なおるん毛髪情報局
植毛とPRPの併用に効果はある?生着率を上げる目的のPRPを当院が標準にしていない理由
【この記事の結論】
PRP(多血小板血漿)療法は、自分の血液から血小板を濃縮した液体を頭皮に注射し、血小板に含まれる成長因子で毛包の働きを後押しする治療です。自毛植毛と組み合わせて、生着や発毛を助ける目的で行う医療機関もあります。
ただし、植毛にPRPを併用すると生着率や仕上がりがどのくらい良くなるかについては、研究ごとに手順や評価方法が違い、確立した結論は出ていません。
当院では、植毛の生着率を高める目的でPRPを併用することを標準の手順にしていません。生着を左右する大きな要因は手術そのものの進め方にあると考え、追加費用に見合う上乗せ効果があるかを判断できる根拠が、現時点では十分でないと考えているためです(院長の見解です)。
一方で、既存毛の密度や太さの改善を目的としたPRP単独の治療は、植毛とは役割が違います。効果には個人差があり、持続期間や望ましい回数は確立していない点を理解したうえで検討してください。
※この記事は「植毛とPRPを組み合わせるべきか」を整理するものです。植毛そのものの流れや方法は「自毛植毛」、生着の意味や左右する要因は「植毛の生着率(定着率)とは?」で解説しています。
PRP療法とは
PRPはPlatelet-Rich Plasma(多血小板血漿)の略です。自分の血液を採り、遠心分離で血小板を多く含む部分を取り出して、薄毛の部位の頭皮に細い針で注射します。血小板には、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF-1)などの成長因子が含まれており、これらが毛包の成長を調節する毛乳頭細胞などに作用し、休止期の毛包を成長期へ戻したり、成長期を長くしたりする可能性が基礎研究で検討されています。ただし、こうした作用が実際の臨床効果にどの程度結びつくかは、十分に明らかではありません。
もともとは歯科や整形外科で使われてきた方法で、植毛の分野では2006年にUebelらが、植毛に血小板由来の成長因子を応用して移植毛の発毛を比較した報告を出したことをきっかけに研究が広がりました(教科書で紹介されている経緯です)。現在は、男性型脱毛症(AGA)や女性の薄毛、円形脱毛症を対象にした報告があり、植毛と組み合わせる方法についても小規模な研究やそれらをまとめた報告が続いていますが、調製法や評価方法が研究ごとに異なり、結果を一般化するには限界があります。
日本では、PRP療法は保険適用外の自由診療です。また、自分の血液を加工して体に戻す治療として再生医療等安全性確保法の対象になり、提供する医療機関は提供計画の届出などの手続きが必要です。
植毛にPRPを併用すると何が期待されているか
植毛とPRPの併用で期待されているのは、主に次の3点です。
- 移植したグラフト(毛包を含む小さな組織)の生着を助ける
- 移植した毛が生えてくる時期を早める、または発毛の割合を高める
- 移植部の周りにある既存毛の抜け毛(ショックロス)を軽くする
植毛の代表的な教科書(Hair Transplantation 第6版)では、PRPは植毛と組み合わせて、または植毛の後に使われることがあると紹介されています。同時に、報告ごとに有効とされた割合には大きな幅があり、使う機器や濃縮の方法、活性化の有無、注射の回数などが医師によってまちまちで、植毛分野のPRPには標準的な手順がないため、効果について広く言い切ることは難しいとも述べられています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| おおむね確立していること | PRPは自分の血液を使うため、他人の血液から感染症が伝わるリスクや免疫反応のリスクは低い。報告されている副作用は軽いものが多い(採血・調製・注射に伴う感染や炎症の可能性はある) |
| 報告はあるが確立していないこと | 植毛との併用で生着や発毛が良くなるという報告。手順や評価方法が研究ごとに違い、効果の大きさは一定しない |
| 分かっていないこと | 植毛と併用する場合の、望ましい回数・間隔・濃縮の方法。1回の施術でどの程度の効果がどのくらい続くか、中止後の経過 |
当院が植毛の生着目的でPRPを標準にしていない理由(院長の見解)
当院では、植毛の生着率を高める目的でPRPを併用することを、標準の手順には含めていません。理由は次の3つです。いずれも院長の臨床上の見解で、PRP療法そのものを否定するものではありません。
1. 生着を左右する大きな要因は、手術の進め方にある
