なおるん毛髪情報局
育毛レーザーは効く?赤色・近赤外線の波長とエビデンスの現状
【この記事の結論】
育毛レーザー(低出力レーザー・LLLT)は、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」で、男性型・女性型脱毛症に対して推奨度B(行うよう勧める)とされている治療です。偽の機器と比べて毛髪の密度が増えたとするランダム化比較試験も複数あります。
一方で、研究で示されている毛髪密度の改善は平均的な変化で、見た目の変化には個人差があり、十分な改善を実感できない方もいます。毛がなくなった部分に髪が戻るような変化は期待しにくいと当院では考えています。研究ごとに機器や照射条件が異なり、どの波長・照射時間・頻度がよいかも確立していません。
波長は赤色(650nm前後)の研究が比較的多く、近赤外線(800nm前後)を組み合わせる機器もありますが、組み合わせによる上乗せの効果は十分に確かめられていません。薬物治療や自毛植毛とは役割が異なり、AGAなどの診断を受けたうえで、薄毛の状態に応じて単独または補助的な選択肢として検討する治療と考えるのが現実的です。
※この記事は、植毛をするかどうかにかかわらず「育毛レーザーそのものに効果はあるのか」「赤色と近赤外線の波長で何が違うのか」を知りたい方に向けた解説です。植毛を受けた方が術後いつから使えるかは「植毛後の育毛レーザー(低出力レーザー)はいつから?」で解説しています。
育毛レーザー(低出力レーザー)とはどんな治療か
育毛レーザーは、弱い光を頭皮に当てて、毛を作る細胞の働きに影響を与えることを目的とした治療です。医学的には低出力レーザー治療(LLLT)、または光で細胞の働きを調整するという意味で「フォトバイオモジュレーション(PBM)」と呼ばれます。光源にはレーザーのほか、LED(発光ダイオード)を使う機器もあり、ガイドラインでは両者をまとめて評価しています。
機器の形は、くし型・キャップ型・ヘルメット型など、家庭で使うものが中心です。医療機関の中で照射を受けたり、一定期間機器を借りたり、購入したりと、使い方はいくつかあります。
同じ「レーザー」でも、医療脱毛のレーザーとは目的がまったく違います。医療脱毛は高い出力で毛包(毛を作る組織)を熱で壊すのに対し、育毛レーザーは熱で組織を壊さない弱い出力で使います。脱毛に使われる波長と近い波長が育毛機器に使われることもありますが、波長が同じでも出力が違えば作用は別物です。
効果はどこまで分かっているか(確立・当院の見解・根拠が限られること)
育毛レーザーの効果は、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確立している位置づけ | 日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)で、男性型・女性型脱毛症に対するLEDおよび低出力レーザー照射は推奨度B。男性型脱毛症(AGA)・女性型脱毛症(FPHL)を対象に、偽の機器と比べて毛髪の密度が増えたとする二重盲検のランダム化比較試験が複数報告されています(評価期間は16〜26週程度)。複数の研究をまとめた解析でも、偽の機器などと比べた毛髪密度の改善が報告されています。 |
| 当院の見解 | 臨床試験では毛髪密度の改善が報告されていますが、院長は、実際の見た目の変化は毛が少し太くなる程度の限定的なことが多いと考えており、大きく見た目が変わる治療とは位置づけていません。見た目や手触りの変化の感じ方には個人差があります。ミノキシジルの外用と同じように、効果が出やすい人と出にくい人がいると考えています。内服薬・外用薬に加える補助療法、または薬を使いにくい方の選択肢の一つという位置づけです。 |
| 根拠が限られること | 研究ごとに機器・波長・照射条件が異なり、結果のばらつきが大きいこと、機器メーカーと関わりのある研究が多いことが指摘されています。長期的な効果もまだ十分に分かっていません。どの波長・出力・照射時間・頻度がよいかは確立していません。光がミトコンドリアに働きかけ、細胞のエネルギー産生(ATP)などに影響するという作用の仕組みも、細胞や動物の研究に基づく仮説の段階です。 |
植毛の教科書(Thieme社「Hair Transplantation」第6版)でも、低出力レーザーは患者に説明すべき選択肢の一つとしながら、データは薬ほど強くなく「控えめな効果」として説明すべきだとしています。また、米国FDAの510(k)クリアランスは、すでに適法に販売されている医療機器との「実質的な同等性」を審査する制度で、新しい医療機器の有効性を独立して確かめる承認(PMA)とは異なることにも触れています。「FDA認可」という言葉だけで効果を判断しないようにしてください。
AGAの治療全体の中での位置づけは、当院のAGA治療のページでも紹介しています。
赤色と近赤外線:波長で何が違うのか
育毛レーザーの説明でよく出てくるのが「波長」です。波長によって、光が皮膚の中でどこまで届きやすいかが変わります。
