なおるん毛髪情報局
刈り上げない植毛は何グラフトまでできる?上限を決める4つの条件と刈り上げる方法・2回に分ける目安
【この記事の結論】
1回で移植できる数は、以下の4つで決まります。
①後頭部・側頭部のドナーの量と密度、
②採取する毛だけを短く切る準備(プレカット)にかかる手間、
③1日で無理なく終えられる手術時間、
④長い毛に囲まれた状態で毛包を傷つけずに採れるか
当院では2,000グラフトを超える刈り上げない手術も行っていますが、同じ数でも刈り上げる方法より時間と集中力を要します。
また当院では、刈り上げの有無にかかわらず初回の手術は3,000グラフト前後を計画上の目安にすることがありますが、これは医学的に決まった上限ではありません。必要な数がドナーや時間の面で厳しい場合は、刈り上げる方法や2回に分ける計画も含めて、診察で比べて決めます。
※この記事では、刈り上げない植毛で「どのくらいの数まで植えられるか」と、その数を左右する条件に絞って説明します。刈り上げない植毛のしくみやメリット・デメリット全体は「ノンシェーブン植毛(刈り上げない自毛植毛)とは?」で解説しています。
刈り上げない植毛の上限は「術式」ではなく「条件」で決まる
刈り上げない植毛は、後頭部・側頭部の採取範囲を広く刈らずに毛包単位で採るFUE(毛包単位で採取する方法)の一種です。刈り上げないFUE(non-shaven FUE)には、採取する毛だけを事前に短く切る方法や、事前に切らずに採取する方法などがあり、長い毛を残したまま採取して移植する方法(long-hair FUE)も刈り上げないFUEの一種ですが、採取する毛を短く切る方法とは手技が異なります。
当院のアルモUn-SHAVEN法は、周りの髪を残したまま採取する毛だけを短く切る方法で、この記事ではこの方法を前提に説明します。FUE全体の考え方は「FUE法の植毛とは?」で解説しています。
刈り上げない方法でも、採取する毛包そのものは刈り上げる方法と同じです。そのため「刈り上げないから○○グラフトまで」と術式の名前だけで線を引くことはできません。実際の上限を決めるのは、次のような条件です。
| 条件 | 上限に影響する理由 | 診察で確認すること |
|---|---|---|
| ドナーの量と密度 | 採れる毛の総数には限りがあり、採りすぎると後頭部が薄く見える | 毛の密度・太さ・1株あたりの本数、安全に採れる範囲の広さ |
| プレカット(採る毛だけを切る準備) | 採取する毛包を選び、その毛を短く切るため、数が増えるほど準備に時間がかかる | 髪の長さ、採取する範囲の分け方 |
| 手術時間 | 採取・株の確認・移植穴の作成・移植を1日で行うため、体の負担と集中力に限りがある | 必要なグラフト数と、1日で行える範囲 |
| 毛包を傷つけずに採れるか | 周りの長い毛が視野を遮り、毛の向きの確認やパンチの操作に手間がかかる | 毛の角度・カール(うねり)・頭皮の硬さ |
ドナー:1回で採れる量と、将来に残す量
自毛植毛で使える毛は、AGA(男性型脱毛症)の影響を比較的受けにくいと考えられる後頭部・側頭部の「安全領域」にある毛です。この量には個人差があり、一生のうちに採れる総数にも限りがあります。どれだけ採れるかは、毛包単位の密度・1株あたりの本数・毛の太さなどを評価し、毛による被覆力の指標であるCV(coverage value)も参考にしながら、ドナーの面積や将来の薄毛の進行も考えて見積もります。考え方は「自毛植毛は一生で何グラフト採れる?」で詳しく説明しています。
刈り上げない方法では、採取する範囲を周囲の毛で覆うことになります。採取が一か所に偏ると、髪を下ろしたときに薄く見える部分が出やすくなるため、広い範囲から少しずつ分散して採ることが前提です。当院では、CVの考え方も参考にしながら、範囲ごとの密度や毛の太さ、採取予定数を確認して採取する範囲を区分けし、一部に採取が集中しないように計画しています。
また、1回の手術で採る量は「今回の希望」だけでなく、将来AGAが進んだときに使える分を残しておくかどうかでも変わります。当院では、刈り上げの有無にかかわらず、初回の手術は3,000グラフト前後を計画上の目安にすることがあります。これは医学的に決まった上限ではなく、実際の数はドナーの状態や術式、手術時間などから判断し、それを超える範囲が必要な場合は2回に分ける計画も含めて検討します。判断の基準は「広範囲の自毛植毛は1回でできる?」で解説しています。
時間:同じグラフト数でも、刈り上げない方が長くかかる
刈り上げない方法では、長い毛を残したまま、採る毛だけを選んで短く切り、1株ずつ毛の流れを目で確かめながらパンチ(採取用の細い筒状の刃)を入れます。周りの長い毛をよけながらの作業になるため、採取のスピードは刈り上げる場合より落ちます。
