なおるん毛髪情報局
契約したグラフト数は本当に植わった?手術記録・移植直後の写真・採取痕で確かめられること
【この記事の結論】
植毛の「グラフト数」は、手術を受けた本人が後から正確に数えることは難しく、確かめる手がかりは主に「手術記録」「移植直後の写真」「採取部の写真」の3つです。
手術記録では、手術中に記録された採取数や移植数を確認できます。ただし、記録された数値だけで実際の移植数を第三者が独立に証明できるわけではなく、写真も補助的な資料です。
1年後の見た目だけからグラフト数を逆算することはできません。生着の程度、密度の配分、周りの既存毛の変化など、グラフト数以外の要素も仕上がりに影響するためです。
不安がある場合は、まず手術を受けたクリニックに記録の確認を依頼し、そのうえで必要に応じて別の医師の診察で採取部と移植部の状態を見てもらうのが現実的な順序です。手術前に「どう数え、何を記録として残してもらえるか」を確認しておくと、後からの行き違いを防ぎやすくなります。
※植毛の手術時間の目安については「植毛の手術は何時間かかる?」、後頭部から生涯に採取できる量については「自毛植毛は一生で何グラフト採れる?」で解説しています。この記事では「契約したグラフト数どおりに移植されたかを、どう確かめるか」に絞って説明します。
目次
そもそも「グラフト数」は何を数えているのか
グラフトとは、毛包単位(フォリキュラーユニット)と呼ばれる、1〜4本程度の毛がまとまって生えている単位を、周りの組織ごと採取したものです。自毛植毛の料金や計画は、多くの場合このグラフト(株)の数で表されます。
1つのグラフトに含まれる毛の本数は人によって違い、同じ人でも部位によって違います。そのため「2,000グラフト」は、毛髪2,000本を意味するものではありません。グラフト数と毛の本数を取り違えると、「思ったより少ない」「説明と違う」という行き違いの原因になります。
また、手術では「採取した数」と「移植した数」が一致しないことがあります。採取時の損傷などにより、移植に適さないと判断されたグラフトが除外される場合があるためです。契約や見積もりのグラフト数が、採取数・移植数のどちらを指すのかは、手術前に確認しておきたい点です。
| 用語 | 意味 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| グラフト(株) | 1〜4本程度の毛を含む毛包単位を、組織ごと採取したもの | 料金や計画が「グラフト数」で示されているか |
| 毛の本数 | グラフトに含まれる毛の合計本数 | 1本毛・2本毛・3本毛以上の内訳が記録されるか |
| 採取数 | 後頭部などから採取したグラフトの数 | 移植数との差と、その理由が説明されるか |
| 移植数 | 実際に移植部に植えたグラフトの数 | 契約のグラフト数がどちらを指すか |
確かめる手がかりは3つ:手術記録・移植直後の写真・採取部の写真
グラフト数を確かめる方法には、それぞれ分かることと限界があります。1つの方法だけで判断せず、組み合わせて見ることが大切です。
| 手がかり | 分かること | 限界 |
|---|---|---|
| 手術記録(採取数・移植数・本数の内訳) | 手術中に記録された採取数・移植数 | 記録の作り方や数え方はクリニックによって異なり、記録だけで実際の移植数が独立に証明されるわけではない |
| 移植直後の写真 | 移植した範囲、部位ごとの密度配分、グラフトの収まり方 | 写真から1株ずつ正確に数えるのは難しい |
| 採取部の写真(術後早期) | 採取した範囲と、採取の偏りの有無 | 傷は時間とともに目立たなくなり、後から数えるのは難しくなる |
| 術後1年前後の見た目 | 仕上がりの密度、生え際の形 | 生着や既存毛の変化も影響するため、グラフト数の逆算には使えない |
手術記録:何を、どう数えたか
手術中は、採取したグラフトを確認・整理し、施設によっては含まれる毛の本数別(1本毛・2本毛・3本毛以上など)に分類して記録します。採取数、移植数、本数の内訳が記録として残っていれば、契約のグラフト数と照らし合わせることができます。
ただし、記録は手術を行った施設が作成したものであり、記録の数値だけで実際に移植された数を第三者が独立に証明できるわけではありません。記録されたグラフト数と実際に移植されたグラフト数、術後に発毛した毛髪の状態は、それぞれ異なる指標であることも押さえておきましょう。記録を受け取れるかどうか、どの程度の内訳まで記載されるかは、手術前に聞いておくとよいでしょう。
当院では、医師が移植穴を作る段階から、看護師と数をダブルチェックしながら手術を進めています。一つひとつ数に間違いがないよう確認しながら進めることを基本にしています。
移植直後の写真:移植範囲と配置を確認する手がかり
