なおるん毛髪情報局
毛髪DHT検査は意味がある?薬を飲んでいる人の数値の見方と確認の順番
【この記事の結論】
毛髪DHT検査は、毛髪に含まれるDHT(ジヒドロテストステロン)の量やその関連指標を調べる検査です。ただし、数値だけでAGAかどうかや、今後どのくらい進行するかを判断することはできません。AGAの診断は、問診と頭皮・毛髪の診察(視診やマイクロスコープなど)が中心です。
フィナステリドやデュタステリドを飲んでいる方は、薬の作用でDHTの数値が低く出ることがあります。数値が低くても抜け毛が続く場合には、AGA以外の原因やヘアサイクルの影響も考える必要があります。
この記事では、検査で分かることと分からないこと、薬を飲んでいる方の数値の見方、結果を見たあとの確認の順番を、確立した知見と当院の見解を分けて解説します。
※この記事は「毛髪DHT検査の結果をどう読むか」に絞っています。DHTそのものの働きや減らす方法は「ジヒドロテストステロン(DHT)を減らす方法」、体質を調べる検査は「AGA遺伝子検査は意味ない?」で解説しています。
毛髪DHT検査とは何を測る検査か
DHTは、テストステロンが酵素の5αリダクターゼによって変換されてできる男性ホルモンです。遺伝的な素因のある方では、DHTが毛包に作用することで毛が太く育つ前に抜けやすくなり、細く短い毛が増えていくと考えられています。酵素の種類と働きは「5αリダクターゼとは?」で解説しています。
毛髪DHT検査は、郵送キットなどで毛髪を送り、毛髪に含まれるDHTや関連する成分を測るものです。測定する項目、結果の表し方、基準の決め方は検査ごとに異なるため、別の検査の数値と単純に比べることはできません。
確認しておきたいのは、毛髪は生えてきた時期の情報を含むという点です。毛髪のどの部分を測った結果なのかによって、現在の体の状態をそのまま表しているとは限りません。採取した部位や毛の太さによって結果が変わる可能性もあります。
検査で分かること・分からないこと
薄毛に関係する検査や診察は、それぞれ見ているものが違います。毛髪DHT検査だけで全体を判断しないことが大切です。
| 方法 | 見ているもの | それだけでは判断できないこと |
|---|---|---|
| 毛髪DHT検査 | 送付した毛髪に含まれるDHTや関連指標 | AGAかどうかの診断、今後の進行の速さ、発毛効果の程度や治療を変える必要性 |
| 血液検査 | 全身の状態(項目により肝機能、ホルモン値など) | 頭皮の毛包で何が起きているか |
| AGA遺伝子検査 | 体質に関連するとされる遺伝子の情報 | 今の薄毛の状態や原因 |
| 問診・視診・マイクロスコープ | 薄毛の形、経過、家族歴、毛の太さのばらつき、頭皮の状態 | 将来の進行を正確に言い当てること |
日本皮膚科学会の診療ガイドライン(2017年版)では、AGAの診断は問診と視診などの臨床所見が中心とされています。服用中の方の毛髪でDHTが低いことを示した研究(Hobo Yら、2023年)もありますが、この結果だけで個人の発毛効果や治療変更の必要性を判断できるわけではなく、毛髪中のDHT量から進行の速さや治療効果を判定する方法が確立しているとは言えません。
当院では、薄毛の原因を判断するときは数値よりも臨床所見を重視しています。マイクロスコープで分かることは「頭皮のマイクロスコープ診断で何が分かる?」で解説しています。血液検査の目的は「AGA治療・植毛前の血液検査は必要?」をご覧ください。
薬を飲んでいる人の数値の見方
フィナステリドとデュタステリドは5αリダクターゼの働きを抑え、DHTが作られる量を減らす薬です。このため、数値を読むときは服用の有無を考慮する必要があります。検査の前に、服用している薬の名前と服用期間を確認し、結果を見る医師にも伝えてください。