| 波長の目安 | 光の性質 | 人での研究 |
|---|---|---|
| 赤色(630〜680nm前後。650nm付近が多い) | 目に見える赤い光。育毛機器で長く使われてきた | AGAを対象としたランダム化比較試験が比較的多い。体外で培養したヒト毛包で、成長期が長く保たれたという研究もある |
| 近赤外線(この記事では主に800〜810nm付近を扱う) | 目にはほとんど見えない。一般に赤色より深い層まで届きやすい性質がある。ただし実際に毛包へ届く光の量は、出力や照射方法によって変わる | 単独での毛髪の臨床研究は赤色より少ない。細胞・動物の研究や、小規模な人の研究が報告されている段階 |
| 赤色+近赤外線の組み合わせ | 赤色の研究を土台に、届く深さの違う光を重ねる考え方 | AGA患者で「赤色単独」と「赤色+808nm」を比べた研究があり、組み合わせた群でやや良好と報告。ただし差は小さく、機器の形や照射方法も違っていたため、組み合わせが優れているとは結論できない |
院長は、赤色で研究の多い波長を保ちながら近赤外線を重ねる発想には一定の理屈があると考えています。ただし「近赤外線なら毛根の奥まで届いて生える」と言い切れるわけではありません。光治療の結果は、波長だけでなく、出力、1回の照射量、照射時間、光源の配置、頭皮への密着具合などによって変わります。波長の数字だけで機器の良し悪しは判断できません。
同じように、搭載されているレーザーの数が多いほど効果が高い、という単純な話でもありません。院長は、頭皮の広い範囲に光が均一に届く配置か、髪に遮られにくいか、そして何より無理なく続けられるかを重視しています。
どんな人が検討しやすいか・期待しにくいケース
当院では、次のような方には補助療法の一つとして検討してよいと考えています。
- AGA(男性型脱毛症)や女性の薄毛(FPHL(女性型脱毛症))と診断され、内服薬・外用薬に別の方法を加えたい方
- 薬の副作用が心配で、薬以外の方法も知りたい方(妊活中の男性の選択肢は「妊活中のAGA治療」で解説しています。妊娠中・授乳中の方は、機器を使う前に医師に相談してください)
- 髪が細くなってきた(軟毛化した)段階で、まだ毛が残っている方
- 自毛植毛のあと、移植していない既存の毛への補助療法も検討したい方(AGAの進行を抑えたり、移植毛の生着をよくしたりする効果が確かめられているわけではありません)
反対に、次のような場合は期待しにくいか、先に確認が必要です。
- 毛包が失われた部分や、薄毛が大きく進行した部分:レーザーは今ある毛包に働きかけるもので、毛包が失われた部分に毛を戻すことは期待しにくいと考えられます。男性型脱毛症の進行の程度は「ハミルトン・ノーウッド分類」が目安になります。
- AGAかどうか分からないとき:円形脱毛症や頭皮の炎症など、AGA以外の原因で抜けていることもあります。まず原因の診断が先です。毛の細さや毛穴の様子は「頭皮のマイクロスコープ診断」でも確認できます。
- 頭皮に赤み・痛み・ただれがあるとき:皮膚の病気が隠れていることがあるため、照射を始める前に受診してください。
効果を判断するまでの期間と使い方の考え方
低出力レーザーの臨床試験の多くは、4〜6か月程度(16〜26週)使い続けて効果を評価しています。薄毛治療全般について、教科書は少なくとも6〜9か月続けてから効果を判断するよう勧めています。長期的な効果については、さらに経過を見る必要があります。
判断するときは、同じ条件(明るさ・角度・髪の濡れ具合)で撮った頭部の写真を見比べると分かりやすくなります。数週間で目に見える変化が出なくても、それだけで「効かない」とは判断できません。反対に、半年以上きちんと続けても変化を感じない場合は、続けるかどうかを医師と相談するのがよいでしょう。
照射時間や頻度は機器の型式ごとに決められていて、機器によって大きく異なります。照射の回数や時間を増やせば効果が上がるとは限らないため、取扱説明書と医師の指示に従ってください。
家庭用の機器を自分で選ぶ場合は、次の点を確認すると安心です。
- 国内での医療機器としての承認・認証の有無と、使用目的(医療機器ではない美容機器として売られている製品もあります)
- 波長と、照射時間・頻度の推奨条件
- キャップ型か、くし型かなど、自分が続けやすい形か
- 保証やサポートの内容、費用の総額
ほかの薄毛治療との組み合わせ
育毛レーザーは単独で使われる場合と、薬物治療などに追加して使われる場合があります。併用による上乗せの効果は、組み合わせや研究によって結果が分かれています。それぞれ働き方が違うため、「どちらが上か」ではなく、続けやすさや副作用の心配も含めて組み合わせを決めます。
| 治療 | 働き方 | 位置づけと注意点 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド(内服) | AGAの原因となるホルモン(DHT)を減らし、進行を抑える | 男性のAGA治療の中心。副作用があり、継続が前提。女性の薄毛には推奨されておらず、妊娠中・妊娠の可能性がある女性は服用できない |
