なおるん毛髪情報局
血液をサラサラにする薬を飲んでいても植毛できる?休薬の判断と出血・血腫・生着の関係
【この記事の結論】
血液をサラサラにする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を飲んでいても、自毛植毛を受けられる場合はあります。ただし、薬の種類、飲んでいる理由、持病の状態、手術の規模によって判断が異なります。薬を続けるか一時的に止めるかは、自己判断せず、処方している主治医の判断のもとで、出血と血栓症の両方のリスクを踏まえて決めます。自己判断で薬を止めると、心筋梗塞や脳梗塞などの重い病気につながるおそれがあります。
植毛では、出血が多いとグラフト(移植する毛の株)を入れて固定する操作が難しくなることがあります。ただし、薬や出血が生着にどの程度影響するかを示す十分なデータはありません。薬ごとに一律の休薬期間は決められず、一般的な血液検査だけで安全性を判断できるわけでもありません。
持病が安定していない場合は、植毛を延期・見送ることがあります。服用中の処方薬・市販薬・サプリメントは、カウンセリングの段階ですべて伝えてください。
※この記事は、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方が植毛を受けるときの考え方に絞って解説します。手術前後の食事やサプリメント全般の注意点は「植毛後の食事で気をつけること」、植毛のリスク全般は「自毛植毛のデメリット」で解説しています。
「血液をサラサラにする薬」とは
一般に「血液をサラサラにする薬」と呼ばれるのは、血液そのものを薄くする薬ではなく、血の塊(血栓)ができる仕組みを抑える薬です。大きく分けて、抗血小板薬と抗凝固薬の2種類があります(確立した知見)。
| 種類 | 主な働き | 処方されることが多い病気の例 | 植毛前の考え方 |
|---|---|---|---|
| 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど) | 血小板が集まって固まるのを抑える | 狭心症・心筋梗塞(冠動脈ステント後を含む)、脳梗塞の再発予防など | 薬の種類、飲んでいる目的、血栓症のリスクに応じて、継続か一時中止などを主治医が判断する |
| 抗凝固薬(ワルファリン、直接経口抗凝固薬[DOAC]など) | 血液を固める仕組み(凝固因子)の働きを抑える | 心房細動、深部静脈血栓症、機械弁など(機械弁では原則ワルファリンが使われるなど、病気と薬の組み合わせは一律ではない) | 薬の種類、腎臓の働き、持病の状態、手術の出血リスクによって対応が異なる |
このほか、市販の解熱鎮痛薬やかぜ薬の一部にも、血小板の働きを弱める成分が含まれていることがあります。ビタミンEや魚油などのサプリメントにも出血に影響する可能性が指摘されていますが、影響は種類や量によって異なり、通常の量で手術時の出血が問題になるほど増えるとは限りません(根拠が限られる)。いずれも、手術前に申告していただくことが大切です。
植毛で出血が問題になる理由
頭皮は血管が多く、植毛の手術では、採取部と移植部の両方に小さな傷をたくさんつくります。出血しやすい状態だと、次のようなことが起こりえます。
- 移植の操作が難しくなる:移植する穴から血がにじみ続けると、穴の位置や深さが見えにくくなり、グラフトを入れて固定する操作が難しくなることがあります。
- グラフトが浮く・飛び出す:出血でグラフトが押し上げられると、穴にしっかり収まらないことがあります(「植毛後にグラフトが浮く・飛び出す「ポップアップ」とは?」)。
- 血腫ができる:傷が治る過程で小さな血の塊ができるのは正常な反応ですが、ある程度大きな血腫ができると、周りの組織に影響する可能性があります。ただし、血腫が生着率をどの程度下げるかを示す根拠は限られています。
- 術後の内出血・腫れが目立つ:額やまぶたに内出血や腫れが広がることがあります(「植毛後の腫れ・むくみはいつまで?」)。
当院では、グラフトの大きさや移植部の状態を考えて移植穴の形や大きさを調整し、止血と移植の操作に注意しています(当院の方針)。ただし、こうした工夫で薬による出血のリスクをどの程度減らせるかは明らかではありません。
薬の影響で出血しやすい状態では、手術の進め方に配慮が必要になります。移植した毛が根付くまでの仕組みは「植毛の生着率(定着率)とは?」で解説しています。