グラフトの生着を左右する要因は、採取の際に毛根を傷つけないこと、株分けでグラフトを乾燥させないこと、体の外にある時間を短くすること、移植穴の大きさとグラフトの太さを合わせて植えることなど、手術の工程そのものに多く含まれています。院長は、これらの工程を適切に行うことが生着の基本であり、そのうえでPRPを追加することで生着率がさらにどの程度改善するかは、現時点では明らかになっていないと考えています。
採取時の毛根の損傷については「FUEのトランセクション(毛根切断)率とは?」、株分けと乾燥対策は「植毛の「株分け」とは?」で解説しています。
2. 追加費用に見合う効果を判断する根拠が十分でない
PRPを併用すると、植毛の費用に加えてPRPの費用がかかります。前の章で触れたとおり、併用による上乗せ効果は研究ごとに結果が一定せず、追加費用に対してどの程度の効果が得られるかを現時点では十分に判断できません。院長は、根拠が限られる治療に費用を上乗せするより、その分をグラフト数やデザインの検討に使う方が、患者さんにとって納得しやすいと考えています。
3. 効果の持続について分かっていないことが多い
PRP単独の薄毛治療では、数週間おきに複数回行い、その後も間隔をあけて維持する治療計画をとる研究や施設が多いとされていますが、望ましい回数・間隔や長期の効果は確立していません。植毛の生着を助ける目的で手術時に1回だけ行う場合も、その効果がどの程度続くかは明らかではありません。
当院では、生着のための工夫は手術の中で行うことにしています。その内容は「植毛後48時間が重要といわれる理由」と「植毛の生着率(定着率)とは?」で紹介しています。なお、PRPを植毛と組み合わせる医療機関の方針が誤りだということではなく、根拠の現状をどう評価するかの違いです。
PRP単独の治療はどう考えるか(植毛との役割の違い)
植毛の生着目的とは別に、既存毛の密度や太さの改善を目的としてPRP単独の治療を考える方もいます。
院長は、PRPを「今ある毛を抜けにくくし、休止期にある毛包を成長期へ戻すことで、ボリュームの改善を目指すイメージの治療」と説明しています。植毛のように、薄毛の影響を受けにくい後頭部などの毛を移し、移植先でも元の性質をおおむね保ちながら成長することを期待する治療とは、仕組みが異なります。
PRPの効果の出方には個人差があり、効果を感じにくい方もいます。持続期間や中止後の経過も十分には分かっていません。
| 自毛植毛 | PRP療法 | AGA治療薬(内服・外用) | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 毛のない部位・薄い部位に、自分の毛を移して増やす | 今ある毛の密度や太さの改善を目指す | AGAの進行を抑える・発毛を促す |
| 効果の続き方 | 移植した毛は後頭部などの毛の性質をおおむね保ちながら成長することが期待される(ただしAGAの進行は止めない) | 持続期間や中止後の経過は十分に明らかになっていない | 継続が前提。やめると数か月で元の状態に戻っていくとされる |
| 回数 | 原則1回(範囲が広い場合は2回に分けることがある) | 数週間おきに複数回行う計画が多いが、望ましい回数・間隔は確立していない | 毎日 |
| 保険 | 自由診療 | 自由診療 | 自由診療 |
全体的に密度が下がってきた場合は、原因やドナー(後頭部などの毛)の状態を確認したうえで、植毛で密度を上げる適応があるかを慎重に判断します。既存毛への損傷に配慮しながら毛と毛の間へ植える方法は「既存毛間植毛とは?」で解説しています。
移植した毛と、もとの毛の将来の変化は「植毛した毛が数年後に薄くなる原因とは?」をご覧ください。AGA治療薬の考え方は「AGA治療」のページで紹介しています。なお、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」では、PRP療法は根拠が限られる治療として位置づけられています(2017年以降の研究結果は反映されていません)。
PRP療法の主なリスク・副作用と、受けられない場合
教科書で報告されている副作用は、注射部位の赤み、むくみ、一時的な腫れ、軽い痛み、頭皮の過敏、頭痛、眠気などで、多くは軽いものです。自分の血液を使うため、他人の血液から感染症が伝わるリスクや免疫反応のリスクは低いとされています。一方で、採血・調製・注射に伴う感染や炎症、注射の手技による痛みが起こることがあります。
抗凝固薬や抗血小板薬を使っている方、血液の病気がある方、妊娠中の方、悪性腫瘍の治療中・治療歴がある方などは、病状や治療内容に応じて、PRP療法を受けられない、または慎重な判断が必要とされています。該当する方は治療前に医師に伝え、服用中の薬を自己判断で中止しないでください。