| 結果のパターン | 考えられること | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 服用中に、検査会社の基準で低値と示された | 薬の作用で低くなっている可能性がある | 服用状況、毛の太さの変化、測定した毛の部位 |
| 服用中に、検査会社の基準で高値と示された | 測定の条件による差、服用状況の影響など | 飲み忘れの有無、薬の入手経路、検査の条件。この結果だけで薬を変えない |
| 服用していないのに、低値と示された | 数値だけではAGAを否定できない | 薄毛の形、軟毛化の有無、AGA以外の脱毛症 |
| 数値が低いのに抜け毛が多い | ヘアサイクルの影響、休止期脱毛、円形脱毛症などAGA以外の原因の可能性 | 抜け毛の性状、皮膚の状態、血液検査が必要かどうか |
デュタステリドはDHTが作られるのを抑える薬なので、服用中に数値が低く出ることは、当院の見解では不自然な結果ではありません。測定できる下限を下回る結果は、DHTがゼロという意味ではなく、そのことだけで検査の誤りとも、治療が十分とも言い切れません。薬の働きと半減期は「フィナステリドは半減期が短いのになぜ1日1回で効く?」も参考になります。
「DHTが低いのに抜ける」という場合、当院ではAGAの進行だけでなく、ヘアサイクルの影響で抜ける時期の毛が重なっている可能性や、他の脱毛症の可能性も含めて診察で確認する必要があると考えています。AGAと間違えやすい脱毛症は「AGAと間違えやすい脱毛症とは?」で解説しています。
また、「テストステロンが少ないからDHTも足りず、髪が育たないのでは」と心配される方もいます。当院では、AGAの抜け毛についてテストステロンの量だけで説明できるとは考えていません。関連する話題は「テストステロン注射(補充療法)で薄毛は進む?」をご覧ください。
結果を見たあとの確認の順番
検査の結果を受け取ったら、次の順番で整理すると判断しやすくなります。
- 検査の条件を確認する:どの部位の毛を送ったか、服用中の薬はあるか、検査の説明書に書かれた基準は何か。
- 見た目の変化を確認する:同じ条件で撮った写真で、生え際や頭頂部の変化を比べる。
- 毛の質を確認する:太い毛の間に細い毛が増えていないか。前髪が割れやすい場合は「前髪・生え際が割れるのは薄毛のサイン?」も参考になります。
- 他の原因を考える:急に抜ける、丸く抜ける、かゆみや赤みが強いといった症状があれば、AGA以外の可能性も含めて皮膚科などで相談する。
- 治療を変える前に処方医へ相談する:数値だけを理由に、自己判断で薬を増やす、やめる、種類を変えることは避ける。副作用が疑われる症状があるときは、早めに処方医に連絡する。
治療中の方で効果の実感が乏しい場合、検査の数値を見直すより先に、服用の継続状況や薄毛の段階を確かめることが大切です。薬の特徴と手術の役割の違いは「AGA治療薬と自毛植毛はどっち?」で解説しています。
検査の注意点・デメリット
- 毛髪DHT検査の多くは保険適用外です。費用と測定項目は検査ごとに異なるため、購入前に確認してください。
- 数値が高くても、低くても、それだけでAGAの有無や将来の薄毛を判断することはできません。
- 結果の説明が検査会社の基準に基づく場合、診察で分かる頭皮の状態は反映されていません。
- 結果をきっかけに高額な商品や治療を勧められた場合は、その場で決めず、根拠と費用を確認してください。
- フィナステリド・デュタステリドの主な副作用には、性欲減退、勃起機能の低下などの性機能に関する症状、肝機能の異常があります。効果には個人差があります。AGA治療は基本的に保険適用外の自由診療です。
植毛を検討している場合も、毛髪DHT検査の数値で手術の適応が決まるわけではありません。自毛植毛は自由診療の手術で、腫れ、痛み、出血、感染、採取部の傷跡、既存毛の脱毛(ショックロス。多くは一時的ですが、十分に回復しない場合があります)、移植毛の一部が生着しないこと、麻酔に関するリスク、仕上がりの個人差などがあります。手術の概要は自毛植毛のページ、よくある質問はFAQをご覧ください。