薬を止めるかどうかは主治医が判断します
血液をサラサラにする薬は、血栓による重い病気を防ぐために処方されています。植毛のために自己判断で止めると、心筋梗塞、脳梗塞、ステントの中に血栓ができるといった、命に関わる病気が起こるおそれがあります(確立した知見)。
海外の植毛の教科書(術前評価・術前準備の章)でも、抗血小板薬や抗凝固薬を飲んでいる方の植毛では、植毛医が処方医に相談し、次の2点について指示を受けることが基本とされています(一般的な知見)。
- 薬が必要になっている病気が安定していて、手術を受けてよい状態か
- 薬の飲み方を調整してよいか。調整してよい場合は、どのように調整するか
同じ教科書では、冠動脈にステントを入れて間もない時期は、抗血小板薬を中断すると血栓のリスクが高いため、待機できる手術である植毛は延期を検討すること、心房細動などで抗凝固薬を飲んでいる方への対応(継続・量の調整・一時中止)は循環器の医師によって分かれることが紹介されています。どの方法をとるかは、病気の種類と状態によって一人ひとり違います。
薬の続け方・止め方と再開の計画は処方医と連携して決めます。そのうえで、植毛を行えるかどうかは、持病の状態、出血のリスク、手術の範囲などを踏まえて、植毛を担当する医師が総合的に判断します。主治医が休薬してよいと判断しても、それだけで手術が決まるわけではありません。
当院では、薬の休薬が必要かどうか、必要な場合にいつから止めていつ再開するかは、処方している主治医の指示に従っていただくことを原則としています(当院の方針)。この記事では、薬ごとの休薬期間は書いていません。インターネットの情報や他の方の例を参考に、自分で止める日を決めないでください。
植毛を受けるまでの流れ
| 段階 | 行うこと | ポイント |
|---|---|---|
| カウンセリング・診察 | 持病、服用中の薬(処方薬・市販薬)、サプリメントをすべて申告 | 薬の名前が分かるお薬手帳などを持参すると確認しやすい |
| 主治医への確認 | 植毛を受けてよいか、薬をどうするかを主治医に確認 | 植毛の内容(局所麻酔で行う手術であること、手術時間の目安など)を主治医に伝えて相談する |
| 術前の血液検査 | 必要に応じて血算・腎機能・肝機能・凝固関連の検査などで全身の状態を確認 | 一般的な血液検査だけで、すべての薬の作用や出血のリスクを判断できるわけではない。結果によっては手術の時期を見直す |
| 手術の計画 | 出血の見込みを踏まえて、手術日や進め方を決める | 持病の状態によっては、手術を延期・見送ることもある |
| 手術後 | 出血・血腫のサインを確認し、薬の再開は主治医と当院の指示に従う | 自己判断で再開を遅らせたり早めたりしない |
手術前の血液検査の目的は「AGA治療・植毛手術の前に血液検査を行う4つの目的」で紹介しています。
主治医に相談するときに伝えること
主治医が薬の扱いを判断するには、どのような手術を受けるのかを具体的に知る必要があります。「植毛をしたい」と伝えるだけでは、判断がしにくいことがあります。次の項目をメモにまとめて、診察のときに主治医に渡すと相談がスムーズです。
主治医に伝える項目
- 手術名:自毛植毛(FUE法)。後頭部などから毛包単位で毛を採取し、薄毛の部分に移植する手術です。
- 麻酔の方法:局所麻酔で行います(全身麻酔ではありません)【要確認:鎮静の有無、麻酔薬にアドレナリンを含むか】。
- 手術時間の目安:移植する本数によって異なり、【要確認:〇時間〜〇時間程度】です(「植毛の手術は何時間かかる?」)。
- 手術の範囲と出血:皮膚の浅い層に小さな傷をたくさんつくる手術です。採取部は原則として縫合しません。頭皮は血管が多く、出血しやすい部位です。
- 手術の予定日:予定日、または候補日。
- 植毛クリニックの連絡先:当院の名称・電話番号・担当医師名(主治医から当院へ問い合わせができるように)。
主治医に確認していただきたいこと
- 持病が安定していて、手術を受けてよい状態か
- 薬を続けたままでよいか、調整や一時中止が必要か
- 調整する場合は、いつから止め、いつ再開するか(再開の目安は、術後の出血の状態を見て当院からもご連絡します)
主治医からの回答は、カウンセリングや術前の診察のときにお知らせください。主治医の判断を確認したうえで、植毛を行うかどうかと手術の進め方を、当院の医師が最終的に判断します。
手術の後に気をつけたいこと