植毛とPRPの併用を提案されたときに確認したいこと
植毛を検討している医療機関でPRPの併用を提案された場合、受けるかどうかを決める前に、次の点を確認しておくと判断しやすくなります。
- 併用の目的は何か(生着を助ける・発毛を早める・既存毛の脱毛を減らすのどれか)
- その目的について、どのような根拠(研究)があり、効果の大きさはどの程度と説明されるか
- 回数・間隔と、PRPを含めた総額はいくらか。1回だけで終わるのか、継続が前提か
- PRPを行わない場合、生着への説明はどう変わるか(PRPがないと生着しないような説明になっていないか)
- 副作用と、受けられない条件の説明があるか
複数の医療機関で提案が分かれたときの考え方は「植毛のセカンドオピニオンの受け方」で解説しています。
自毛植毛の費用と主なリスク・副作用
自毛植毛は保険適用外の自由診療です。手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で計算します。1グラフトあたりの料金は、アルモHi-STANDARD法(刈り上げる)が1,078円、アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない)が1,870円(いずれも税込)です。
| グラフト数 | アルモHi-STANDARD法(刈り上げる) | アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない) |
|---|---|---|
| 1,000グラフト | 1,283,000円 | 2,075,000円 |
| 1,500グラフト | 1,822,000円 | 3,010,000円 |
| 2,000グラフト | 2,361,000円 | 3,945,000円 |
※いずれも税込・手術料金の計算例です(2026年10月時点)。このほか手術前の血液検査11,000円(税込)がかかり、感染症がある方は別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります。血液検査を含めた総額の例:1,000グラフトを刈り上げる方法で行う場合、1,283,000円+11,000円=1,294,000円(税込)です。最新の料金は植毛メニュー(料金表)をご確認ください。手術は原則1回で行い、術後は定期的な診察で経過を確認します。
この記事は植毛へのPRP併用の考え方を解説するもので、当院のPRP療法をご案内するものではありません。当院の植毛の料金表にPRP療法は含まれておらず、上記の手術料金にPRPの費用は含まれていません。PRP療法について知りたい方は、診察時にご相談ください。
主なリスク・副作用:術後の痛み・腫れ・内出血・出血、かさぶた、かゆみ、既存毛の一時的な脱毛(ショックロス。回復しない場合を含む)、感染、毛嚢炎、採取部や移植部のしびれ・感覚の鈍さ、採取部の点状の傷跡や密度の低下、まれに移植部の血行障害(皮膚の壊死を含む)、移植毛が十分に生着しない可能性、移植毛にくせが出る可能性があり、仕上がりの自然さや密度の感じ方には個人差があります。自毛植毛はAGAの進行を止めるものではありません。ショックロスについては「植毛後のショックロスとは?」で解説しています。当院の症例は症例紹介でご覧いただけます(仕上がりには個人差があります)。
植毛とPRPに関するよくある質問
Q. PRPを併用しないと、植毛の生着率は下がりますか?
PRPを併用しないことで生着率が下がるという確立した根拠はありません。一方で、併用でどの程度上乗せ効果があるかも明らかではありません。生着は、採取・株分け・移植といった手術の工程、頭皮の状態や喫煙などの体の要因、術後の過ごし方に左右されます。当院では手術の工程で生着のための工夫を行っており、PRPの併用を標準にはしていません。
Q. 植毛の後にPRPを受けると、移植した毛が早く生えますか?
発毛の時期が早まるという報告はありますが、研究ごとに手順や評価方法が違い、確立した結論ではありません。当院でご案内している目安は、術後3か月ごろから毛が生え始め、8か月ごろに生えそろってきて、仕上がりの評価は術後1年です(経過には個人差があります)。
Q. PRPで増えた髪は、植毛のように生え続けますか?
PRPは今ある毛包の働きを後押しすることを目指す治療で、植毛のように後頭部などの毛を移して、移植先でも元の性質をおおむね保ちながら成長することを期待する治療とは仕組みが異なります。PRPの効果の持続期間は十分に分かっておらず、効果には個人差があります。
