なおるん毛髪情報局
自毛植毛は一生で何グラフト採れる?後頭部ドナーの生涯採取量と計算の考え方
自毛植毛で後頭部・側頭部から一生のうちに採れるグラフト数は、毛髪外科の教科書では、一般的な目安としてFUE(1株ずつくり抜く方法)で4,000〜6,500グラフト程度、FUT(帯状に切り取る方法)で5,000〜7,000グラフト程度です。
ただし、これはすべての人に当てはまる数字ではありません。実際の生涯採取量は、ドナーの密度、1株あたりの毛の本数、毛の太さ、安全に採れる範囲の面積で大きく変わるため、全員に同じ割合を当てはめることはできません。
当院では、これらの条件を数値化するCV(Coverage Value)計算と、頭皮や毛髪の診察を組み合わせて、その人ごとの採取量を見積もっています。計算値はあくまで参考値で、採取後の見た目や将来の薄毛の進行も考慮して、実際の採取量を決めています。
採取したあとの後頭部の見え方については、自毛植毛で後頭部はスカスカに?で解説しています。
この記事では「一生でどれだけ採れるのか」という量の考え方に絞って説明します。
目次
自毛植毛のドナーは「限りある資源」
自毛植毛は、AGA(男性型脱毛症)の影響を受けにくい後頭部・側頭部の毛(ドナー)を、薄くなった部分へ移す手術です。毛を新しく作る治療ではないため、使えるドナーの量には上限があります。毛髪外科の教科書でも、ドナーの量が限られていることは、植毛で最も大きな制約の一つとして繰り返し強調されています。
そのため「1回で何グラフト植えるか」だけでなく、「一生のうちに何グラフト使えるか」を最初に見積もり、将来の進行も見込んで配分を考えることが、計画の土台になります。
教科書が示す生涯採取量の目安
教科書(Unger & Shapiro編『Hair Transplantation』第6版)では、生涯に採れる量について次のように整理されています。
| 採取方法 | 生涯採取量の一般的な目安 | 補足 |
|---|---|---|
| FUE(1株ずつくり抜く)のみ | 4,000〜6,500グラフト程度 | 安全領域の周辺や側頭部も、将来の毛の安定性を考慮したうえで採取を検討できる。条件によっては比較的高い採取率が検討されることもあるが、安全に採れる割合は一律ではない |
| FUT(帯状切除)のみ | 5,000〜7,000グラフト程度 | 安全領域の中だけから採る。頭皮の伸びと密度に左右される |
| FUTとFUEの併用 | どちらか単独より1,500〜2,000グラフト多いと考える医師が多い。上限は個人の条件で異なる | 線状の傷が残る |
別の章では、ノーウッド分類Ⅶ型(前頭部から頭頂部まで広範囲に脱毛が進んだ状態)を除くと4,000〜6,000グラフトが一般的に使え、ドナーの面積が広い人や密度が高い人では8,000グラフトに近づくことがある、とも書かれています。いずれも白人を主な対象とした経験に基づく概算で、教科書でも、医師によって見解に幅があり年々変わっていることが説明されています。
なお、当院はFUTを行っていません(FUTの傷跡の修正は行っています)。
当院の考え方:平均値ではなく、その人の数値で見積もる
当院では、ドナーの評価を次の9項目で行っています。これに加えて、1株あたりの毛の本数も測定します。
- 後頭部〜側頭部の安全領域の面積(220〜250㎠程度とする考え方もあるが、個人差が大きく、将来の脱毛の進行も考慮して評価する)
- ドナーの密度(1㎠あたりの株数)
- 腫瘍・皮膚炎・感染の有無と場所
- 毛流(髪が生える方向や流れ)と毛の湾曲
- 毛の太さ
- 過去の手術歴(FUTかFUEか、回数)
- 皮膚の硬さ
- 毛の色・白髪の割合と、頭皮との色のコントラスト
- 頭皮のたるみ
このうち「どれだけ採れるか」に直接関わるのが、面積・密度・毛の太さ・1株あたりの本数です。
CV(coverage value)計算とは
当院では、ドナーの密度(株/㎠)×1株あたりの毛の本数×毛の直径をかけ合わせた値、CV(Coverage Value:毛髪の被覆性を評価する指標)を使って、採取量の目安を出しています。
