なおるん毛髪情報局
増毛・ヘアシートから自毛植毛に切り替えるときの注意点|外す時期・引っ張りによる抜け毛・術後の使い方
【この記事の結論】
増毛(自分の髪に人工毛を結びつける方法など)やヘアシート・かつらを使っている方も、自毛植毛を検討することはできます。
切り替えるときに大切なのは、下記の3つです。
①装着物を外した状態で頭皮と毛の状態を診察してもらうこと、
②増毛による引っ張りで起きる抜け毛(牽引性脱毛症)がないかを確認すること、
③手術の前後にいつまで外し、いつから使えるかを担当医と決めておくこと
植毛はAGA(男性型脱毛症)の進行を止めるものではなく、使えるドナー(採取する毛)にも限りがあります。薄毛の範囲が広い場合は、前方への植毛と、移植していない部分へのヘアピースなどの併用を検討することもあります。外す時期や術後に再び使う時期は、装着方法や頭皮の状態によって異なり、一律には決められません。
※この記事では、増毛やヘアシートをすでに使っている方が、自毛植毛に切り替える(または併用する)ときに確認したいことに絞って説明します。手術後の帽子の扱いは「植毛後の帽子はいつからOK?」で解説しています。
※当院では、植毛の手術で刈り上げた後頭部(採取部)を術後に隠すための「採取部カバー用ヘアシート」をオプションでご用意していますが、薄毛の部分を覆うかつら・ヘアピースの製作や販売は行っていません。この記事の「ヘアシート」は、特に断りがない限り、薄毛の部分を覆うかつら類を指します。
増毛・ヘアシート・自毛植毛はしくみが違う
「髪を増やして見せる」方法には、大きく分けて次の3つがあります。どれが合うかは、薄毛の範囲、ドナーの量、生活の中で何を重視するかによって変わり、一律にどれが優れているとはいえません。
| 方法 | しくみ | 切り替え時に確認したい点 |
|---|---|---|
| 増毛(結毛式・編み込み式など) | 残っている自分の髪に人工毛などを結びつけたり編み込んだりして、量を多く見せる | 自分の髪に重さや引っ張る力がかかり続けていないか |
| ヘアシート・ヘアピース・かつら | 薄い部分を人工毛や人毛のシートで覆う。テープ・接着剤・ピンなどで留める | 接着剤やテープによるかぶれ、装着部を剃っていないか |
| 自毛植毛 | 後頭部などから自分の毛を毛根ごと採取し、薄い部分に移植する医療行為(手術) | ドナーの量、AGAの進み方、手術前後の装着物の扱い |
増毛やヘアシートは手術を必要としない一方で、使われる毛材(人工毛・人毛)は頭皮から伸びたり生え変わったりするものではないため、使い方に応じて傷み、交換やメンテナンスが必要になるのが一般的です。
自毛植毛は、移植した毛が生着すれば自分の毛として伸び、カットやスタイリングもできますが、手術に伴う負担やリスクがあり、移植していない部分のAGAは進むことがあります。
切り替える前に確認したいこと
1. 装着物を外した状態で診察を受ける
植毛の計画には、薄くなっている範囲、残っている毛の太さや密度、後頭部・側頭部のドナーの状態を実際に見ることが欠かせません。増毛やヘアシートを付けたままでは、正確な評価ができないことがあります。カウンセリングの日に外せるかどうか、外すのが難しい場合はどうするかを、予約の際に確認しておくと安心です。
2. 増毛による「引っ張り」の抜け毛がないか
髪を強く引っ張る状態が長く続くと、その部分の毛が抜けたり細くなったりする「牽引性脱毛症」が起こることが知られています(確立した知見)。結びつけるタイプの増毛やエクステンションでも、付けた毛の重さで自分の髪が引っ張られ、同じことが起こりうるとされています。引っ張る力が長期間続くと、毛包の周りに瘢痕化(傷跡のような組織の変化)が起こり、毛が再び生えにくくなる場合があります。
薄毛の原因がAGAなのか、引っ張りによるものなのか、両方が重なっているのかで、治療の考え方は変わります。牽引性脱毛症がある場合は、まず原因となる装着をやめることが基本です。植毛を検討する場合も、移植した部分に引っ張る力がかかり続けると、移植した毛も同じように失われるおそれがあるため、移植部に結びつけるタイプの増毛を続けることは勧められません。
3. 接着剤・テープによる頭皮の荒れ
ヘアシートやかつらを接着剤やテープで留めていると、かぶれやかゆみ、赤みが出ることがあります。頭皮に炎症がある状態では、手術を延期して先に皮膚の状態を整えることがあります。気になる症状があれば、カウンセリングの際に伝えてください。