院長の経験上、採取の工程に限ると、刈り上げない方法のスピードは刈り上げる場合の6〜7割程度になることがあり、2,000グラフト台の刈り上げない採取には、刈り上げる方法で3,000グラフト前後を採るのに近い時間と集中力を要すると感じています。院長の臨床経験に基づく概算で、症例ごとの採取速度を計測・集計した値ではなく、毛質や採取条件によって差があります。当院の手術時間の目安は、刈り上げる方法でも2,000グラフトで8時間前後です(詳しくは「植毛の手術は何時間かかる?」)。
手術は採取だけで終わりではなく、採取したグラフトの状態確認や選別(株分け)、移植穴の作成、移植と続きます。グラフトは体の外にある時間が長くなるほど乾燥などの影響を受けやすいため、1日で無理なく終えられるかどうかも、上限を考えるうえで欠かせません。株分けの工程は「植毛の「株分け」とは?」で解説しています。
精度:長い毛に囲まれた採取では、毛包を傷つけないための工夫が必要
FUEでは、皮膚の外に出ている毛の角度などを手がかりに、皮膚の下で毛包がどの向きに伸びているかを推定してパンチを入れます。刈り上げない方法では、周りの長い毛で視野が遮られたり、操作が複雑になったりすることがあります。
採取のときに毛包の一部が切断されることをトランセクション(毛包切断)といい、損傷の部位や程度によっては移植後の発毛に影響する可能性があります。院長は、刈り上げない採取ではこの点により注意が必要だと考えていますが、刈り上げない方法の切断率が刈り上げる方法より一律に高いと結論づけられるほどの比較データは限られています(「FUEのトランセクション(毛根切断)率とは?」)。
毛のカールが強い方や、頭皮が硬い・逆に柔らかすぎてパンチが滑りやすい方は、刈り上げる方法でも採取の難しさが上がります。こうした条件が重なる場合、刈り上げない方法で数を増やすことが、仕上がりの面では得策といえないことがあります。採取の精度は、毛質や毛の角度、頭皮の状態、器具、術者の経験などに左右されます。
当院では、採る毛だけを1〜2mmほどに切ってから採取し、毛の角度に合わせてパンチの向きと深さを調整しています。それでも、刈り上げる方法と比べて手間が増えることに変わりはないため、数が多いほど、術者が集中力を保てる範囲かどうかを慎重に見積もります。
グラフト数が限られるとき、仕上がりの密度をどう確保するか
刈り上げない植毛では、ドナーの量や手術時間の条件によって、1回に植えられる数に限りが出ることがあります。そのとき仕上がりを左右するのは「何グラフト植えるか」だけではありません。「どこに、どのくらいの密度で、どの株を植えるか」によって、同じ数でも見た目の印象は大きく変わります。
「総グラフト数」と「密度」は別のもの
植毛でいう密度とは、1cm²あたりに植える株(グラフト)の数のことです。総グラフト数が同じでも、植える面積によって密度は変わります。
| 1,500グラフトを植える面積 | 1cm²あたりの密度(単純計算) |
|---|---|
| 30cm² | 約50株/cm² |
| 50cm² | 約30株/cm² |
| 75cm² | 約20株/cm² |
※植える面積でグラフト数を割った単純計算です。実際の見え方は、既存毛の量や太さ、1株あたりの本数、髪型などによって変わります。
広い範囲に薄く広げると全体がうっすら見えやすく、範囲を狭く絞ると植えた部分の密度は上がりますが、範囲の外との差が気になることがあります。限られた数をどの範囲にどの密度で配分するかが、計画の中心になります。
見た目への影響が大きい部分から優先して配分する
- 生え際:顔の印象を最も左右する部分です。最前列には1本毛の株を不規則に配置して自然さを出し、そのすぐ後ろは密度を高めにして、正面から見たときに地肌が透けにくくします。
- 生え際より後ろ(中間部):2〜3本毛の株を中心に配置し、少ない数でも髪のボリュームと地肌の隠れやすさ(被覆力)を確保します。
- つむじ:毛が渦を巻くように流れるため地肌が見えやすく、密度感を出すには多くの数が必要になりやすい部分です。数に限りがある場合は前方を優先し、つむじは2回目の手術やAGA治療との組み合わせも含めて検討することがあります(「広範囲の自毛植毛は1回でできる?」)。
数に限りがあるほど、デザインと株の配置が密度感を左右する
植えられる数が少ないほど、1株ごとの置き場所が仕上がりに与える影響は大きくなります。今ある既存毛を活かしてどこを補うか、普段の分け目や髪を流す方向に対してどう配置するかによって、同じグラフト数でも密度感は変わります。刈り上げない植毛は、周りの髪を残したまま手術を行うため、普段の髪の流れや分け目を確認しながらデザインを考えられる点も特徴です。