Q. PRPとAGA治療薬は、どちらを先に考えるべきですか?
AGAと診断された場合、国内で承認されているフィナステリドやデュタステリドの内服、ミノキシジルの外用には、日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)で一定の推奨があります。PRPはこれらに比べて根拠が限られる治療で、受けるかどうかは医師と相談して判断します。どの治療にも副作用や受けられない条件があるため、自己判断で選ばず、診察を受けてください。よくある質問はこちらにもまとめています。
Q. 植毛と同じ日にPRPを行うと、ダウンタイムは変わりますか?
植毛と同じ日にPRPを行う場合は、植毛の範囲に加えてPRPの採血と注射が加わります。そのため、注射部位の赤み・むくみ・腫れ・痛みが重なることがあります。一方で、同日に行うことで植毛のダウンタイムが短くなる、または長くなるといった確立した根拠はありません。腫れや赤みの出方には個人差があります。当院では植毛の生着目的でPRPを併用することを標準にしていないため、植毛後の経過は、植毛単独の場合の目安(術後の腫れは数日〜1週間程度、かさぶたは1〜2週間程度で落ち着くことが多い)でご案内しています。
Q. 女性の植毛でもPRPは勧められますか?
女性の植毛でPRPを併用した場合の効果についても、男性と同様に研究ごとに手順や評価方法が異なり、確立した結論はありません。女性の薄毛は、女性型脱毛症のほか、ホルモンの変化、甲状腺の病気、貧血、牽引性脱毛症など原因が多様です。そのため、植毛やPRPを検討する前に、まず原因を確認することが大切です。日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)では、女性型脱毛症に対して強く推奨されている治療は1%ミノキシジルの外用です。また、妊娠中・授乳中の方は、PRPを含めて治療を受けられない、または慎重な判断が必要になる場合があります。
Q. グロースファクター(HARG療法など)や幹細胞を使った治療とPRPは何が違いますか?
PRPは自分の血液から血小板を濃縮し、血小板に含まれる成長因子を利用する治療です。これに対し、グロースファクター注入(HARG療法など)は、製剤化された成長因子を含む薬剤を頭皮に注入する治療です。幹細胞を使った治療には、幹細胞そのものを用いるものや、幹細胞を培養した際の上清液を用いるものなどがあり、名称が似ていても中身は治療ごとに異なります。いずれも自由診療で、植毛との併用で生着率が上がるという確立した根拠はなく、効果の持続や望ましい回数も十分に明らかではありません。提案を受けた場合は、何を注入する治療なのか、根拠、費用の総額、副作用を確認してください。
Q. 植毛の後、どのくらい経ってからPRPを受けられますか?
植毛後にPRPを受ける時期について、標準的な基準は確立していません。移植部や採取部に傷やかさぶたが残っている間は、注射による感染や移植毛への影響が心配されるため、少なくとも傷が落ち着くまでは避けるのが一般的な考え方です。また、植毛後3〜4か月ごろまでは移植毛がまだ生えそろっていないため、PRPの効果と植毛による変化を見分けにくい時期でもあります。PRPを検討する場合は、植毛の経過を診ている医師に相談したうえで時期を決めてください。
まとめ
- PRP療法は自分の血液から血小板を濃縮して頭皮に注射する治療で、植毛と併用して生着や発毛を助ける目的で行う医療機関もありますが、効果の大きさは研究ごとに一定せず、確立した結論はありません。
- 当院では、生着を左右する大きな要因は手術の進め方にあると考え、植毛の生着目的でPRPを併用することを標準にしていません(院長の見解で、PRPの有効性を否定するものではありません)。
- 既存毛の密度や太さの改善を目的としたPRP単独の治療は植毛とは役割が違い、持続期間や望ましい回数は確立しておらず、効果には個人差があります。
- 併用を提案されたときは、目的・根拠・回数と総額・副作用を確認して判断してください。ご自身の状態に合う治療は、自毛植毛の診察でご相談いただけます。
参考文献:Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation. 6th ed. Thieme; 2022(薬物療法の章:PRPの仕組み・植毛分野での報告の経緯・報告ごとの有効率の幅・標準的な手順がないこと・副作用・治療間隔の考え方/PRPの章:成長因子の作用・安全性・受けられない場合)。日本皮膚科学会:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版。「当院では」「院長は」とある記述は、院長の臨床上の見解または当院の案内です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師