なおるん毛髪情報局
植毛後の育毛レーザー(低出力レーザー)はいつから?ショックロス対策としての位置づけ
【この記事の結論】
当院では術後1〜2週間前後、担当医が頭皮を確認してから始めることが多いです(術後すぐは不可)。
低出力レーザー(LLLT)は、AGA(男性型脱毛症)などに対して発毛効果を示す研究があり、植毛後に既存の毛を維持するための補助療法として検討されることがあります。植毛後に使う場合、当院では、移植したグラフト(毛包を含む移植組織)が落ち着き、担当医が頭皮の状態を確認したうえで、術後1〜2週間前後から始めることが多くなっています。ただし、移植の密度やかさぶた・赤みの状態によって時期は変わるため、自己判断で術後すぐに使い始めることは勧めていません。
これは当院の術後管理上の目安で、最適な開始時期が臨床試験で確かめられているわけではありません。
植毛後のショックロス(既存の毛の一時的な抜け毛)を減らす目的で使われることもありますが、ショックロスの予防や生着率の改善に効果があることは確立していません。手術の結果を左右する主役ではなく、AGAによる既存の毛の脱毛に対する補助的な選択肢と考えるのが現実的です。
※この記事は、植毛を受けた方・受ける予定の方が「低出力レーザーをいつから、どんな位置づけで使うか」に絞って解説します。ショックロスそのものの原因や経過は「植毛後のショックロスとは?」、術後の生活全般の目安は「植毛のダウンタイムはいつまで続く?」で解説しています。
低出力レーザー(LLLT)とは?分かっていることと分かっていないこと
低出力レーザーは、組織を焼いたり切ったりする高出力のレーザーとは違い、熱で組織を壊すことを目的としない弱い光を頭皮に当てる治療です。家庭で使うキャップ型・ヘルメット型・くし型の機器が多く、光で細胞の働きに影響を与えるという意味で「フォトバイオモジュレーション」と呼ばれることもあります。
根拠の強さは、次のように分けて考えると分かりやすくなります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確立している位置づけ | 日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、男性型・女性型脱毛症に対するLEDおよび低出力レーザー照射は推奨度B(行うよう勧める)とされています。AGAを対象に、偽の機器と比べて毛髪の密度が増えたとするランダム化比較試験も複数あります。ただし、これは脱毛症そのものに対する評価で、植毛後のショックロス予防に対する推奨ではありません。 |
| 当院の見解 | AGAの影響を受ける既存の毛の維持を補助する目的で、植毛後の補助療法として検討する価値があると考えています。内服薬・外用薬や植毛の代わりになるものではありません。 |
| 根拠が限られること | AGAに対する研究は蓄積されつつありますが、機器メーカーと関係のある研究が多いことも指摘されています。植毛後に限ると、ショックロスを減らす、生着率を上げる、生え始めを早めるといった効果を裏付ける十分な臨床データはありません。植毛後の使用で、どの照射時間・頻度・波長が適しているかも確立していません。 |
なお、米国FDAの510(k)クリアランスは、すでに販売されている機器との「実質的な同等性」に基づいて販売を認める制度で、新しい医療機器を個別に審査する承認(PMA)とは異なります。植毛後のショックロス予防の効果が証明されたことを意味するものではありません。日本で機器を使う場合も、国内での承認・認証の有無や使用目的は機器ごとに異なるため、取扱説明書や医師の説明で確認してください。
AGAの治療全体の中での位置づけは、当院のAGA治療のページでも紹介しています。
植毛後はいつから使える?当院の目安と時期ごとの考え方
院長は、術後7日目前後からの使用を目安としてきました。当院の高密度植毛では、術後1〜2週間たってから使い始める方が多くなっています。ただし、これは移植した密度や頭皮の回復具合によって前後します。
次の表は当院での一般的な目安で、この日数になれば必ず使える、という意味ではありません。開始前に担当医が頭皮の状態を確認します。
| 術後の時期 | 頭皮の状態(一般的な経過) | 低出力レーザーの考え方(当院の案内) |
|---|---|---|
| 手術当日〜2日目 | 移植直後のグラフトは物理的な刺激に弱く、にじむ程度の出血や腫れがある | 使わない。移植部に物を当てない |