CV計算では、被覆性の参考値として「5.4」が提案されています。
当院では、将来的な毛髪の変化を考慮して10〜15%(12%は院長が計画上使う設定値で、実際の減少率を予測するものではありません)の補正を行い、参考値との差から採取可能なグラフト数の目安を算出しています。
計算例として、密度75株/㎠、1株あたり2.0本、毛径0.06mmと仮定すると、計算上は元の密度の約28%、採取部の面積が220㎠なら約4,600グラフトになります。
ただし、実際の採取量はドナーの診察所見を踏まえて決めます。
この計算で分かるのは、同じ面積でも密度や毛の太さが違えば、採れる量は大きく変わるということです。密度が低く毛が細い人では数千グラフトにとどまり、密度が高く毛が太い人では平均を上回ることもあります。
また、ドナーの密度の差が、生涯で採れる株数に数百〜数千グラフトの差を生むという試算もあります。
当院では、側頭部と後頭部は密度や太さが違うため分けて計算しています。また、計算値はあくまで概算で、部位による不均一さ、髪と肌の色のコントラスト、毛の湾曲、髪の長さは数式に含まれません。最終的には、計算と診察を合わせて判断しています。
「全員に同じ割合」では見積もれない理由
「後頭部の〇分の1まで」のように、全員に同じ割合を当てる説明を受けることがあるかもしれません。目安としては分かりやすいのですが、上で見たように、採れる割合は密度・毛径・1株あたりの本数などで変わり、総採取数は採取できる面積にも左右されます。
同じ割合を採っても、密度が低い人では採取部が透けて見え、密度が高い人では余力を残しすぎることになります。
カウンセリングで採取量の説明を受けるときは、「自分の密度と毛の太さを測ったうえでの数字か」を確認するとよいでしょう。
1回の手術で採る量と、残しておく量
当院では、初回の手術は3,000グラフトを上限に設定することが多く、患者さんと相談のうえで、条件によっては4,000グラフトまで行うこともあります。
一度の採取量と生涯の累積採取量の両方を管理し、将来AGAが進行したときに必要になる可能性があるドナーを残しておくためです。
当院の院長の臨床経験では、複数回の手術で合計5,000グラフト程度を採取しても採取部の薄さが目立ちにくい方はいます。
ただし、これはすべての方に当てはまるものではなく、実際の許容量は個別に評価します。
ドナーの条件が良好な方については、安全領域の外縁の毛の安定性も評価したうえで、より多くの採取を検討する場合がありますが、安全領域の外側の毛は将来細くなる可能性があり、一定の量を安全に採れることを保証するものではありません。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 初回の上限 | 3,000グラフト前後を上限にすることが多い(当院) |
| 複数回の合計 | 合計5,000グラフト程度でも採取部の薄さが目立ちにくい方はいるが、許容量は個別に評価する(院長の経験) |
| 生涯の目安 | 教科書の一般的な目安は4,000〜6,500グラフト程度。条件が良好な方では安全領域の外縁も評価して検討するが、保証される量ではない |
| 見た目の許容度 | 後頭部の見え方をどこまで許容するかで上限は変わる。短髪にする予定があるかも計画に関わる |
生涯採取量を減らさないために
採取できる量は、生まれつきの毛髪密度や毛質だけでなく、採取方法や将来的な薄毛の進行によっても変わります。
そのため、今あるドナーをできるだけ無駄にせず、将来の植毛も見据えた治療計画を立てることが大切です。
① 毛根の切断・損傷をできるだけ抑える
採取時に毛包が傷つくと、移植後の発毛に影響する可能性があります。
毛包へのダメージをできるだけ抑え、限られたドナーを大切に採取することが重要です。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
② 一か所に集中せず、バランスよく採取する
特定の部位から多く採取すると、その部分だけ髪が薄く見えることがあります。
採取する位置を適切に分散し、後頭部全体の毛髪密度や見た目のバランスを考慮します。