4. 装着のために移植部を剃っていないか
ヘアシートを密着させるために、薄い部分の毛を短く剃っている方もいます。移植部の残っている毛は、植える角度や向きを決める手がかりになるため、手術前には剃らずに残しておくことが大切です。理由は「植毛前に移植部の髪を剃ってはいけない理由」で詳しく説明しています。いつから伸ばし始めればよいかは、カウンセリングで確認してください。
5. 頭皮アートメイク(SMP)を併用しているか
ヘアシートと頭皮アートメイク(SMP)を組み合わせている方もいます。SMPの施術歴は植毛の計画に関わることがあるため、回数や時期を伝えてください。詳しくは「SMP(頭皮アートメイク)をすると植毛できなくなる?」で解説しています。
生え際のデザインは「ヘアピースの生え際」と同じにはならない
ヘアピースやかつらは、低くまっすぐな生え際を作ることもできます。一方、自毛植毛の生え際は、使えるドナーの量と、将来のAGAの進み方を見込んで決める必要があります。今の見た目に合わせて生え際を低く作りすぎると、後方が薄くなったときに移植部だけが目立つことがあります。
ヘアピースに慣れている方ほど、植毛後の生え際を「思ったより高い」と感じることがあるため、手術前に完成のイメージをすり合わせておくことが大切です。位置の決め方は「生え際はどこまで下げられる?」で、移植した部分だけが島のように残る状態については「自毛植毛による離れ小島とは?」で説明しています。
薄毛の範囲が広い場合|植毛とヘアピースの併用
後頭部から採取できる毛には限りがあり、頭頂部まで広く薄くなっている場合、すべての範囲を十分な密度で覆えないことがあります。生涯で採取できる量の考え方は「自毛植毛は一生で何グラフト採れる?」、広い範囲を1回で植えるか2回に分けるかは「広範囲の自毛植毛は1回でできる?」で解説しています。
こうした場合、顔の印象に関わる前方を植毛で整え、後方はヘアピースや髪型、パウダーなどで補うという考え方もあります(植毛の教科書でも、ドナーが限られる方の選択肢として紹介されています)。併用する場合も、留め方による引っ張りや接着剤の負担がないかを確認する必要があります。「植毛か、ヘアシートか」の二択ではなく、どの範囲をどの方法で補うかを医師と整理すると、計画を立てやすくなります。
手術の前後で装着物はどう扱う?
| 時期 | 装着物の扱い | 確認したいこと |
|---|---|---|
| カウンセリング | 外した状態で診察を受けるのが望ましい | 当日外せるか、外した後の帰り方 |
| 手術前 | 自己判断で移植予定部・採取予定部を剃らない。必要な毛の長さや手術当日の刈り上げは担当医に確認する。接着剤によるかぶれがあれば先に整える | いつ外すか、いつから伸ばすかを担当医に確認 |
| 手術当日〜術後早期 | 移植部に圧迫・接着・擦れが加わらないようにする | 移植したグラフトが安定するまでの過ごし方 |
| 再開の時期 | 移植部に装着する時期は、術後検診で頭皮の状態を見て担当医が判断する | 接着剤・テープ・ピンなど留め方による違い |
移植したグラフト(毛根を含む組織)は、手術直後から頭皮にしっかり固定されるわけではなく、術後早期の圧迫や擦れは生着に影響する可能性があります。最初の数日の過ごし方は「植毛後48時間が重要といわれる理由」で説明しています。
当院では、帽子は緩衝材を挟めば術後1週間後から、直接かぶる場合は最低2週間後からを目安にご案内しています。ただし、ヘアシートやかつらを移植部に装着する場合は、帽子と比べて接着剤やテープ、着脱の際の擦れ、蒸れが加わるため、帽子の目安をそのまま当てはめず、移植部の状態を診察したうえで担当医が時期を判断します。上の期間は帽子についての目安であり、ヘアシートやかつらの装着を再開する時期を示すものではありません。
切り替え期間の見た目はどうなる?|手術前〜術後1年の過ごし方
増毛やヘアシートから切り替えるときに気になりやすいのが、移植した毛が生えそろうまでの期間に、周りからどう見えるかです。移植した毛は、いったん抜けてから生え始めるため、植毛の直後から髪が増えて見えるわけではありません。
生えそろったと実感できるまでには、半年〜1年ほどかかるのが一般的です。時期ごとの見た目と、過ごし方の目安は次のとおりです。
| 時期 | 移植部の見た目 | 過ごし方の目安 |
|---|---|---|
