コラム
ノンシェーブン植毛(刈り上げない自毛植毛)とは?仕組み・費用・デメリットを形成外科医が解説
ノンシェーブン植毛(アンシェーブン植毛)とは、後頭部を広く刈り上げずにFUE法で毛を採取する自毛植毛の方法です。
採取部の見た目の変化を抑えやすく、周囲に気づかれにくい傾向があります。
一方で、手術時間が長くなるため費用は高くなり、一度に採取できる量にも制約があります。
ノンシェーブン植毛(刈り上げない自毛植毛)とは
ノンシェーブン植毛(Non-Shaven FUE)とは、自毛植毛のうち、ドナー(毛を採取する後頭部・側頭部)を広く刈り上げずに行う方法の総称です。「刈らない植毛」「刈り上げない植毛」とも呼ばれ、クリニックによって独自の名称が付けられていることもあります。
当院(アルモ形成クリニック)では「アルモUn-SHAVEN法」という名称でご提供しています。
自毛植毛では、毛根を含む「グラフト」(通常1〜数本の毛髪を含む毛包単位の組織)を採取し、薄くなった部分へ移植します。通常のFUE法では、採取しやすくするために後頭部を広く刈り上げます。
ノンシェーブン植毛にはいくつかの方法がありますが、当院では周囲の髪を残したまま、採取する毛だけを1〜2mmほどに短くカットしてから採取する方法(プレカット方式)をとっています。
採取部は周りの長い髪で覆いやすいため、髪型への影響を抑えやすいのが特徴です。ただし、術後の状態や移植部の保護によっては、普段とまったく同じ髪型にはできない場合があります。
刈り上げる植毛との比較
| 項目 | ノンシェーブン植毛(刈り上げない) | 通常のFUE(刈り上げる) |
|---|---|---|
| 採取部の見た目 | 周囲の髪で覆いやすい | 後頭部の刈り上げが目立ちやすい |
| 移植部の見た目 | どちらも術後1〜2週間ほど赤みや点状のかさぶたが出ることがあります | |
| 採取にかかる時間 | 長い(1株ずつ選んで採取) | 比較的短い |
| 1グラフトあたり(当院・税込) | 1,870円 | 1,078円 |
| 1,000グラフトの手術料金例(当院・税込・血液検査代別) | 2,075,000円 | 1,283,000円 |
| 多くのグラフトが必要な場合 | 手術時間の制約を受けやすい | 対応しやすい |
※自毛植毛は保険適用外の自由診療です。手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で、上の料金例はこの計算によるものです。
※手術前の血液検査11,000円(税込)が別途かかります。
※感染症がある方は、別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります。
※料金の詳細は植毛メニュー(料金表)をご確認ください。
刈り上げないから「採取の母数」が広がり、良い毛髪を選びやすい
刈り上げる方法では、刈り上げた範囲の中から採取するのが基本です。
当院のノンシェーブン植毛では、後頭部・側頭部のドナー全体を見ながら1株ずつ選んで採取します。選べる母数が多くなるため、毛の太さや1株あたりの本数を見て、移植に適したグラフトを選びやすくなります。また、採取する位置を広い範囲に分散させる計画も立てやすくなります。
ただし、採取できる範囲や採取する毛の選び方は、刈り上げの有無だけで決まるものではありません。どちらの方法でも、一部分から採りすぎると採取部が薄く見えることがあるため、採取の分散を計画することが大切です。
ドナーをどう評価するか:CV(Coverage Value)の考え方
刈り上げる・刈り上げないにかかわらず、「ドナーからどれだけ採取できるか」を見極めることは自毛植毛でとても重要です。