③ 安全なドナー領域から採取する
AGAの影響を受けにくいと考えられる領域から採取することが基本です。
安全領域の外から採取した毛髪は、将来的にAGAの影響で細くなったり、抜けたりする可能性があります。
④ 毛包に適したパンチ径を選ぶ
毛包の太さや形状に合わせて、採取器具(パンチ)の径を調整します。
パンチ径が大きすぎると傷跡が目立ちやすくなり、小さすぎると毛包を傷つけるリスクが高まるため、適切なサイズ選びが重要です。
⑤ AGAの進行を考慮する
自毛植毛は毛髪を移植する治療であり、AGAの進行そのものを止めるものではありません。
必要に応じて、フィナステリドやデュタステリドなどの内服治療を検討し、既存毛の維持を目指します。
薬の適応や副作用については、医師と相談しながら判断することが大切です。
特に若い方やAGAの進行が速い方は、今後の薄毛の進行を正確に予測することが難しい場合があります。
そのため、1回目の植毛で生え際を下げすぎたり、ドナーを過剰に採取したりしないことが重要です。
当院では、現在の薄毛の状態だけでなく、将来的な変化や追加施術の可能性も考慮しながら、一人ひとりに合わせた植毛計画をご提案しています。
自毛植毛の費用と主なリスク・副作用
自毛植毛は、後頭部などから毛包を採取し、薄毛の部分に移植する外科手術です。通常は1回の手術で行いますが、脱毛の範囲や希望する密度によっては複数回に分けることがあります。
手術時間はグラフト数や術式で異なり、術後は検診を経て、12ヶ月前後を目安に経過を評価します。
| 術式(当院) | 1グラフトあたり(税込) | 2,000グラフトの総額例(税込・血液検査込み) |
|---|---|---|
| アルモHi-STANDARD法(刈り上げる) | 1,078円 | 2,372,000円 |
| アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない) | 1,870円 | 3,956,000円 |
※総額例は、基本料金205,000円(税込)・術前血液検査11,000円(税込)を加えた金額です。
※傷跡への植毛など一部の施術では基本料金が異なります(傷跡植毛は220,000円)。
※術前検査の結果、当院が定める感染症対策が必要となる場合は、別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります。詳しくは植毛メニュー(料金表)をご確認ください。
自毛植毛には、腫れ、痛み、出血、かゆみ、感染、血行不全、移植毛の生着不良、傷跡、採取部の密度低下、毛のう炎、感覚の違和感、ショックロス(周りの既存毛の一時的な脱毛)、くせ毛などのリスクがあります。
採取部(ドナー)には点状の瘢痕が残り、採取量が多いほど、また髪を短くするほど目立ちやすくなります。仕上がりや経過には個人差があります。
ドナーの採取量に関するよくある質問
Q. ドナーの密度が低いと言われました。植毛はできませんか?
密度が低い場合でも、面積や毛の太さによっては採取が可能なことがあります。ただし、生涯で使える量が少なくなる可能性があるため、1回の量を抑え、優先順位の高い部位から植える計画になります。密度の測定と計算を行ったうえで、どこまで可能かを判断します。
なお、ドナー部にも細い毛が多く混じる状態(びまん性の薄毛)では、植毛が勧められないことがあります。
Q. 2回目・3回目の手術でも、同じように採れますか?
2回目のFUEでも追加の採取が可能な場合はありますが、過去の採取範囲、残っている密度、瘢痕の状態によって難しさが異なります。
手術を繰り返すと、残っている密度の低下や瘢痕の影響で採取が難しくなることがありますが、難しさは回数だけでなく、過去の採取範囲と現在のドナーの状態で変わります。
FUTの傷跡がある方は、瘢痕や周囲の密度、頭皮の状態を評価して採取位置を決めます。
Q. 後頭部が薄く見えてもよいので、できるだけ多く採りたいです。
後頭部の見え方をどこまで許容するかで、採れる上限は変わります。ただし、採りすぎで下がった採取部の密度は自然には回復しにくく、修正治療を行っても元の状態に戻せるとは限りません。