手術直後は、採取部や移植部から血がにじむことがあります。対処は場所によって異なります。採取部はクリニックの指示に従って押さえて止血します。移植部はグラフトがずれるおそれがあるため、こすったり直接強く押したりしないでください。次のような場合は、速やかに手術を受けたクリニックへ連絡してください。
- 軽く押さえても出血が止まらない、出血が繰り返す
- 移植部や採取部が腫れて、しこりのように盛り上がってきた
- 痛みや腫れが日ごとに強くなる
大量の出血が続く、意識が遠くなるなどの症状がある場合は、クリニックへの連絡だけでなく、救急受診を検討してください。
術後の最初の数日は、移植したグラフトが根付くための大切な時期です。過ごし方は「植毛後48時間が重要といわれる理由」、洗髪の始め方は「植毛後のシャンプーはいつから?」で解説しています。
手術を延期した方がよい場合
植毛は、命に関わる病気の治療ではなく、時期を選べる手術です。次のような場合は、植毛よりも持病の治療を優先し、手術の時期を延ばすことがあります。
- 主治医から、薬の調整ができない、または手術を控えるよう指示された
- ステントを入れて間もない、最近脳梗塞や血栓症を起こしたなど、病気が安定していない
- 血液検査で、血液の固まりやすさや全身の状態に問題が見つかった
延期になった場合も、薄毛が進むのが心配な方は、AGA治療などの選択肢を主治医と相談しながら検討できます。治療薬と植毛の関係は「AGA治療薬と自毛植毛はどっち?」も参考にしてください。
自毛植毛の費用と主なリスク・副作用
当院の自毛植毛は、後頭部などから毛包単位で毛を採取し、薄毛の部分へ移植する手術(FUE)です。保険適用外の自由診療です。手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で計算し、1グラフトあたりの料金は、刈り上げるアルモHi-STANDARD法が1,078円、刈り上げないアルモUn-SHAVEN法が1,870円(いずれも税込)です。総額の例:1,000グラフトを刈り上げる方法で行う場合、205,000円+1,078円×1,000=1,283,000円(税込)です。このほか手術前の血液検査11,000円(税込)がかかり、所定の感染症がある方は別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります(対象となる感染症や適用条件は事前にご説明します)。血液検査を含めると、1,283,000円+11,000円=1,294,000円(税込)です。手術は通常1回・1日で行い、仕上がりの確認は術後1年前後が目安です。範囲や全身の状態によっては、延期したり2回以上に分けたりすることがあります。主治医への相談や追加の検査が必要になった場合は、その医療機関での費用が別にかかることがあります。詳しくは植毛メニュー(料金表)をご覧ください。
主なリスク・副作用:術後の痛み・腫れ・内出血・出血、血腫、かさぶた、かゆみ、既存毛の一時的な脱毛(ショックロス。回復しない場合を含む)、感染、毛嚢炎、採取部や移植部のしびれ・感覚の鈍さ、採取部の点状の傷跡や密度の低下、移植部の凹凸、まれに移植部の血行障害、移植毛が十分に生着しない可能性、仕上がりに左右差が出る可能性があり、仕上がりの自然さや密度の感じ方には個人差があります。血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、出血・内出血・血腫が起こりやすくなる可能性があります。自毛植毛はAGAの進行を止めるものではありません。当院の症例は症例紹介でご覧いただけます(仕上がりには個人差があります)。
血液をサラサラにする薬と植毛に関するよくある質問
Q. 薬のことを申告しないで手術を受けてもよいですか?
申告せずに手術を受けるのは危険です。出血が多くなるだけでなく、術中・術後に使う薬との飲み合わせを確認できません。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めてお伝えください。
Q. 市販の痛み止めやサプリメントも止めた方がよいですか?
市販の解熱鎮痛薬の一部やサプリメントには、出血に影響する可能性があるものがあります。止めるかどうかと時期は、製品名を確認したうえで当院からご案内します。持病のために医師から指示されて飲んでいるものは、自己判断で止めず、主治医に相談してください。