| ミノキシジル外用薬 | 薬の作用で毛を作る組織を刺激し、発毛を促す | 国内で承認された外用薬がある。効果に個人差が大きい |
| 育毛レーザー | 光で毛を作る細胞の働きに影響を与えると考えられている | 補助療法。効果は控えめで個人差がある。重い副作用の報告は少ない |
| 自毛植毛 | 後頭部などの毛包を薄い部分へ移す | 毛がなくなった部分に毛を増やせる。AGAの進行そのものは止めないため、既存の毛の維持は別に考える |
ミノキシジルの内服(いわゆるミノタブ)は、国内では薄毛治療薬として承認されていません。使うかどうかは、副作用やほかの病気・薬との関係を含めて医師の判断が必要で、この記事では推奨しません。
薬の続け方は「フィナステリドの正しい飲み方」、薬と植毛の考え方の違いは「AGA治療薬と自毛植毛はどっち?」で解説しています。光以外の物理的な刺激を使う方法については「ダーマペン・ダーマローラーは薄毛に効く?」、血液成分を使う方法は「植毛とPRPの併用に効果はある?」をご覧ください。
費用
当院の育毛レーザー治療
当院では、AGA(男性型脱毛症)・女性型脱毛症と診断した方に、内服薬・外用薬に加える補助療法として育毛レーザー治療を行っています。保険適用外の自由診療です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療内容 | 弱い光を頭皮に当て、毛を作る細胞の働きに影響を与えることを目的とした治療(低出力レーザー治療) |
| 使用する機器 | Capillus(カピラス) |
| 波長・光源 | 低出力レーザー(650nm)、近赤外線レーザー(808nm) |
| 照射方式 | キャップ型・頭部全体に照射 |
| 受け方 | 院内照射/機器の貸し出し/購入 |
| 1回の時間・頻度 | 2日に1回の6分照射 |
| 料金 | 院内お試し照射¥4,400 |
| 効果判定の目安 | 少なくとも4〜6か月程度続けたうえで、写真と診察で評価します |
| 対象となる方 | 診察でAGA・女性型脱毛症と診断され、毛包が残っている方 |
※当院で使用するCapillus(カピラス)は、医薬品医療機器等法上の承認を得ていない機器です。入手経路:例 医師の責任のもと個人輸入により入手しています。国内で承認された同等の機器はない状況です。諸外国での状況:例 米国FDAの510(k)クリアランスを取得しています。ただし、510(k)は既存機器との同等性を審査する制度で、有効性を独立に確かめる承認ではありません。重大な副作用の報告は少ないとされていますが、長期の安全性に関する情報は限られています。
効果には個人差があり、続けても十分な変化を感じない方もいます。毛がなくなった部分に毛を戻すことは期待しにくい治療です。治療前に、内服薬・外用薬との組み合わせや、続けた場合の総額をご説明します。リスク・副作用は下記をご覧ください。
家庭用機器を購入する場合
家庭用の機器は製品ごとに価格が異なり、医療機器として承認・認証されたものと、美容機器として販売されているものがあります。効果の判断には数か月単位の継続が必要なため、購入前に、続けた場合の総額、推奨される照射条件、国内での承認・認証の状況を確認してください。家庭用機器の特定の製品をお勧めするものではありません。
自毛植毛を検討する場合
毛がなくなった部分に自毛植毛を検討する場合の手術料金は「基本料金205,000円(税込)+1グラフトあたりの料金×グラフト数」です(1グラフトあたり:アルモHi-STANDARD法1,078円/アルモUn-SHAVEN法1,870円・税込)。手術前の血液検査や感染症対策料など、追加でかかる費用を含めた詳細は植毛メニュー(料金表)をご覧ください。
リスク・副作用
育毛レーザー:重い副作用の報告は少ないとされていますが、照射中に熱を感じる、頭痛が起きる可能性があります。頭皮の赤み・かゆみ・乾燥、押したときの痛み(圧痛)、温かさなどの報告もあります。長く使った場合の安全性や機器ごとの違いについてはデータが限られています。効果には個人差があり、続けても変化を感じにくい方もいます。光で皮膚に症状が出やすい病気がある方や、光に過敏になりやすい薬を使っている方は、使う前に医師に伝えてください。レーザー光を直接見たり、眼に当てたりしないでください。頭皮の赤みや痛みが続くときは、使用をやめて受診してください。
自毛植毛:術後の痛み・腫れ(額や目の周りに出ることがあります)・内出血・出血、かさぶた、かゆみ、既存毛の一時的な脱毛(ショックロス。回復しない場合を含む)、感染、毛嚢炎、採取部や移植部のしびれ・感覚の鈍さ、採取部の点状の傷跡や密度の低下、移植毛が十分に生着しない可能性があり、仕上がりの自然さや密度の感じ方には個人差があります。自毛植毛はAGAの進行を止めるものではありません。当院の症例は症例紹介でご覧いただけます(仕上がりには個人差があります)。