当院が密度を重視して行っていること
当院では、限られたグラフト数でも密度感が出るよう、次の点を重視しています。
- グラデーションデザイン:生え際の最前列は1本毛をまばらに配置し、後ろに向かって密度と1株あたりの本数を段階的に高めていきます。境目をつくらずに密度を上げることで、自然さと密度感の両立を目指します。
- 株の選別(株分け):採取したグラフトを1本毛・2本毛・3本毛などに分け、それぞれの株をどこに植えるかを決めます(「植毛の「株分け」とは?」)。
- 移植穴の大きさと間隔:株の大きさに合わせて移植穴をできるだけ小さくし、間隔を詰めて植えられるようにします。既存毛の間に植える場合は、今ある毛を傷つけないよう配慮します。
- 毛の向きと角度:周りの毛の流れに角度と向きをそろえて植えることで、同じ密度でも髪がまとまって見えやすくなります。
どのくらいの密度で植えられるかは、ドナーの状態や頭皮の状態、既存毛の量などによって個人差があり、仕上がりにも個人差があります。高密度の植毛の考え方は「高密度植毛の解説ページ(タイトル)」で詳しく説明しています。
教科書ではどう扱われているか
植毛の代表的な教科書(Hair Transplantation 第6版)の女性の植毛を扱う章では、採取する毛包を選びやすく採取を速く進められることから、多くの術者がドナーを刈り上げる方法を好むと述べられています。
一方、FUTとFUEを比べる章では、「後頭部を短くしなくてよい」というFUTの利点について、刈り上げないFUEが利用できるようになるにつれて変わりつつある可能性がある、と触れられています。同書では、刈り上げないFUEと長い毛のままのFUEは別の章で扱われています。
つまり、刈り上げないFUEは臨床で用いられている採取方法の一つですが、大量の採取にどこまで対応できるかは、術者の経験や手術体制、患者さんのドナーの条件によって差が出やすい領域です。大量採取での適応や、刈り上げる方法との成績の違いを一般論として言い切れるほどの比較データは、まだ限られています。
刈り上げない・刈り上げる・2回に分ける|選び方の目安
必要なグラフト数が1日の手術時間や安全に採れる範囲を超える場合や、将来の薄毛の進み方を見ながら追加を判断したい場合には、2回に分ける計画を検討します。必要なグラフト数が多い場合の選択肢を、考え方の目安として整理します。どれが合うかは、ドナーの条件と、生活の中で何を優先するかによって変わります。
| 選択肢 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|
| 刈り上げない方法で1回 | 必要な数がドナーと時間の範囲内に収まり、仕事などの事情で後頭部を短くしたくない | 手術時間が長くなる。1グラフトあたりの料金が高い。採取できる髪の長さと、採取跡を周りの髪で隠しやすい長さは異なる |
| 刈り上げる方法で1回 | 必要な数が多く、短期間だけ後頭部が短くなることを受け入れられる | 刈り上げた部分が伸びるまでの見た目の工夫が必要(髪型やヘアシートなど) |
| 2回に分ける | 範囲が広く、1回ではドナーや時間の面で無理がある。将来の進行も見ながら追加したい | 手術の回数が増える。2回目は採取済みのドナーの密度や傷跡を考える必要があり、1回目の範囲に追加する場合は既存毛や移植毛を傷つけない配慮も要る |
1回目と2回目で術式を変えることも可能です。手術前の髪の長さの準備は、術式によって異なります(「植毛前に移植部の髪を剃ってはいけない理由」)。採取部の傷跡の見え方は「植毛の傷跡は残る?」で解説しています。
他院で刈り上げない植毛を受けた方の2回目・修正について
当院には、他院で自毛植毛を受けた方からの、追加の植毛や仕上がりの修正に関するご相談も多く寄せられています。刈り上げない植毛は1回に植えられる数に限りが出やすいため、「思ったより密度が出なかった」「2回目をどうするか迷っている」といったご相談につながることがあります。
よくあるお悩みと、診察で確認すること
| お悩み | 考えられる主な原因 | 診察で確認すること |
|---|---|---|
| 植えた部分の密度が足りない | 植えた範囲に対してグラフト数が少ない、株の配置、生着の状況、AGAの進行による既存毛の減少 | 移植毛と既存毛の密度、植えた範囲、AGAの進行状況 |
| 後頭部(採取部)が薄くなった | 1回の採取数が多い、採取が一部に集中している | 残っているドナーの密度、採取跡の分布、今後採取できる範囲 |