Q. 薬を続けたまま植毛すると、生着しにくくなりますか?
出血が多いと、グラフトを入れて固定する操作が難しくなることがあります。ただし、薬を続けることや出血が生着率にどの程度影響するかについては、十分な臨床データがありません。薬を続けたままでも手術を行える場合はありますが、続けたままで安全に行えるとも限らないため、主治医と植毛を担当する医師が個別に判断します。
Q. 術後はいつから薬を再開できますか?
再開の時期は、出血の状態を見たうえで、主治医と当院の指示に従ってください。止めていた期間が長くなるほど血栓のリスクが続くため、自己判断で再開を遅らせないことが大切です。ほかの疑問はよくある質問のページにもまとめています。
Q. 歯の治療(抜歯)では薬を続けたままだったのに、植毛では違うのですか?
抜歯などの歯の治療では、血液をサラサラにする薬を続けたまま行うことが多くなっています。傷が小さく、ガーゼで押さえたり縫ったりして止血しやすいためです。
一方、植毛の手術では、採取部と移植部の両方に、小さな傷を数百〜数千か所つくります。手術時間も長く、頭皮は血管が多い部位です。さらに植毛では、出血が多いと移植する穴が見えにくくなり、グラフトを入れて固定する操作が難しくなることがあります。このように手術の条件が異なるため、歯の治療で続けたままだったからといって、植毛でも同じ扱いになるとは限りません。
ただし、植毛でも薬を必ず止めるわけではありません。続けたまま行える場合もあります。どうするかは、植毛の内容を伝えたうえで主治医が判断します(主治医に伝える項目)。
Q. 手術日を決めてから主治医に相談すればよいですか?
おすすめは、カウンセリング → 主治医への相談 → 手術日の確定 の順番です。主治医の判断によっては、薬の調整に時間が必要になったり、持病の治療を優先して手術を延期したりすることがあるためです。
カウンセリングで手術の内容や候補日をお伝えしますので、その情報を持って主治医に相談してください。主治医の判断を確認してから、正式に手術日を決めます。すでに手術日を予約している場合も、主治医に相談するのが遅れたときは、早めに当院へご連絡ください。
Q. 術後の痛み止めは何を使いますか? 市販の痛み止めを飲んでもよいですか?
術後の痛み止めは、当院で処方したものを、指示どおりに使ってください。
市販の痛み止めのなかには、アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンなど、血小板の働きに影響して出血しやすくなる成分を含むものがあります。血液をサラサラにする薬と一緒に飲むと、出血のリスクがさらに高まることがあります。術後に市販薬を使いたい場合は、飲む前に当院へご相談ください。かぜ薬にも同じような成分が含まれていることがあるので、ご注意ください。
Q. 主治医から植毛を控えるように言われたら、ほかに方法はありますか?
植毛は時期を選べる手術です。持病の治療を優先し、病気が安定してから改めて検討することもできます。その間に薄毛の進行が心配な方は、AGA治療薬(内服薬・外用薬)で進行を抑える方法があります。ただし、治療薬のなかには血圧や心臓に影響するものもあります。持病のある方は、主治医に相談したうえで、使える薬を選ぶことが大切です。
まとめ
- 血液をサラサラにする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を飲んでいても、植毛を受けられる場合はあります。
- 薬を続けるか、調整するか、一時的に止めるかは、処方している主治医の判断が必要です。自己判断で止めると、命に関わる病気につながるおそれがあります。
- 出血が多いと、グラフトを入れて固定する操作が難しくなることがあります。生着への影響の程度を示す十分なデータはありませんが、出血と血腫には注意が必要です。一般的な血液検査だけで安全性を判断できるわけではありません。
- 病気が安定していない場合は、植毛よりも持病の治療を優先し、手術の時期を延ばします。自毛植毛の全体の流れは自毛植毛のページで紹介しています。
参考文献:Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation. 6th ed. Thieme; 2022(術前評価・術前準備の章:術前評価で抗血小板薬・抗凝固薬を確認し、中止の可否は処方医が判断すること、抗血栓療法を受けている方の植毛の考え方、出血に影響する市販薬・サプリメントの扱い)。2024 AHA/ACC Guideline for Perioperative Cardiovascular Management for Noncardiac Surgery. Douketis JD, et al. Perioperative Management of Antithrombotic Therapy: An American College of Chest Physicians Clinical Practice Guideline. Chest. 2022。料金は当院の植毛メニュー(料金表)(2026年10月時点・税込)によります。「当院では」「院長は」とある記述は、院長の臨床上の見解または当院の案内です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師