当院の参考指標のひとつとして用いているのが、CV(Coverage Value)です。CVは、髪が地肌をどれだけ覆っているかを推定する値で、次の式で求めます。
CV = 毛包密度(株/cm²)× 1株あたりの毛髪数(本/株)× 毛の太さ(mm)
たとえば毛包密度75株/cm²、1株あたり2.0本、毛の太さ0.06mmの方の場合、CVは75×2.0×0.06=9.0と計算できます。同じ条件で比べると、CVが高いほど髪による地肌の覆われ方が大きいと推定されます。ただし、採取できるグラフト数をCVだけで決めることはできません。
| CVの要素 | 値が大きいと | 評価の方法(当院) |
|---|---|---|
| 毛包密度 | 地肌が見えにくい | 拡大鏡・専用スコープで部位ごとに確認 |
| 1株あたりの毛髪数 | 少ない株数で覆いやすい | 同上 |
| 毛の太さ | 1本あたりの覆う力が大きい | 同上 |
当院はこのCVに、将来の加齢やAGAの進行による変化の見込みを加えて、採取計画の目安を考えています。ただし、CVは参考指標のひとつで、「この値を保てば採取後も目立たない」と保証できるものではありません。
後頭部と側頭部、同じ後頭部の中でも密度や太さにはばらつきがあり、髪色と肌色のコントラストや毛のうねりなど、CVに表れない要素もあります。
そのため当院では、一律に「後頭部の何分の1まで」と決めるのではなく、部位ごとの評価をもとに一人ひとり採取計画を立てています。
計算の詳しい考え方は、院長のnote記事で解説しています。
ノンシェーブン植毛が向いている人・慎重に検討すべき人
ノンシェーブン植毛は、見た目の変化をできるだけ抑えたい方に適していますが、必要なグラフト数や費用、髪の長さによっては、ほかの植毛方法が適している場合もあります。
向いている人
- 仕事を長く休みにくく、採取部の見た目の変化をできるだけ抑えたい方(営業職・接客業・経営者など)
- 植毛したことを周囲に知られたくない方
- 現在の髪型(ある程度の長さがある)をできるだけ維持したい方
慎重に検討すべき人
- 一度に多くのグラフトを必要とする方(採取時間やドナーの状態によって、刈り上げる方法や手術を複数回に分ける方法を検討します)
- 費用を最優先にしたい方(刈り上げる方法のほうが1グラフトあたりの料金は低くなります)
- もともと髪が非常に短い方(刈り上げても目立ちにくく、ノンシェーブンを選ぶ利点が小さくなります。
ノンシェーブン植毛のメリット
ここでは、ノンシェーブン植毛のメリットを3つご紹介します。
植毛したことを周囲に気づかれにくい
見た目の変化が少ないため、植毛したことを周囲に気づかれにくい場合が多いです。ただ、絶対にバレないわけではありません。(見え方には個人差あり)
仕事や日常生活に早く戻れる
ヘアスタイルを大きく変える必要がないため、仕事や普段の生活で人と接する機会が多い方でも、日常生活へ戻りやすいのが特徴です。
高密度植毛
高密度植毛は、単純に多くの毛髪を植えることではなく、毛根(グラフト)の生着率を維持しながら、毛流れや角度を考慮して適切な間隔で移植する高度な技術です。
当院では生着率が平均99%であるため、10年後もフサフサに生え続けることが期待できます。
ノンシェーブン植毛のデメリットと手術のリスク
自毛植毛後の経過や注意点を正しく理解し、納得したうえで治療を選択することが大切です。
ここでは、ノンシェーブン植毛特有のデメリットと、自毛植毛に共通するリスク・副作用について詳しく解説します。
ノンシェーブン植毛のデメリット
- 費用が高くなる:周囲の長い髪を避けながら1株ずつ採取するため手術時間が長く、その分費用が上がります。
- 移植部のダウンタイムはある:刈り上げの有無にかかわらず、移植部には術後1〜2週間ほど赤みや点状のかさぶたが出ることがあります。生え際など露出する部位に移植した場合、この期間は完全には隠せないことがあります。