| 採取跡が気になる | 点状の採取跡の集中、FUTの線状の傷跡 | 傷跡の位置・幅・数、周りの毛で隠せるか |
| 生え際が不自然に見える | 生え際の形、1本毛の配置、毛の角度や向き | 生え際のライン、移植毛の角度、既存毛とのなじみ方 |
密度が足りないと感じる場合でも、原因がグラフト数の不足だけとは限りません。原因によって、追加で植えるべき範囲や数、優先順位が変わるため、まず現在の状態を分けて評価することが大切です。
2回目・修正の手術で大切にしていること
- 評価の時期:移植毛は術後数か月かけて生えてくるため、仕上がりの評価は術後12か月ごろを目安にします。それより早い時期は、ご相談のうえで経過を見ることがあります。
- 今ある毛を傷つけない:前回の移植毛や既存毛の間に移植穴を作るため、毛の向きと角度に合わせ、今ある毛を傷つけないよう配慮します。
- 残っているドナーを守る:前回採取していない範囲や密度が保たれている範囲から分散して採取し、後頭部をこれ以上薄く見せないことを優先します。将来AGAが進んだときに使える分も考えて、採取数を決めます。
- デザインの見直し:生え際の形や毛の流れが気になる場合は、前回の移植毛を活かしながら、グラデーションデザインの考え方で境目をなじませる配置を検討します。FUTの線状の傷跡がある場合は、傷跡に植毛して目立ちにくくする方法を検討できることもあります。
ドナーの残りが少ない場合は、植える範囲を絞る、見た目への影響が大きい部分を優先するなど、計画を調整することがあり、希望する数を採取できない場合もあります。仕上がりには個人差があります。
自毛植毛の費用と主なリスク・副作用
自毛植毛は保険適用外の自由診療です。手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で計算します。1グラフトあたりの料金は、アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない)が1,870円、アルモHi-STANDARD法(刈り上げる)が1,078円(いずれも税込)です。
| グラフト数 | アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない) | アルモHi-STANDARD法(刈り上げる) |
|---|---|---|
| 1,000グラフト | 2,075,000円 | 1,283,000円 |
| 2,000グラフト | 3,945,000円 | 2,361,000円 |
| 3,000グラフト | 5,815,000円 | 3,439,000円 |
※いずれも税込・手術料金の計算例です(2026年10月時点)。このほか手術前の血液検査11,000円(税込)がかかり、感染症がある方は別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります。最新の料金は植毛メニュー(料金表)をご確認ください。
手術は通常1回・日帰りで行い、範囲やドナーの状態によっては複数回の手術を計画する場合があります。術後は数か月かけて発毛が進み、6か月ごろから変化を評価できますが、最終的な仕上がりは術後12か月ごろを目安に判断します。
主なリスク・副作用:術後の痛み・腫れ・内出血、かさぶた、既存毛の一時的な脱毛(ショックロス。回復しない場合を含む)、感染、毛嚢炎、採取部や移植部のしびれ・感覚の鈍さ、採取部の点状の傷跡や密度の低下、移植毛が十分に生着しない可能性があり、仕上がりには個人差があります。自毛植毛はAGAの進行を止めるものではありません。ショックロスについては「植毛後のショックロスとは?」で解説しています。
刈り上げない植毛のグラフト数に関するよくある質問
Q. 刈り上げない植毛でも3,000グラフト以上植えられますか?
ドナーの量や毛の条件によっては検討できる場合もありますが、手術時間が長くなり、採取の負担も大きくなります。当院では、まずその数が本当に1回で必要かどうか、将来に残すドナーとのバランスを含めて確認します。刈り上げる方法や2回に分ける計画と比べたうえで決めるのが一般的です。
Q. 刈り上げない方法だと、生着しにくくなりますか?
刈り上げない方法だからといって、生着率が低くなるとはいえません。採取するグラフトの組織は刈り上げる方法と同じで、株の扱い方や移植の手順も同じ考え方で行います。一方で、採取時の損傷、グラフトの乾燥や体の外にある時間、移植時の操作などは生着に影響する可能性があり、両方式の生着率を一律に比べられるデータは限られています。当院では、採取の精度を保てる範囲で数を決めています。生着には個人差があります。