院長の臨床上の見解として、移植した範囲の密度感やグラフトの収まり方は、毛が伸びてからよりも、移植直後の写真の方が把握しやすい場面が多いと考えています。毛が生えそろった後は、毛の長さや向き、既存毛と重なって、どこにどれだけ植わっているかが分かりにくくなるためです。ただし、移植直後の写真も、出血やかさぶた、光の反射などで見えにくいことがあります。
移植直後の写真では、術前の計画(移植範囲の図や予定の密度など)と照らし合わせることで、移植範囲や密度の分布に大きな違いがないか、計画上の密度配分と比べて不自然な疎密がないか、を確認する手がかりになります。ただし、写真から1株ずつ正確に数えるのは専門家でも難しく、「おおまかな整合性を見る」ものと考えてください。写真の撮影・保存の有無、患者本人が閲覧できるか、画像の提供条件も、手術前に確認しておきたい点です。
採取部の写真:早いうちに撮っておく
FUE(1株ずつくり抜く方法)では、一般に直径1mm前後またはそれ以下のパンチを用いることが多く、採取部には小さな点状の傷が生じます。傷の大きさは器具や皮膚の状態によって異なります。術後早期であれば、採取した範囲や、一部に採取が偏っていないかが比較的見えやすい状態です。特に刈り上げる方法では、術後数日の採取部は写真に残しやすくなります。
一方で、採取痕は時間とともに目立たなくなり、周りの毛が伸びると見えにくくなります。後になってから採取痕の分布や密度を調べ、採取数を推定する方法もありますが、瘢痕の見分けや観察範囲などによって誤差が生じます。術後の採取部だけから正確な採取数を確定することには限界があり、移植数も直接は確認できません。採取痕から過去の正確な移植数を確定できる、一般に標準化された方法はありません。
1年後の見た目からグラフト数は逆算できない
「2,000グラフト植えたのに、思ったより薄い」と感じたとき、グラフト数が足りなかったのではないかと考える方は少なくありません。しかし、術後の仕上がりはグラフト数だけで決まるわけではありません。
- 生着の程度:移植したグラフトがすべて生着するとは限らず、生着の程度には個人差があります。
- 密度の配分:同じグラフト数でも、広い範囲に薄く植えるか、狭い範囲に密に植えるかで見た目は大きく変わります。
- 既存毛の変化:手術後に周りの既存毛が一時的に抜けるショックロスや、AGAの進行によって、移植部以外が薄くなることがあります。
- 毛の太さ・本数の内訳:1本毛が多いか、2〜3本毛が多いかで、同じグラフト数でもボリューム感は変わります。
- 経過の時期:仕上がりの評価は術後12ヶ月前後が一つの目安ですが、部位や個人差によってはそれ以降も変化します。頭頂部はさらに時間がかかることがあります。
このため、仕上がりに不満がある場合でも、まずは「グラフト数」「密度の配分」「生着」「既存毛」のどこに原因がありそうかを分けて考える必要があります。半年の時点での見方については「植毛から半年で生えてこないのは失敗?」も参考にしてください。
不安があるときの相談の順序
グラフト数に疑問を感じたときは、次の順序で確認するのが現実的です。
- 手術を受けたクリニックに記録の確認を依頼する:採取数・移植数・本数の内訳、移植直後と採取部の写真があるかを聞きます。数え方の違い(採取数か移植数か、グラフトか本数か)による行き違いであれば、ここで解消することがあります。
- 自分で撮った写真を整理する:術前、術直後、術後1週、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月など、同じ角度・同じ明るさで撮った写真があると、診察での判断材料になります。術後早期は患部に触れず、医師から指示された注意事項を守って撮影してください。
- 必要に応じて別の医師の診察を受ける:採取部と移植部をマイクロスコープなどで観察し、採取痕の分布や移植部の密度を確認します。ただし、前述のとおり総数は概算になり、正確な数を確定することはできません。
当院では他院で手術を受けた方の診察も行っています(他院術後の検診料は別途5,500円・税込。最新の料金は料金表をご確認ください)。診察で分かるのは採取部・移植部の現在の状態と、今後の選択肢であり、過去の手術のグラフト数を確定するものではありません。
手術前に確認しておきたいこと
後からの行き違いを防ぐには、手術前の確認が重要です。カウンセリングの際に、次の点を聞いておくとよいでしょう。
| 確認したいこと | 理由 |
|---|---|
| 契約のグラフト数は採取数か移植数か | 両者は一致しないことがあるため |
| 手術記録(採取数・移植数・本数の内訳)を受け取れるか | 後から照合できるようにするため |
| 移植直後・採取部の写真の撮影・保存の有無と、閲覧・提供の条件 | 密度や範囲を確認する手がかりになるため |
