ポストフェナステリド症候群への不安【リスクはどれくらい?】
内田先生はポストフィナステリド症候群の症例の経験はありますか?
私はポストフィナステリド症候群の方を診察した経験がございませんが、元々精神疾患等を抱える患者様を診察して、その方がフィナステリドを内服されていました。性機能障害の訴えがございましたが、フィナステリドを辞めた後も性機能障害が継続しており、見方によってはポストフィナステリド症候群とも取れるのですが、むしろ精神疾患のコントロールがうまくできず性機能障害が悪化している可能性もあるため、ポストフィナステリド症候群とは断定できません。実際に日本の論文では、フィナステリドを中止すると症状が改善する例がほとんどです。
ポストフェナステリド症候群とは
フィナステリドの副作用が服用を中止した後も継続している状態のことを「ポストフィナステリド症候群(PFS:Post-Finasteride Syndrome)」と言います。
フィナステリドの副作用には
肝機能障害、勃起不全、リビドー(性欲)減退、精液量減少、射精障害、睾丸痛、発疹
などがあり、特に注意されるのが性欲減退を含む男性機能の低下です。
服用を止めると、これらは復活することがほとんどですが、稀に解消されないことがありそれを「ポストフィナステリド症候群」と呼んでいます。
高濃度薬剤の個人輸入はポストフィナステリド症候群のリスク
最近、国際抗老化再生医療雑誌に高濃度フィナステリドの長期投薬治療後にポストフィナステリド症候群と見られる状態になった患者の報告がありました。
この患者はAGA治療薬であるプロスカー(フィナステリド5mg:日本の5倍濃度)を長年服用していていて、内服を中止しても神経内分泌異常が続き、リビドー消失、勃起不全、ペイロニー病、うつなどの副作用に悩まされている、ということでした。
また、高濃度フィナステリドの長期内服により悪性度の高い前立腺癌のリスクが高まるという報告*もあり、高濃度フィナステリドの長期投与の是非が問われていることが伺えます。
http://waarm.or.jp/wp-content/uploads/2020/01/f24624d1105ea9c5391f31c2faa46f9a.pdf
国際抗老化再生医療学会雑誌 第 1 号(25−30)2018
*Thompson IM Jr, Goodman PJ, Tangen CM, et al. Long-term survival of participants in the prostate cancer prevention trial. N Engl J Med.369:603-10(2013)
ただし、日本で承認されているフィナステリド 1mg についての長期予後についての危険性については未だ明らかでは無く、 5 年までの連続投与ではポストフィナステリド症候群や前立腺がんの悪性化などの報告はありません。
アメリカで起きているフィナステリド症候群は日本で認可されている5倍の濃度によるフィナステリドが使用されている症例であり、国内で認可された範囲のフィナステリドの服用では症状が出ることは稀だと思って良いでしょう。
ただし、個人輸入した治療薬では成分や濃度が国内で処方されているものとは違うため、副作用が起きた場合にも対応することが難しくなってしまいます。
医療機関・専門クリニックなど正規のルートで処方された治療薬を使うのが安全です。
監修医師コメント
日本においては、完全に他の要素を除いた純粋なポストフィナフィナステリド症候群の報告はなく、やはり、精神疾患の合併が多いと考えられます。ポストフィナステリド症候群で代表的な症状として勃起不全等の性機能障害が挙げられます。
精神疾患からくる心因性の性機能障害なのかそれとも本当にポストフィナステリド症候群による性機能障害かは判別が難しいのですが、基本的にはフィナステリド内服により症状は消失することが多いので、一旦は経過観察してみるのが良いでしょう。それでも持続するようであれば、担当医に相談してみるとよいでしょう。