは目に見えにくい工程なので、気になる方はカウンセリングで具体的な方法を確認してみてください。刈り上げない植毛の方法については「ノンシェーブン植毛(刈り上げない自毛植毛)とは?」もあわせてご覧ください。
参考文献:Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation, 6th ed. Thieme; 2022(FUTとFUEの比較、グラフトの保存容器と保存液、グラフトの切り分けと乾燥対策・スタッフの訓練の各章)。グラフトの扱い方や確認の手順に関する記述のうち「当院では」とあるものは、院長の臨床上の見解です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師