| 誰が採取し、誰が移植穴を作るか | 手術の工程と担当を把握するため |
| 予定のグラフト数が採取できなかった場合の対応と料金 | 当日の状況で計画が変わることがあるため |
| 移植する範囲と、部位ごとの密度の計画 | 同じグラフト数でも仕上がりが変わるため |
手術時間の説明も、工程を理解する手がかりの一つです。手術時間はグラフト数だけでなく術式や体制によっても変わるため、時間の長短だけで良し悪しは判断できませんが、予定グラフト数に対してどのような工程で進めるのかを聞いておくと、当日の流れを具体的にイメージしやすくなります。
自毛植毛の費用と主なリスク・副作用
自毛植毛は、後頭部などから毛包を採取し、薄毛の部分に移植する外科手術です。保険適用外の自由診療で、当院の手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で決まります。アルモHi-STANDARD法・アルモUn-SHAVEN法は、いずれもFUE(1株ずつくり抜く方法)を用いた当院の施術名称です。
| 術式(当院) | 1グラフトあたり(税込) | 1,500グラフトの総額例(税込・血液検査込み) |
|---|---|---|
| アルモHi-STANDARD法(刈り上げる) | 1,078円 | 1,833,000円 |
| アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない) | 1,870円 | 3,021,000円 |
※総額例は、手術料金に手術前の血液検査11,000円(税込)を加えた金額です。感染症がある場合は、別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります(例:Hi-STANDARD法1,500グラフトでは総額2,031,000円)。詳しくは植毛メニュー(料金表)をご確認ください。
自毛植毛には、腫れ、痛み、出血、かゆみ、感染、血行不全、移植毛の生着不良、傷跡、採取部の密度低下、毛のう炎、感覚の違和感、ショックロス(周りの既存毛の一時的な脱毛)、くせ毛などのリスクがあります。移植毛がすべて生着するとは限らず、仕上がりや経過には個人差があります。
グラフト数の確認に関するよくある質問
Q. 採取痕を自分で数えれば、グラフト数は分かりますか?
正確に数えることは難しいと考えてください。FUEの採取痕は小さく、髪に隠れるうえ、時間とともに目立たなくなります。術後早期の採取部の写真は、採取範囲や偏りを見るうえで役立ちますが、総数を確定する手段にはなりません。
Q. 採取した数より移植した数が少ないのは問題ですか?
採取時の損傷などにより、移植に適さないと判断されたグラフトが除外されることがあるため、両者が一致しないこと自体は起こり得ます。差がどの程度あり、どのような理由だったかを、手術記録とともに説明を受けられるかが大切です。
Q. 手術記録に「2,000グラフト」と書かれていれば、2,000グラフト植えられた証拠になりますか?
手術記録は重要な確認資料ですが、それだけで実際の移植数を第三者が独立に証明できるわけではありません。記録の内容に加えて、移植直後の写真や採取部の写真、手術当日の説明などを合わせて確認することになります。
Q. 仕上がりが薄いのは、グラフト数が少なかったからですか?
実際の移植数が予定より少なかった可能性もありますが、生着の程度、密度の配分、既存毛の変化、評価の時期など、ほかの要因も考えられます。術後12ヶ月前後を目安に、手術記録と移植直後の写真を手元に置いて診察を受けると、原因を分けて考えやすくなります。
Q. アルモ形成クリニックでは、手術記録や写真をもらえますか?
【要確認:はい、】採取数・移植数・本数の内訳を記載した手術記録と、移植直後・採取部の写真を【要確認:お渡ししています/ご希望に応じてお渡しします】。詳しくは「当院での記録と確認体制」をご覧ください。手術前のカウンセリングでも、記録の内容と受け取り方をご説明します。
まとめ
契約したグラフト数どおりに移植されたかを、患者さん自身が後から正確に確かめるのは難しいのが実情です。手がかりになるのは、手術記録(採取数・移植数・本数の内訳)、移植直後の写真、術後早期の採取部の写真ですが、いずれも単独で正確な数を確定するものではなく、1年後の見た目からグラフト数を逆算することはできません。
疑問があるときは、まず手術を受けたクリニックに記録の確認を依頼し、必要に応じて別の医師の診察を受けてください。そして、手術前に「どう数え、何を記録として残してもらえるか」を確認しておくことが、後からの行き違いを防ぐうえで大切です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師