| 手術後〜2週頃 | 移植部に赤みや小さなかさぶたが出る | 帽子は緩衝材を挟めば術後1週間後から、直接かぶる場合は最低2週間後からが目安。予定を調整しやすい時期に手術日を決めておくと安心 |
| 術後数週間〜2ヶ月頃 | 移植した毛の多くが一時的に抜け、手術前に近い見た目に戻る | 移植していない部分は、担当医の確認のうえでヘアピースを使い続けられる場合がある。移植部への装着の再開時期は、術後検診で担当医が判断する(前の表を参照) |
| 術後3〜4ヶ月頃 | 細い毛が生え始めるが、まだ量は少ない | 髪型で整えやすくなり始める時期。生え方には個人差がある |
| 術後半年頃 | 毛が太くなり、生え際の形が分かり始める | ヘアピースを小さくしたり、使う範囲を減らしたりできるかを相談できる時期 |
| 術後1年頃 | 仕上がりを評価する時期の目安 | ヘアピースをやめるか、移植していない部分だけ併用を続けるかを決める |
※時期は目安で、移植した範囲、術式、毛の生え方によって異なります。
周りに気づかれにくくするうえで大切なのは、次の2点です。
- 見た目が整わない時期を前もって知っておくこと:特に、移植した毛が一時的に抜ける時期(術後数週間〜2ヶ月頃)は、手術前に近い見た目に戻ります。この時期を見込んで、仕事や行事の予定を考えておくと安心です。
- 移植していない部分の装着物は、担当医と相談しながら使い続けること:ヘアシートやかつらを一度にすべてやめる必要はありません。移植部の状態に合わせて、使う範囲を少しずつ減らしていく方法もあります。【要確認:移植部の周りで接着剤・テープを使うときの注意点】
術後の経過の詳しい流れは「自毛植毛の術後経過について」で、半年たっても生えないと感じたときの判断の目安は「植毛から半年で生えてこないのは失敗?」で解説しています。
採取部(後頭部)を隠す方法|採取部カバー用ヘアシート
自毛植毛では、採取する方法によって後頭部の見え方が変わります。当院の方法と、術後に採取部を隠す選択肢は次のとおりです。
- アルモHi-STANDARD法(刈り上げる方法):採取部を刈り上げて採取します。ご希望の方には、刈り上げた後頭部を覆う「採取部カバー用ヘアシート」(オプション)をご用意しており、髪色や癖に合わせたシートを使います。薄毛の部分を覆うかつらとは異なり、採取部の髪が伸びるまでの期間に使うものです。院長は、手術時に周囲の後頭部の髪が3cm程度以上あると、採取部カバー用ヘアシートとなじませた仕上がりをイメージしやすいと考えています(必要な長さは髪質や使うシートによって異なります)。採取部カバー用ヘアシートの装着方法や取り外しやすさは製品によって異なり、術後に使う場合は、採取部の傷の状態や清潔を保てるかを確認しながら、使い方を医師の指示に沿って調整します。
- アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない方法):後頭部を広く刈り上げず、一部の毛だけをパンチで採取するため、採取部の採取部カバー用ヘアシートを使わない選択もしやすい方法です。ただし、採取できる量や向いている方には条件があり、どちらが適しているかは診察で判断します。
採取部の傷跡の見え方は「植毛の傷跡は残る?」で解説しています。
費用の考え方|継続費用と手術費用
増毛やヘアシートは、方法や契約の内容によって異なりますが、定期的なメンテナンスや交換の費用が続くことが多い方法です。自毛植毛は手術の費用が一度にかかり、AGAの進行をおさえる薬による治療の費用や、将来追加の手術を検討する可能性も含めて考える必要があります。今かかっている費用と、植毛後に続く費用(薬・併用するヘアピースなど)を並べて比べると、判断しやすくなります。
自毛植毛の費用・治療内容と主なリスク
自毛植毛は自由診療(保険適用外)です。手術料金は「基本料金+1グラフトあたりの料金×グラフト数」で計算します。
| 項目 | 料金(税込) |
|---|---|
| 基本料金 | 205,000円 |
| アルモHi-STANDARD法(刈り上げる方法)1グラフト | 1,078円 |
| アルモUn-SHAVEN法(刈り上げない方法)1グラフト | 1,870円 |
| ヘアシート(Hi-STANDARD法のオプション。装着・取り外しの費用を含む) | 54,780円 |
| 植毛手術前の血液検査 | 11,000円 |