Q. 刈り上げない植毛は、髪の長さがどのくらいあればできますか?
当院では、5mm程度の短髪でも対応できる場合がありますが、毛質や採取範囲によって適応は異なり、5mm程度で採取できる場合でも、術後の採取跡を周りの髪で十分に隠せるとは限りません。また、採取部を周りの毛で覆って目立ちにくくするには、ある程度の長さがあるほうが有利です。採る数が多いほど覆う範囲も広くなるため、髪型と合わせて診察で相談してください。
Q. 手術当日に、予定より多く植えてもらうことはできますか?
グラフト数は、事前の診察でドナーとデザインをもとに計画します。当日の頭皮の状態などで調整することはありますが、ドナーの見積もりや手術時間の前提が変わるため、大きく増やすことは勧めていません。契約したグラフト数の確認方法は「契約したグラフト数は本当に植わった?」で解説しています。
Q. 1回目は刈り上げない方法、2回目は刈り上げる方法にできますか?
可能な場合があります。2回目の方法は、1回目の採取範囲や残っているドナーの密度、傷跡、必要なグラフト数、そのときの髪型や仕事の事情を確認して判断します。1回目の採取跡の分布によって2回目に採れる範囲が変わるため、1回目の時点で将来の採取も見込んだ計画を立てておくことが大切です。
Q. 他院で刈り上げない植毛を受けましたが、密度が足りません。追加で植えられますか?
追加の植毛を検討できる場合があります。まず、前回の手術から移植毛の発毛を評価できる時期(術後12か月ごろが目安)を過ぎているかを確認します。術後早い時期は、まだ生えそろっていない毛があるため、密度の評価が難しいためです。
そのうえで、移植部の既存毛と移植毛の密度、後頭部・側頭部に残っているドナーの量、前回の採取跡の分布を診察で確認し、追加できるグラフト数と植える範囲を決めます。密度が足りないと感じる原因は、グラフト数の不足だけでなく、植えた範囲の広さや株の配置、生着の状況、AGAの進行による既存毛の減少などが重なっていることもあるため、原因を分けて考えることが大切です。
追加の植毛では、すでに生えている移植毛や既存毛の間に移植穴を作るため、毛の向きに角度をそろえ、今ある毛を傷つけないように配慮します。前回の手術のグラフト数や術式がわかる資料があれば、診察時にお持ちください。他院で手術を受けた方のご相談については「植毛のセカンドオピニオン」で解説しています。
Q. 他院の手術で後頭部が薄くなりました。それでも2回目の植毛はできますか?
後頭部に採取できるドナーが残っていれば、2回目の植毛を検討できる場合があります。後頭部が薄く見える原因には、1回で採取した数が多かった、採取が一部に集中した、点状の採取跡が目立つ、などがあり、原因と残っているドナーの密度によって判断が変わります。
2回目では、前回採取していない範囲や密度が保たれている範囲から分散して採取し、後頭部をこれ以上薄く見せないことを優先します。ドナーの残りが少ない場合は、植える範囲を絞る、生え際など見た目への影響が大きい部分を優先する、といった計画になることがあり、希望する数を採取できない場合もあります。また、FUT(帯状に皮膚を切り取って採取する方法)の線状の傷跡が気になる場合は、傷跡に植毛して目立ちにくくする方法を検討できることもあります。
生涯で採取できる量の考え方は「自毛植毛は一生で何グラフト採れる?」、採取部の傷跡については「植毛の傷跡は残る?」で解説しています。
まとめ
刈り上げない植毛で植えられる数は、術式の名前ではなく、ドナーの量と密度、採る毛だけを切る準備の手間、1日で終えられる手術時間、毛包を傷つけずに採れるかという条件で決まります。
当院では2,000グラフトを超える刈り上げない手術も行っていますが、同じ数でも刈り上げる方法より時間がかかり、費用も高くなります。必要な数が多い場合は、刈り上げる方法や2回に分ける計画と比べたうえで、無理のない範囲を診察で一緒に決めていきましょう。
参考文献:Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation. 6th ed. Thieme; 2022(Section V Introduction and Definition of Follicular Unit Excision:FUEの名称/FUTとFUEの比較の章:刈り上げないFUEの普及によるFUTの利点の変化/女性の植毛の章:多くの術者が毛包の選別と採取速度のために刈り上げる方法を好むこと/Nonshaven Follicular Unit Extraction Techniques・Long Hair Preview Follicular Unit Excision Techniques の章立て)。「当院では」「院長は」とある記述は、院長の臨床上の見解または当院の案内です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師