- 一度に採取できる量に制約がある:採取に時間がかかるため、多くのグラフトが必要な場合は回数を分ける提案になることがあります。
自毛植毛に共通するリスク・副作用
痛み、出血、腫れ、赤み、かゆみ、感染、毛嚢炎、しびれなどの感覚の異常、採取部の点状の傷跡、採取部の密度の低下、ショックロス(移植部周囲の既存毛が一時的に抜ける現象)、移植毛の生着不良などが生じる可能性があります。
また、自毛植毛はAGAの進行そのものを止める治療ではありません。移植していない部分の脱毛が進む可能性があるため、必要に応じて薬による治療を含めた長期的な計画を検討します。
当院では形成外科医である院長が、これらのリスクも含めてカウンセリングでご説明します。
手術の流れと術後の経過
カウンセリング(対面またはオンライン):頭皮と毛量を診察し、必要なグラフト数とデザインを決めます。
・血液検査:カウンセリングとは別の日に行います。
・手術当日:採取する毛だけを短くカットしてFUE法で採取し、薄い部分へ移植します。グラフト数によっては長時間の手術になります。
・術後:洗髪を始める時期や方法、仕事に戻る時期は、術後の状態や仕事の内容に応じてご案内します。移植部をこすらないなど、生着期間の注意点を守っていただきます。
・経過:移植した毛はいったん抜けることがあり、一般的には術後3〜4か月ごろから新しい毛が生え始めます。仕上がりの評価はおおむね1年前後が目安で、経過には個人差があります。
ノンシェーブン植毛のよくある質問
Q. 翌日から仕事に行けますか?
デスクワークなどでは翌日から仕事に戻れる場合もあります。ただし、術後の腫れや移植部の保護、麻酔の影響、移植した部位が見えやすいかどうか、仕事の内容(体を動かす・帽子やヘルメットをかぶる等)によって判断が変わります。カウンセリングで、お仕事に合わせた過ごし方をご提案します。
Q. 刈り上げる方法と生着率は変わりますか?
生着率は、採取時の毛根の損傷やグラフトの扱い方、移植の操作など、いくつもの要因に左右されます。刈り上げの有無だけで、どちらが優れていると決めることはできません。
Q. 女性でも受けられますか?
受けられる場合があります。女性は髪を短くしにくい方が多く、刈り上げない方法の利点を感じやすい傾向があります。ただし、薄毛の原因やドナーの状態によっては植毛が適さないこともあるため、事前の診察が必要です。
Q. 刈り上げない植毛にも傷跡は残りますか?
毛包を1つずつ採取するため、ノンシェーブ植毛でも採取部にごく小さな点状の傷が残ります。刈り上げないことで傷自体が目立ちにくくなりますが、「傷跡が全く残らない」というものではありません
Q. 刈り上げない植毛でもショックロスは起こりますか?
術式に関わらず、移植部やその周辺の毛が施術後数週間〜数ヶ月の間に一時的に抜ける「ショックロス」が起こることがあります。多くの場合3〜6ヶ月程度で再び発毛してきます。(経過には個人差があります。)
まとめ
ノンシェーブン植毛は、「植毛したことをできるだけ知られたくない」という方にとって有力な選択肢のひとつです。一方で、費用が高くなること、一度に採取できる量に制約があること、移植部のダウンタイムは避けられないことも理解しておく必要があります。
ご自身の優先順位(周囲への気づかれにくさ・費用・必要なグラフト数)を整理したうえで、方法を選ぶことが大切です。
当院では刈り上げる方法・刈り上げない方法の両方に対応しており、ドナーの評価をもとに、どちらが適しているかを含めてご提案します。
当院の刈り上げない植毛「アルモUn-SHAVEN法」の詳細はこちら
執筆・監修:アルモ形成クリニック院長 内田直宏(形成外科医)
東京・秋葉原の自毛植毛専門クリニック。カウンセリングから手術、術後検診まで院長が一貫して担当しています。