| 3〜7日目 | かさぶたが付き、ぶつけたりこすったりするとグラフトが抜けることがある | 原則として使わない。キャップ型の機器は着け外しで移植部に触れやすい |
| 7日目〜2週間前後 | かさぶたが取れ始め、赤みが残る | 担当医が頭皮を確認し、問題がなければ開始を検討する時期 |
| 2週間〜1か月 | かさぶたがほぼ取れ、移植部は赤みが残ることがある | 使っている方は継続。赤み・かゆみ・熱感が強くなれば中止して相談 |
| 1〜4か月前後 | 移植した毛が一度抜け、既存の毛にショックロスが出ることもある時期 | 続けても抜け毛がなくなるわけではない。急に抜け毛が増えた、強い赤みや痛みがあるときは担当医に相談する |
術後すぐに使わないのは、光そのものよりも、機器をかぶる・外すときの接触や圧迫を避けたいからです。最初の数日がなぜ大切なのかは「植毛後48時間が重要といわれる理由」で解説しています。キャップ型の機器は帽子と同じように頭にかぶるため、帽子をかぶれる時期の考え方(植毛後の帽子はいつからOK?)も参考になります。
ほかのクリニックで植毛を受けた方は、手術の方法や密度、術後の指示がクリニックごとに違うため、使い始める時期は手術を受けた医療機関に確認してください。
ショックロス対策としての位置づけ
ショックロスは、手術の刺激などで、移植した部分やその周りの既存の毛が一時的に抜ける現象です。既存の毛の間に植える手術(既存毛間植毛)では特に気になる方が多いテーマです。
海外では、植毛後のショックロスを減らす目的で低出力レーザーを使う医師もいます。ただし、教科書でも「ショックロスを減らす・生え始めを早めると言われている」という書き方にとどまり、予防効果を裏付ける十分な臨床的根拠はありません。使えばショックロスが起きない、ということではありません。
大切なのは、レーザーで補えるものと補えないものを分けて考えることです。
- 確立していないもの:グラフトが根付くかどうか(生着)を、レーザーで改善できるかは確かめられていません。生着には、グラフトの取り扱い、移植する部分の血流や皮膚の状態、術後最初の数日の過ごし方など、複数の要因が関わります。生着の考え方は「植毛の生着率(定着率)とは?」で解説しています。
- 補助を期待するもの:移植していない既存の毛の維持です。植毛した毛とは別に、もともと生えている毛はAGAの影響を受け続ける可能性があります。手術の結果を長く生かすには、既存の毛をどう守るかが重要です。
植毛後に半年たっても生えてこないと感じるときは、レーザーを足す前に、まず診察で原因を確認してください(参考:「植毛から半年で生えてこないのは失敗?」)。
使い方の目安:「多く当てるほどよい」わけではない
低出力レーザーは、照射の回数や時間を増やせば効果が高まるとは限りません。院長も、多く当てるほどよいとは考えていません。照射時間や頻度は、機器の型式によって推奨が異なります(同じメーカーでも型式で違うことがあります)。取扱説明書の推奨条件と医師の指示に従ってください。
機器を選ぶときは、搭載されているレーザーの数だけで判断しないことも大切です。赤色の光(650nm前後)にはAGAを対象とした研究が比較的多く、赤色に近赤外線(800nm前後)を組み合わせた機器の研究もありますが、比較した研究では機器の方式も異なり、波長の組み合わせによる効果の差は十分に確立していません。
髪に遮られずに光が頭皮へ届きやすい設計か、無理なく続けられるかも大切です。術後しばらくは、移植部を圧迫しない装着ができるかも確認してください。効果を判断するには、少なくとも数か月単位で続ける必要があります。
ほかの治療との組み合わせ方
植毛後の既存の毛の維持は、内服薬・外用薬が中心で、低出力レーザーはそこに加える補助療法という位置づけです。
| 治療 | 植毛後の位置づけ | 注意点 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリドなどの内服薬 | 既存の毛のAGAの進行を抑える治療の中心 | 副作用があり、継続が前提。手術前後の服用は担当医の指示に従う |
| ミノキシジル外用薬 | 発毛を促す外用薬 | 術後の再開時期は頭皮の状態を見て担当医が決める |
| 低出力レーザー | 既存の毛の維持やショックロスへの配慮を目的とした補助療法 | 効果に個人差がある。術後早期の装着は避ける |
| PRP(多血小板血漿) | 植毛との併用が研究されている治療 | 生着率を上げる効果は確立しておらず、当院では生着を目的とする標準の併用治療にしていない |