育毛レーザーに関するよくある質問
Q. 育毛レーザーだけでAGAは治りますか?
レーザーだけでAGAの進行を止めたり、薄くなった部分を元に戻したりできるとはいえません。AGAは進行する脱毛症で、治療の中心は内服薬・外用薬です。レーザーはそこに加える補助的な選択肢と考えてください。AGAと治療の考え方は「ハゲ・若はげは治らない?」でも解説しています。
Q. 赤色と近赤外線の両方が出る機器のほうが効きますか?
組み合わせた機器でやや良好だったという研究はありますが、差は小さく、機器の形も違っていたため、組み合わせのほうが効くとは言い切れません。波長に加えて、照射の条件や続けやすさも含めて選ぶことが大切です。
Q. 毎日使えば早く効きますか?
照射を増やせば効果が高まるとは限りません。機器ごとに推奨の頻度と時間が決まっているので、それを守ってください。
Q. 女性も使えますか?
ガイドラインでは女性型脱毛症に対しても推奨度Bとされており、女性を対象とした研究もあります。ただし、女性の薄毛は原因がさまざまなため、まず診察で原因を確かめてから検討してください。
Q. 植毛と一緒に使えますか?
使えますが、術後すぐは移植部に機器が触れるのを避けるため、使い始める時期は担当医の確認が必要です。詳しくは「植毛後の育毛レーザーはいつから?」をご覧ください。ほかの疑問はよくある質問のページにもまとめています。
まとめ
- 育毛レーザー(低出力レーザー・LED)は、日本の診療ガイドライン(2017年版)で男性型・女性型脱毛症に推奨度Bとされ、偽の機器と比べたランダム化比較試験もあります。
- 研究では毛髪密度の改善が報告されていますが、見た目の変化には個人差があります。研究ごとに機器や照射条件が異なり、よい照射条件や長期的な効果はまだ確立していません。
- 赤色(650nm前後)の研究が比較的多く、近赤外線(800nm前後)との組み合わせは理屈はあるものの、上乗せの効果は確立していません。レーザーの数や波長の数字だけで機器を選ばないことが大切です。
- 効果の判断には少なくとも数か月〜半年以上の継続が必要です。毛がなくなった部分には自毛植毛など別の方法を検討します。
参考文献:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」(LEDおよび低出力レーザー照射:推奨度B)/Unger R, Shapiro R, eds. Hair Transplantation. 6th ed. Thieme; 2022(低出力レーザーは控えめな効果として説明すべきこと、臨床研究の数が少なく企業との関わりがある研究が多いこと、FDAの510(k)は既存機器との同等性に基づき効果を示すものではないこと、薄毛治療の効果判定には6〜9か月を要すること)/Jimenez JJ, et al. Efficacy and safety of a low-level laser device in the treatment of male and female pattern hair loss: a multicenter, randomized, sham device-controlled, double-blind study. Am J Clin Dermatol. 2014;15(2):115-127/Kim H, et al. Low-level light therapy for androgenetic alopecia: a 24-week, randomized, double-blind, sham device-controlled multicenter trial. Dermatol Surg. 2013;39(8):1177-1183/Gupta AK, Foley KA. A critical assessment of the evidence for low-level laser therapy in the treatment of hair loss. Dermatol Surg. 2017;43(2):188-197/Barikbin B, et al. Comparison of the effects of 665 nm low level diode Laser Hat versus a combination of 665 nm and 808 nm low level diode Laser Scanner of hair growth in androgenic alopecia. J Cosmet Laser Ther. 2017。料金は当院の植毛メニュー(料金表)(2026年10月時点・税込)によります。「当院では」「院長は」とある記述は、院長の臨床上の見解または当院の案内です。
執筆:編集部/監修:内田直宏医師