参考:自毛植毛の費用の目安(当院・税込・自由診療)
自毛植毛は、後頭部や側頭部から毛包を含む皮膚組織を採取し、薄くなった部分に移植する手術です。当院の自毛植毛は、通常1回の手術(所要時間はグラフト数により4〜10時間程度)で行い、手術翌日の診察のあと、術後6ヶ月と術後12ヶ月を目安に術後検診で経過を確認します(必要に応じて、これ以外にもご来院をお願いすることがあります)。移植した毛は術後3ヶ月ごろから生え始め、仕上がりの評価は術後1年が目安です。移植範囲や希望する密度、頭皮の状態によっては、最初から複数回に分けて計画することや、追加の手術を検討することがあり、その場合の費用はカウンセリングで個別にご案内します。
自毛植毛は保険適用外の自由診療です。手術料金は「基本料金+1グラフトの料金×グラフト数」で計算し、基本料金には鎮静麻酔・局所麻酔・点滴・内服・術後の処方が含まれます(2026年10月時点)。
| 項目 | アルモHi-STANDARD法(刈り上げる) | アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない) |
|---|---|---|
| 基本料金(麻酔・点滴・術後処方を含む) | 205,000円 | 205,000円 |
| 1グラフト | 1,078円 | 1,870円 |
| 例:1,500グラフトの手術料金 | 1,822,000円 | 3,010,000円 |
| 1,500グラフトの手術+血液検査(11,000円)の合計例 | 1,833,000円 | 3,021,000円 |
必要なグラフト数は薄毛の範囲や希望する密度によって変わります。手術前の血液検査は11,000円で、感染症がある方は感染症対策料198,000円が別途かかります。最新の料金は植毛メニュー(料金表)でご確認ください。
よくある質問
Q. 毛髪DHT検査でAGAかどうか分かりますか?
A. 数値だけでは分かりません。AGAの診断は、薄毛の形や経過の聞き取り、頭皮と毛髪の診察が中心です。検査は参考情報の一つとして考えてください。
Q. 薬を飲んでいるのに抜け毛が多いです。検査を受けるべきですか?
A. 検査の数値より先に、服用状況、毛の太さの変化、他の脱毛症がないかを診察で確認することをおすすめします。服用中はDHTの数値が低く出ることがあり、抜け毛の原因が数値だけで分かるとは限りません。
Q. 数値が低ければ薬をやめてもよいですか?
A. 数値が低いのは薬の作用による場合があり、服用をやめるとDHTの抑制もなくなります。自己判断でやめず、処方医に相談してください。中断した場合の考え方は「フィナステリドをやめたらどうなる?」で解説しています。
まとめ
- 毛髪DHT検査は毛髪中のDHTや関連指標を調べる検査で、AGAの診断や進行の予測を単独で行えるものではありません。
- フィナステリドやデュタステリドを服用中は、薬の作用で数値が低く出ることがあります。
- 数値が低いのに抜け毛が多い場合は、ヘアサイクルやAGA以外の原因も確認します。
- 数値だけで薬を変更せず、処方医や診察で判断してください。AGA治療や検査の多くは自由診療で、薬には副作用があります。
参考文献:真鍋求ほか.男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版.日本皮膚科学会雑誌 2017;127(13):2763-2777/Hobo Y, et al. Clin Chim Acta. 2023;547:117456(PubMed)/プロペシア錠・ザガーロカプセルの添付文書(作用機序)。当院の見解は、院長が公開している相談回答に基づく一般論であり、個別の診断を示すものではありません。
執筆:アルモ形成クリニック編集部