たとえば1,000グラフトを移植する場合、Hi-STANDARD法では205,000円+1,078円×1,000=1,283,000円、Un-SHAVEN法では205,000円+1,870円×1,000=2,075,000円(いずれも税込、血液検査とオプションは別途)となります。感染症がある方は、別途感染症対策料198,000円(税込)がかかります。必要なグラフト数は範囲と密度によって異なります。最新の料金は「自毛植毛の値段・費用」でご確認ください。
手術は通常1日で行い、移植する範囲や密度によっては複数回の手術を検討することがあります。移植した毛が生えそろうまでには時間がかかり、術後の経過は診察で確認します。
植毛の主なリスク・副作用には、腫れ、痛み、出血、かゆみ、しびれ・感覚の鈍さ、毛嚢炎、感染、採取部・移植部の傷跡、移植した毛の一時的な脱落、ショックロス(手術の影響で既存の毛が一時的に抜ける現象。回復が不十分な場合もあります)、移植した毛が十分に生えないこと、採取部の密度の低下と採取できる量の限界、仕上がりの自然さの限界などがあります。効果には個人差があり、AGAの進行を止める効果はありません。
増毛・ヘアシートからの切り替えに関するよくある質問
Q. 増毛を続けたまま植毛の相談をしてもよいですか?
相談はできます。頭皮と毛の状態を正確に評価するため、可能な範囲で装着物を外して診察することが望まれます。外すことが難しい場合は、予約の際にご相談ください。
Q. 植毛した後も、ヘアシートやかつらは使えますか?
使える場合があります。移植していない部分を補うために併用する方もいます。ただし、移植部に装着する時期や留め方は、移植したグラフトが安定しているか、頭皮に炎症がないかを診察して担当医が判断します。自己判断で早く再開しないようにしてください。
Q. 結びつけるタイプの増毛で生え際が薄くなりました。植毛はできますか?
引っ張りによる抜け毛(牽引性脱毛症)が疑われる場合、まず原因となる装着をやめ、毛が戻るかどうかを見ることが基本です。原因となる引っ張りをやめても毛が十分に回復せず、炎症や脱毛の進行が落ち着いている場合には、ドナーや頭皮の状態を確認したうえで植毛を検討することがあります。その場合も、移植部に再び強い引っ張りをかけないことが前提になります。AGAが重なっていることもあるため、診察で見極めます。
Q. 女性でヘアピースを使っています。植毛を検討できますか?
女性の薄毛は、全体が薄くなるタイプが多く、後頭部のドナーまで薄くなっている場合は植毛に向かないことがあります。分け目や生え際など範囲が限られている場合は、検討できることがあります。薄毛の原因によっては、植毛以外の治療やヘアピースの継続が適していることもあるため、診察で相談してください。
Q. 周りに気づかれずに、増毛やかつらから切り替えることはできますか?
移植していない部分のヘアピースを続けたり、採取部を刈り上げない方法を選んだりすることで、見た目の変化を目立ちにくくできる場合があります。ただし、移植した毛は術後数週間〜2ヶ月頃にいったん抜け、生えそろうまで半年〜1年ほどかかるため、その間にまったく見た目が変わらないとは言えません。時期ごとの見た目と過ごし方は「切り替え期間の見た目はどうなる?」で説明しています。予定に合わせた手術の時期は、カウンセリングでご相談ください。
まとめ
増毛やヘアシート・かつらから自毛植毛に切り替えるときは、装着物を外した状態で診察を受け、引っ張りによる抜け毛や接着剤による頭皮の荒れがないかを確認することから始めます。
生え際はヘアピースのようには自由に作れず、ドナーの量と将来の薄毛の進み方を見込んで決めます。範囲が広い場合は、植毛とヘアピースの併用も選択肢です。手術前にいつまで外し、術後いつから使えるかは、担当医と具体的に決めておきましょう。
参考文献:Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation. 6th ed. Thieme; 2022(カモフラージュとヘアピースの章:ヘアピースの種類と劣化・エクステンションによる牽引性脱毛のおそれ/脱毛症の鑑別の章:牽引性脱毛症と植毛の前提/診察と計画の章:ドナーが限られる場合のヘアピース併用)。「当院では」「院長は」とある記述は、院長の臨床上の見解または当院の案内です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師