ミノキシジルの内服(いわゆるミノタブ)は、国内では薄毛治療薬として承認されていません。使うかどうかは、副作用やほかの持病・薬との関係を含めて医師の判断が必要で、この記事では推奨しません。薬と植毛の関係は「AGA治療薬と自毛植毛はどっち?」、PRPについては「植毛とPRPの併用に効果はある?」で解説しています。
費用
Capillus(カピラス)低出力レーザーの費用は、院内お試し照射¥4,400、1ヵ月¥19,900、3ヵ月¥58,700、6ヵ月¥116,400、1年¥222,000です。※購入希望の方には、販売も行っております。当院で購入された方には、サポートをさせていただきます。
低出力レーザーは保険適用外で、費用は機器の種類や、購入するか一定期間使うかによって異なります。続けて使う治療のため、期間に応じて費用がかかります。この記事は機器の使い方の目安を解説するもので、特定の機器や治療をお勧めするものではありません。機器を使う場合は、費用・使用条件・国内での承認や認証の状況を、購入先や処方する医療機関で事前に確認してください。
自毛植毛の手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で計算します。1グラフトあたりの料金は、刈り上げるアルモHi-STANDARD法が1,078円、刈り上げないアルモUn-SHAVEN法が1,870円(いずれも税込)です。総額の例:1,000グラフトを刈り上げる方法で行う場合、205,000円+1,078円×1,000=1,283,000円(税込)です。このほか手術前の血液検査11,000円(税込)がかかり、所定の感染症がある方は別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります(対象となる感染症や適用条件は事前にご説明します)。血液検査を含めると、1,283,000円+11,000円=1,294,000円(税込)です。詳しくは植毛メニュー(料金表)をご覧ください。
リスク・副作用
低出力レーザー:重い副作用の報告は少ないとされていますが、照射中に熱を感じる、頭痛が起きる可能性があります。頭皮の赤み・かゆみなどの刺激を感じる方もいます。分かっていない副作用の可能性もゼロではありません。効果には個人差があり、使っても変化を感じにくい方もいます。術後早い時期に機器を着け外しすると、移植部に触れたり圧迫したりするおそれがあります。光で皮膚に症状が出やすい病気がある方や、光に過敏になりやすい薬を使っている方は、使う前に医師に伝えてください。レーザー光を直接見たり、眼に当てたりしないでください。機器の安全上の注意に従って使用してください。頭皮に赤みや痛みが続く場合はAGA以外の病気の可能性もあるため、受診してください。
自毛植毛:術後の痛み・腫れ(額や目の周りに出ることがあります)・内出血・出血、かさぶた、かゆみ、既存毛の一時的な脱毛(ショックロス。回復しない場合を含む)、感染、毛嚢炎、採取部や移植部のしびれ・感覚の鈍さ、採取部の点状の傷跡や密度の低下、移植毛が十分に生着しない可能性があり、仕上がりの自然さや密度の感じ方には個人差があります。自毛植毛はAGAの進行を止めるものではありません。当院の症例は症例紹介でご覧いただけます(仕上がりには個人差があります)。
植毛後の低出力レーザーに関するよくある質問
Q. 手術の翌日から使ってもよいですか?
勧めていません。術後すぐはグラフトがまだ固定されておらず、機器をかぶったり外したりするときに移植部に触れるおそれがあります。当院では、術後1〜2週間前後に頭皮の状態を確認してから始めることが多くなっています。
Q. レーザーを使えばショックロスは起きませんか?
ショックロスを防げるとはいえません。ショックロスを減らす目的で使う医師もいますが、効果を確かめたデータは限られています。ショックロスが起きた場合も、経過を検診で確認していきます。
Q. たくさん当てたほうが早く生えますか?
照射を増やせば効果が高まるとは限りません。機器ごとの推奨条件と医師の指示を守り、頭皮に問題がなければ継続を検討してください。
Q. 使っているうちに赤みやかゆみが出たら?
いったん使用を中止し、担当医に相談してください。植毛後の時期によっては、毛嚢炎などほかの原因が隠れていることもあります。
Q. 植毛前から使っている機器は、術後も続けてよいですか?
多くの場合、時期を見て再開できます。ただし、移植した範囲や密度によって再開の時期は変わるため、手術を受けた医療機関に再開してよい時期を確認してください。ほかの疑問はよくある質問のページにもまとめています。