短髪にしづらくなるなど生活への影響もあります。将来の進行も含めて、カウンセリングでよく相談したうえで決める必要があります。
Q. ドナーが足りないと言われました。ほかに方法はありますか?
植毛の量が足りない場合でも、いくつかの考え方があります。たとえば、生え際の位置を高めに設定すると、必要なグラフト数を抑えられます。額の広さそのものが気になる方では、額を狭くする手術(アルモ額縮小術)で生え際を前に出し、植毛に使うドナーを節約できることがあります。
ほかに、植える範囲に優先順位をつけて前頭部から配分する方法や、内服治療で今ある毛の維持を優先する方法もあります。
ヒゲや体毛をドナーに使う方法もありますが、毛の太さや伸びる長さが頭髪と異なるため、一般には補助的な位置づけです。どの方法が合うかは、脱毛の範囲や希望する仕上がりによって変わります。
Q. 自毛植毛は一生で何回までできますか?
回数に決まった上限はありません。制限になるのは、これまでに採取した量の合計と、残っているドナーの状態です。
1回の採取量が少なければ回数を重ねられる場合があり、逆に1回で多く採れば、2回目以降に使える量は少なくなります。
当院では、手術の回数ではなく、生涯の累積採取量を見ながら計画を立てています。
Q. 自分のドナーで何グラフト採れるかは、どうすれば分かりますか?
ドナーの密度、1株あたりの毛の本数、毛の太さ、採取できる範囲の面積を診察で確認すると、おおよその目安を出せます。
当院では、カウンセリングでこれらを確認し、CV計算と診察所見を組み合わせて見積もっています。ただし、見積もりはあくまで目安です。
将来の脱毛の進行によって、実際に使える量は変わることがあります。カウンセリングの流れは以下のページをご覧ください。
Q. 若いうちに植毛すると、将来ドナーが足りなくなりませんか?
その可能性はあります。20代など若い方は、将来どこまで薄毛が進むかを予測しにくいためです。最初の手術で多く使いすぎると、後から進行した部分に回すドナーが不足することがあります。
そのため、1回目は生え際を下げすぎない、採取量を抑える、内服治療を併用して進行を抑える、といった慎重な計画が勧められています。
年齢だけで植毛の可否が決まるわけではないので、進行の程度やご家族の薄毛の傾向も含めて相談したうえで判断します。
Q. 1グラフトは何本ですか?一生分を本数にするとどのくらいですか?
1グラフトは、毛穴1つ分の毛の束(毛包単位)のことです。1本から3〜4本まで人によって差があり、平均すると2本前後とされることが多いです。仮に1グラフト=2本とすると、一般的な目安である4,000〜6,500グラフトは約8,000〜13,000本に相当します。
ただし、1株あたりの本数には個人差があるため、実際の本数はこの計算どおりにはなりません。料金はグラフト数で計算します。
Q. AGA治療薬を飲んでいれば、ドナーは減りませんか?
後頭部・側頭部の毛はAGAの影響を受けにくいため、植毛のドナーとして使われます。ただし、加齢によって細くなったり密度が下がったりすることはあり、薬を飲んでいても変化がまったく起きないとは限りません。
また、フィナステリドやデュタステリドの内服でドナーの量そのものが増えるわけではありません。内服治療の主な目的は、移植した部分の周りにある既存の毛の進行を抑えることです。
性機能に関する症状や肝機能への影響などの副作用があるため、医師の診察のうえで使用を検討します。詳しくは以下をご覧ください。
まとめ
後頭部から一生で採れるグラフト数は、教科書の一般的な目安では4,000〜6,500グラフト程度ですが、実際にはドナーの密度・毛の本数・太さ・面積で大きく変わります。
当院では、CV計算と9項目の診察を組み合わせて、その人ごとの採取量を見積もり、初回は3,000グラフト前後を上限に、将来の進行を見込んだ配分を提案しています。採れる量は採り方でも変わるため、毛包の切断や損傷を減らし、採取位置を分散し、安全領域の中から採ることが、ドナーを長く使うための基本です。
刈り上げない採取(アルモUn-SHAVEN法)については以下の記事もご覧ください。
参考文献:Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation, 6th ed. Thieme; 2022(生涯採取量とFUE・FUTの比較、安全領域、CV計算法の各章)
執筆:編集部/監修:内田直宏医師