Q. 後頭部(毛を採った部分)にも当ててよいですか?
採取部は、傷がふさがって赤みが落ち着くまでは当てないでください。目安は移植部と同じく、術後1週間前後に担当医が確認してからです。後頭部の毛はもともとAGAの影響を受けにくいため、採取部に当てる目的ははっきりしていません。採取部の治りを早める効果も確かめられていません。キャップ型の機器は後頭部にも当たる形のものが多いので、装着したときに採取部がこすれないかも確認してください。
Q. クリニックで受けるレーザー治療と家庭用の機器は何が違いますか?
主な違いは、照射の条件(出力・波長・時間)、通院が必要かどうか、続けやすさです。家庭用の機器は自宅で決まった頻度で続けやすく、クリニックの治療は医師が頭皮の状態を見ながら照射できます。どちらが効果的かを直接比べた十分なデータはありません。低出力レーザーは数か月続けることが前提なので、通院の負担や費用も含めて選ぶのが現実的です。家庭用の機器は、国内での承認・認証の有無と使用目的を購入前に確認してください。
Q. 効果はいつごろ判断できますか?いつまで続けますか?
AGAを対象にした臨床試験の多くは、16〜26週(約4〜6か月)続けて評価しています。植毛後は、移植した毛が生えそろうまでに半年〜1年ほどかかるため、レーザーだけの効果を見分けるのは難しくなります。そのため、術後の検診で既存の毛の状態とあわせて評価します。やめると維持の効果がなくなると考えられているため、続けるかどうかは、AGAの進行具合、費用、続けやすさを担当医と相談して決めてください。
Q. ミノキシジルの外用薬と同じ日に使ってもよいですか?順番は?
多くの場合、同じ日に使えます。一般的には、乾いた清潔な頭皮にレーザーを当ててから外用薬をつける順番が勧められています。薬液が残った状態で照射すると、機器に薬液が付いたり、頭皮への刺激が強まったりするおそれがあるためです。ただし、照射の前後に何をしてよいかは機器ごとに決められているため、取扱説明書に従ってください。植毛後に外用薬を再開する時期は、担当医が頭皮の状態を見て決めます。
Q. 女性が植毛を受けた後も、考え方は同じですか?
開始時期の考え方(移植部が落ち着き、担当医が確認してから始める)は男性と同じです。低出力レーザーは、診療ガイドライン(2017年版)で女性型脱毛症にも推奨度Bとされています。女性の薄毛は全体的に細くなるタイプが多く、移植した部分の周りの既存の毛を守る意味で使われることがあります。妊娠中・授乳中の方や、ホルモンの治療を受けている方は、使う前に医師に伝えてください。
まとめ
- 低出力レーザーは、日本の診療ガイドライン(2017年版)で男性型・女性型脱毛症に対して推奨度Bとされている治療で、植毛後には既存の毛の維持を補助する目的で検討されます。植毛後のショックロス予防に対する推奨ではありません。
- 当院では、担当医が頭皮の状態を確認したうえで、術後1〜2週間前後から始めることが多くなっています。術後すぐの使用は勧めていません。
- ショックロスを減らす目的で使われますが、効果を確かめたデータは限られており、ショックロスを防げるとはいえません。
- レーザーで生着率が上がることは確かめられておらず、AGAによる既存の毛の脱毛に対する補助的な選択肢と考えるのが現実的です。植毛の全体の流れは自毛植毛のページで紹介しています。
参考文献:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」/Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation. 6th ed. Thieme; 2022(低出力レーザーの効果に関するデータは限られ、術後のショックロス軽減や発毛の促進は主張の段階であること。FDAの510(k)は既存機器との同等性に基づく制度で、効果を個別に認めた承認とは異なること)/Gupta AK, Foley KA. A critical assessment of the evidence for low-level laser therapy in the treatment of hair loss. Dermatol Surg. 2017;43(2):188-197/Barikbin B, et al. Comparison of the effects of 665 nm low level diode Laser Hat versus a combination of 665 nm and 808 nm low level diode Laser Scanner of hair growth in androgenic alopecia. J Cosmet Laser Ther. 2017。料金は当院の植毛メニュー(料金表)(2026年10月時点・税込)によります。「当院では」「院長は」とある記述は、院長の臨床上の見解または当院の案内です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師